意匠法には一意匠一出願の原則(7条)がありますが、その例外として組物の意匠制度というものが存在します。

あいぴー
なぁ、チーたん、これ見てや。うちが作ってみたんやけど。
チーたん
わぁ、綺麗なアクセサリーだね。イヤリングもネックレスも一つ一つが綺麗なだけじゃなくて全体的に模様が統一されていてセットとしても綺麗だね。
あいぴーがこんなアクセサリーを作れるなんて!意外と器用なんだね。
あいぴー
これ、商品化しようと思っとるんやけど、どうやろ?
チーたん
いいと思うよ。あ、その前に意匠登録出願をして知的財産権をしっかり確保しておかないとね。
あいぴー
一つ一つを意匠登録出願すればエエんかな?このアクセサリーセットは全体で統一感を持っているからこの統一感を保護してほしいのやけど・・・
ふっくん
そんなときは、組物の意匠登録制度を利用しましょう!
あいぴー
組物?
ふっくん
組物の意匠登録制度とは、同時に使用される2以上の物品であって、経済産業省令に定めるものを構成する物品の意匠が、組物全体として統一があるときには、一意匠として登録を認め保護する制度を言います(8条)。

第8条 同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

ふっくん
デザイン開発の現場では、全体的に統一感を持たせるように個々の物品にデザインするシステムデザインの創作実態があります。

一意匠一出願の原則(7条)に従うと、構成物品の組み合わせに存在する美観を保護できないこととなり、システムデザインの模倣に対して構成物品の個別的な意匠権では保護が不十分であるという問題がありました。

そこで、システムデザインを一意匠として保護する組物の意匠制度を構築し、組物全体として権利行使を可能としました。

なお、従来の組物制度は、省令に定める物品が13品目しかありませんでした。また、2種以上の物品に係るものでなければいけないという登録要件がありました。

さらに、個々の構成物品に登録要件を課す一方、組物全体としてしか権利行使できないという制約がありました。

チーたん
組物として登録されるにはどんな要件を満たせばいいの?
ふっくん
まず、組物が経済産業省令で定めるものであることが必要です。
チーたん
経済産業省令で定めるもの?
ふっくん
施行規則8条別表2に定めてあります。組物の意匠登録制度は一意匠一出願の原則(7条)の例外であるため、その範囲が拡大しすぎないように限定しているのです。この表に書かれていないものは組物として意匠登録出願することはできません。

施行規則8条別表2

一組の下着セット
一組のカフスボタン及びネクタイ止めセット
一組の装身具セット
一組の喫煙用具セット
一組の美容用具セット
一組のひなセット
一組の洗濯機器セット
一組の便所清掃用具セット
一組の洗面用具セット
一組の電気歯ブラシセット
一組のキャンプ用鍋セット
一組の紅茶セット
一組のコーヒーセット
一組の酒器セット
一組の食卓用皿及びコップセット
一組のせん茶セット
一組のディナーセット
一組の薬味入れセット
一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンセット
一組のいすセット
一組の応接家具セット
一組の屋外用いす及びテーブルセット
一組の玄関収納セット
一組の収納棚セット
一組の机セット
一組のテーブルセット
一組の天井灯セット
一組のエアーコンディショナーセット
一組の洗面化粧台セット
一組の台所セット
一組の便器用付属品セット
一組の紅茶セットおもちゃ
一組のコーヒーセットおもちゃ
一組のディナーセットおもちゃ
一組の薬味入れセットおもちゃ
一組のナイフ、フォーク及びスプーンセットおもちゃ
一組のゴルフクラブセット
一組のドラムセット
一組の事務用具セット
一組の筆記具セット
一組の自動車用エアスポイラーセット
一組の自動車用シートカバーセット
一組の自動車用フロアマットセット
一組の自動車用ペダルセット
一組の自動二輪車用カウルセット
一組の自動二輪車用フェンダーセット
一組の車載用経路誘導機セット
一組のオーディオ機器セット
一組の車載用オーディオ機器セット
一組のスピーカーボックスセット
一組のテレビ受像機セット
一組の光ディスク再生機セット
一組の電子計算機セット
一組の自動販売機セット
一組の医療用エックス線撮影機セット
一組の門柱、門扉及びフェンスセット

チーたん
なるほど。あいぴーの場合は「一組の装身具セット」で出願できるね。
ふっくん
二つ目の登録要件は、構成物品が適当であることです。つまり、同時に使用される2以上の物品であることが必要です。
「同時に使用される」とは、その組物を構成する物品相互間に一つの使用が他の使用を観念的に予想せしめる関係があれば足り、必ずしも同時に使用される必要はありません。

組物の構成物品は、組物の構成物品表(審査基準)において組物ごとに定められたものとされています。

原則として、「構成物品」の欄内に併記されている各構成物品を少なくとも各一品ずつ含むものでなければいけません。それ以外の物品を含むものは、その加えられた物品が同時に使用されるものであり、かつ各構成物品に付随する範囲内の物品でなければいけません。この要件を満たさない場合、組物とは認められず、拒絶理由となります(17条)。

チーたん
あいぴーの場合はブレスレットやアンクレットも構成物品に加えられるかもね。
ふっくん
3つ目の登録要件は、構成物品に係る意匠が組物全体として統一があることです。
統一がなければ一体的創作性を認められませんからね。
「統一がある」とは、各構成物品の形態相互間に密接な関連性があることを要します。
たとえば、
①純粋意匠上の統一(模様上の統一、形状上の統一、色彩上の統一)
②構成物品の形状、模様もしくは色彩又はこれらの結合が同じような造形処理で表されている場合や構成物品が全体として一つのまとまった形状又は模様で表されている場合
③観念上の統一
があげられます。
チーたん
「構成物品が全体として一つのまとまった形状又は模様で表されている場合」って?
ふっくん
例えば、線の入った小さなテーブルを組み合わせて全体として一つの繋がった線が現れる「テーブルセット」などが考えられます。
チーたん
観念上の統一って?
ふっくん
たとえば、一組の薬味入れセットにおいて、犬、サル、キジ、桃太郎の図柄がそれぞれ表されている場合です。
チーたん
出願手続きについても教えて
ふっくん
「意匠に係る物品」の欄に、経済産業省令(施行規則別表2)に定める組物を記載します。

また、「意匠の説明」「意匠に係る物品の説明」の欄に必要に応じて、各構成物品の説明を記載します。
図面は、各構成物品の図面だけで組物の意匠を十分に表現できる場合には、構成物品ごとの6面図を作成してください。たとえば、それぞれに同一の模様が表され統一感がある場合には構成物品のそれぞれの図面で足ります。

統一を示すために組み合わされた状態の図面が必要な組物については、構成物品ごとにそれぞれ作成するとともに、全構成物品を組み合わされた状態において意匠を十分に表現することができる図面についても作成する必要があります。

たとえば、結合させることにより、新たな形状や模様、観念が生じる場合です。

チーたん
経済産業省令(施行規則別表2)に定める組物以外の物品名を「意匠にかかる物品」に記載した場合どうなるの?
ふっくん
8条違反により拒絶理由(17条)が通知されます。
構成物品が適当でない場合や構成物品間に純粋意匠上又は観念上の統一性が認められない場合、それから部分意匠を含む組物の意匠の意匠登録出願も8条違反となります。
あいぴー
3条や3条の2、5条、9条のような登録要件は構成物品ごとに満たさなければいけないん?
ふっくん
いいえ、組物全体としてだけ一般的登録要件が課されます。
権利行使をするときにも組物全体で権利行使します。
チーたん
構成物品が公知になっている場合でも組物として登録されるの?
ふっくん
その場合は創作容易であるとして3条2項に該当する可能性があります。
チーたん
5条の判断はどのようにされるの?

ふっくん
5条1号及び2号については、組物を構成する物品の一つが該当する場合でも、組物の意匠全体で登録が拒絶されます。
一方、5条3号については組物全体でのみ判断されます。


意匠登録を受けることができない意匠

第五条  次に掲げる意匠については、第三条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
一  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
二  他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
三  物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠

チーたん
要件を満たしていないのに過誤登録された場合は、無効審判請求をすれば無効にできるの?
ふっくん
それは無理です。
8条違反は無効理由となっていないので(48条1項各号)、無効とすることはできません。また、その場合、複数の意匠が現わされていることになるので7条違反となりますが、7条違反も形式的瑕疵であり無効理由にはなっていません(48条)。

したがって、過誤登録された組物の意匠は無効とすることはできないと解されます。

チーたん
じゃあ、その過誤登録された意匠は構成物品の意匠ごとに権利行使できるの?
ふっくん
いいえ、組物の意匠としての意匠権が与えられたと解されるため、構成物品の意匠ごとに権利行使することはできません。
チーたん
部分意匠を組物の意匠として出願した場合も拒絶理由通知がされるよね?
ふっくん
部分意匠と組物の意匠は、その保護しようとする対象が明らかに異なるため、部分意匠を組物の意匠として登録を受けることはできません(2条1項柱書)。

この場合は8条違反あるいは3条違反として拒絶されると解されます。2条1項柱書はきょぜる理由(17条各号)に挙げられていないため、原則拒絶理由の対象となりませんが、8条を介して拒絶されると解されます。

第2条

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

チーたん
8条1項違反の拒絶理由通知に対してはどうすればいいの?
ふっくん
多意匠を含んでいるわけですから、分割出願(10条の2)をして拒絶理由を回避することができます。
なお、組物の意匠として認められたものを分割することはできません。もし分割出願した場合には、分割の時に出願されたものと扱われます。

それから、願書に添付した図面等についてした補正については注意してください。

たとえば、組物の構成物品として不適当であると認められるものを削除する補正は要旨の変更とはなりませんが、組物の構成物品として適当であると認められるものを削除したり追加する補正は要旨の変更となります。

チーたん
じゃあ、権利侵害の場面について質問したいのだけど、もし無権利者が構成物品の一部を少し変えて製造販売していたら権利行使できるの?
組物全体で一意匠だから無理なのかな?

ふっくん
デザインコンセプトを保護することが組物の意匠制度の趣旨ですから、構成物品に多少の相違があっても、侵害を肯定すべきと解します。

チーたん

なるほど。じゃあ、構成物品の一部だけを製造・販売している無権利者に権利行使できるかな?

ふっくん
組物の構成物品はそれぞれ独立した個性を持つものであるため、「その組物の製造にのみ使用する物」という条件を満たすことは稀でしょう。ですから、いわゆる専用品ではないと認められる場合が多いため、組物の構成物品の一部を実施しても間接侵害を問うことはできません。
チーたん

じゃあ、構成物品の全部をバラバラに販売していたら?

ふっくん
その場合は、購入者のもとで複数の物品を取りそろえることができてしまいますので、組物の意匠権の侵害を問えるでしょう。
チーたん
なるほど。組物の意匠制度の趣旨に沿った妥当な判断だね。
あいぴー
組物の意匠についてはよくわかったから、早速意匠登録出願をするで!

チーたん
うん!

ふっくん
あいぴーとチーたんは組物の意匠みたいに良い組み合わせですね。