地理的表示の保護は、TPPの加盟条件の一つです。日本では平成26年にGI制度を新設したことによりこの要件を満たすことになりました。
従来から存在する「地域団体商標制度」と比較しながら学びましょう。

チーたん
あいぴー、聞いて聞いて!計算してみたんだけどね、うちの会社の今年の純利益は2年前の5倍だよ!
あいぴー
ほんま?!
チーたん
ふっくんが来てから知財戦略に力を入れていたし、うちの会社はいつの間にか高収益体質になっていたみたい
あいぴー
嬉しいわ~
お祝いに高級料亭で松坂牛でも食べよか
チーたん
どケチのあいぴーがそんなこと言うなんて嬉しいなw
ふっくん
私もお相伴に預かるとしましょうか
あいぴー
功労者だし奢るで
チーたん
産地偽装をしていない料亭に連れていってねw
あいぴー
・・・はっ!今、新たなビジネスを思いついてしまったで!
チーたん
どうせまた法律違反している怪しいビジネスでしょ?(--;
あいぴー
ちゃうで!
ちゃんと商標登録して松坂牛味のお菓子を販売すんねん。
チーたん
松坂牛と何の関係もないうちの会社が無断で「松坂牛」の商標登録出願するのって問題ありそうだけど・・・
ふっくん
松坂牛ほど著名な商標と同一・類似の商標を出願すると商標法4条1項15号や19号違反になるでしょうね。
チーたん
そういえば、松坂牛は地域団体商標の商標登録も受けていたよね
ふっくん
平成27年12月22日には地理的表示として登録も受けていますよ
チーたん
地理的表示?
ふっくん
地理的表示保護制度は、生産地と結び付いた特性を有する農林水産物等の名称を品質基準とともに登録し、地域共有の知的財産として保護する制度です。
登録を受けたい場合は、農林水産省へ申請します。
チーたん
特許庁へ出願する商標とは違うね
ふっくん
制度的には地域団体商標と似ていますけどね。

「地理的表示保護制度」は、地域ブランドを守るために平成26年に新設された制度です。
地域団体商標と比べて説明いたしましょう。

「地理的表示」は、農林水産物や食品の名称であって、「松坂(地名)牛」のように、その名称から産地がわかり、品質等がその産地と結びついていることが特定できるものに付されるものです。
地理的表示保護制度は、この「地理的表示」を知的財産として保護することによって、産品の信用を守り、生産者と消費者の利益を保護することを目的としています。

チーたん
商標制度とあまり変わらないんじゃないの?
ふっくん
重なる部分もありますが、異なる部分もあります。

まず、地域ブランドとしての保護が図られるという点は同じですよね。でも、守られ方が違います。地域団体商標の場合は「権利」として保護が図られるので、不正使用に対しては自力で差し止め請求や損害賠償請求訴訟を起こさねばならないのに対し、地理的表示の場合は行政が取り締まりを行ってくれます。

チーたん
それはいいなぁ。地理的表示の場合は、生産者の負担が減るね
ふっくん
その通りです。

また、地理的表示の場合は、登録を受けることができるのは、農水産物(食用の農産物と一部の非食用の農水産物)に限られます。
農水産物に限らず登録を受けられる地域団体商標とは違いますね。

チーたん
地域団体商標の場合は、一定の組合や法人などが商標登録を受けられるよね(商標法7条の2第1項)。
地理的表示を付けることができるのは誰なの?
ふっくん
登録を受けた生産者団体の構成員である生産業者と、その生産業者から登録産品を直接又は間接的に譲り受けた者(たとえば生産業者から登録産品を譲り受けた卸売業者や、その卸売業者から譲り受けた小売業者など)が地理的表示を付することができます。
チーたん
地理的表示の場合には法人格がなくてもいいんだね
ふっくん
特定の地理的表示産品について、複数の生産者団体が共同して申請することが可能ですし、追加登録することもできます。追加登録の際には申請費が9万円かかります。
複数で共同申請する場合にも9万円かかりますから、なるべく一度に皆で共同申請した方が金銭的に負担が少ないでしょう。
チーたん
地域団体商標は周知性(需要者に知られていること)が必要だけど地理的表示の場合はどうなの?
ふっくん
産品が一定期間(概ね25年)継続して生産された実績が必要です(伝統性)。
また、地域団体商標の場合には当該地域で生産されていれば足りるのに対し、地理的表示の場合にはその産品が生産地と結び付いた品質等の特性を有していることが必要です。

たとえば、松坂牛は松坂以外の地域で生産されている場合であっても、歴史的な経緯等を踏まえ、 「松阪牛」の特性との結び付きが認められれば、生産地に含めることが可能です。

あいぴー
最近は国産の小麦粉なんて高くてなかなか手が出んと思うんやけど、パンのような加工品を登録申請する場合に原材料である小麦粉もその生産地で生産されたものでなくちゃあかんの?
ふっくん
その必要はありません。
原材料の生産地が加工地と異なる場合は、当該加工品の品質等の特性と生産地(=加工地)の結び付きを生産方法等により明らかにしていくことは必要ですが。
ふっくん
GIの申請に際しては、その産品が有する特性やその生産方法等を明確に定め、登録後には、生産された商品がこれらを満たしているかどうか、団体が品質管理を実施することが義務付けられています。
チーたん
品質管理義務が課せられている分、ぼくたち消費者にとってはより信頼できる制度だね
ふっくん
商標の構成についてですが、地域団体商標の場合は商標の構成が「地域名」+「商品名」等の文字からなることが必要とされていますが、地理的表示の場合には、地域を特定できれば、地名を含まなくても構いません。
チーたん
昔の地名を含んでもいいの?
ふっくん
構いません。

なお、申請に当たって定めた新しい名称は、産品の特性を特定できないため、登録要件を満たしません

チーたん
伝統が必要って言ってたもんね。新名称なんてダメだよね
あいぴー
どっちの制度もそれぞれ良いところがあるから、要件さえ満たせば、地域団体商標と地理的表示の両方の登録を受けた方がよさそうやな
ふっくん
デメリットもありますから気を付けなくてはいけません。

すなわち、地理的表示として登録されると地域共有の財産となるため独占使用ができなくなります。したがって、地理的表示の正当な使用に対して商標権の効力は及びません。

チーたん
う、そうか。地理的表示は共有財産だもんね。商標権のような独占排他権じゃないもんね・・・
ふっくん
また、地理的表示の場合は、生産工程管理業務が義務付けられますからその意味では負担が増えますよ
あいぴー
金銭的な負担はどうなん?地域団体商標の場合には商標の出願料の支払いやら更新登録でお金がかかるやろ
ふっくん
地理的表示の場合には一度登録されてしまえば以後は生産者を追加する場合を除き、お金はかかりません。ただし、最初に申請する場合に代理人に依頼すると商標登録出願よりもかなり高額の代理人手数料がかかってくるでしょう。
チーたん
なるほどねー。

もし、どちらか片方だけ受けるとしたらどちらがいいかな?

ふっくん
農水産物である、25年ほど継続して生産が行われている等の要件を満たしているのならGIを利用した方がいいかもしれませんね。

ただ、既に述べたように、GI制度を利用する場合の代理人費用はかなり高額になると思われます。したがって、こうした無料で手に入れられる情報を見て、GIを登録するだけの要件が揃っていて、地域の生産者みんなでとろう!という気持ちになったときに一丸となって権利取得を図った方が良いでしょう。

あいぴー
アウトローはどうなるんやろ
ふっくん
生産者は追加で登録できますし、地理的表示の場合も先使用権は認められますよ。

地理的表示の登録を受ける前から引き続き不正の目的(例えば、ある農林水産物等が登録の申請を行っていることを知り、その生産者団体に対して、財産上の損害を加えることや、先使用による地理的表示の使用をやめる見返りとして高額の金銭を要求することを目的として、その農林水産物等の地理的表示を使用すること)なく、その名称を使用してきた場
合は、地理的表示が登録された後でも引き続き名称を使用できることとなっていますから。

チーたん
地域団体商標と地理的表示の両方の登録を受けた例ってあるの?
ふっくん
松坂牛ですよ。それから夕張メロンもありますよ。
ちなみに、夕張メロンの場合は、品種名は「夕張キングメロン」といいます。
チーたん
品種名?
ふっくん
種苗法による品種登録がされた場合の名称です。これについてはブランド戦略上重要ですからまた別の機会にお話します。
とりあえず今日はもう松坂牛を食べに行きましょうよ。
チーたん
うん!デザートは夕張メロンでね♪
ふっくん
私はお肉を追加しちゃいます!
あいぴー
追加申請は認めんで!!