禁反言という言葉は民法や民事訴訟法で出てくる言葉ですが、特許法や商標法などでも登場します。
ちなみに、包袋禁反言の包袋とは、昔は特許庁で出願書類を袋の中に入れて保管していたことからくる言葉です。

チーたん
ねぇねぇ、拒絶理由通知が来たから意見書を書いているのだけど、これでいいかな?チェックして!
ふっくん
どれどれ・・・。
・・・ここに、「弾性体」とは「バネを意味するものである」と書かれていますが、他の弾性体、たとえばゴムは含まれないのですか?
チーたん
含まれるよ。
ふっくん
では、なぜバネだけに限定してしまったのですか?
チーたん
だって・・・特許査定を受けやすいかなと思って・・・。
減縮補正したわけじゃないし、意見書で主張するくらいいいでしょ?
ふっくん
いえ、余計なことは書かない方がいいですよ。
出願経過禁反言というものがありますから。
チーたん
禁反言?なんか、民法で聞いたことあるなあ。
ふっくん
その通り。
禁反言の法理とは、自分のとった行動に矛盾する行為をしてはいけないという法理のことをいいます。

相手方の信頼を裏切ってはいけないという民法1条2項に規定されている「信義誠実の原則」から導かれる原則です。

そして、特許法で言う禁反言とは、出願経過全体を通してした主張と矛盾する主張を権利取得後の訴訟でしてはいけないという考え方です。

チーたん
・・・ということは、裁判のときにぼくが意見書で主張したことが採用されて、特許権侵害者が実施している発明は、ぼくの特許発明の技術的範囲(特許法70条)に属さない・・・、つまり、
禁反言の法理によりぼくの主張が認められない、ということがあり得るの?
ふっくん
そうですよ。
チーたん
えーっ?!
じゃあ、意見書に下手なこと書けないじゃない!
ふっくん
だから余計なことは書かないようにしてくださいと言ったでしょう。
チーたん
・・・意見書では必要最低限のことだけを主張するよ。
ふっくん
それがいいでしょう。
それから、面接審査をしてもらうというのも効果的です。費用はかかりますが、主張したことが包袋に残らないので主張を通しやすいですよ。
チーたん
いいこと聞いちゃった♪
ふっくん
発明者は禁反言のことなど考えませんし、拒絶理由通知が来た場合は特許査定を得ることだけを考えがちなので、不要なことまで主張してしまう虞れがあります。

チーたんは知財部員として、発明者の意見を意見書に書くときは、将来を見越して、不要なことまで書きすぎないように注意してくださいね。

チーたん
うん。つい、拒絶理由を回避するためにその場しのぎでいろいろ主張しちゃっていたけど、これからは気を付けるよ!