特許権のライセンスを受ける際に問題となる条項に「不争義務」と「非係争義務」があります。

 

これらは独占禁止法違反になる可能性が高い条項ですので、もしライセンスを受ける場合にかかる条項が記載されているのに気づいたら、当該条項の削除を求めましょう。

しかし、もし削除してもらえなかったら、どうしたらよいのでしょう・・・?

 

 

チーたん
特許権のライセンスを受けようと思っているのだけど、契約書を見たら、「特許権の有効性を争わないこと」って書いてあるんだ。

これって違法何じゃないの?

この契約は結ばないほうがいいかな


 

ふっくん
その条項を削除してもらうことが出来るなら削除してもらったほうがいいでしょう。

でも、力関係のせいでそういうことは言いにくいかもしれませんね。

もしそうなら放置しても大丈夫ですよ。


 

チーたん
後々不利じゃない?

たとえば、実はその特許権に無効理由があることが判明しても僕はライセンスを受けている特許権について無効審判(特許法123条)を請求することが出来ないってことでしょ?


 

ふっくん
いえ、特許無効審判を請求することはできますよ。

 

確かに不争義務違反にはなりますが、無効審判の請求が不争義務違反を理由に却下されることはありませんから。

 

チーたん
でもライセンス料(ロイヤリティ)は支払わないといけないんでしょ?

 

ふっくん
いえ、ロイヤリティの支払いを拒むことも出来ますよ。

 

チーたん
でも、そんなことをしたら、特許権者が怒ってライセンス契約を解除してくるんじゃないかな・・・
そんでもって、差し止め請求(特許法100条)されてその特許発明が使えなくなっちゃうんだ・・・

 

ふっくん
いえ、大丈夫でしょう。

 

無効理由がある特許権に基づいて差し止め請求を起こしても裁判所がその訴えを認めないでしょうから。
損害賠償請求についても同様です。

チーたん
じゃあ、不争義務ってあってもないようなものじゃない

 

ふっくん
そうなんですよ(笑)

気持ち的に躊躇してしまうという効果を持っているだけで、実質的な効果はありません。

 

ですから、ライセンスを受けている特許権について特許無効理由を発見したら、臆せずに特許無効審判を請求しましょう。

 

特許権者との関係が悪くなるのが怖い・・・と思うかもしれませんが、契約書に不争条項を盛り込んでくるような相手とは喧嘩したっていいんです。

 

既に述べたように、特許権者が怒ってライセンス契約を解除したとしても、その特許権が無効にさえなってしまえばその発明については自由に使えるんですからね。


 

チーたん
よかったー

 

ふっくん
似ている言葉に「非係争義務」という用語があります。

特許の世界では、NAP条項(Non Assertion Patent)とも呼ばれます。

 

これは、「ライセンスを受けた者(ライセンシー)は、ライセンサーやライセンサーがライセンスしている他のライセンシーに対し、特許権侵害訴訟を起こすな」という条項です。


 

チーたん
意味わかんない!

 

ふっくん
具体例をあげるとわかりやすいでしょう。

 

たとえば、その昔、ほとんど特許権を有していなかったマイクロソフトが日本のパソコンメーカーとOSの使用許諾契約を結んだ時に、自社が日本のパソコンメーカーの特許権を侵害しても訴えられないという不当な条項を盛り込んでいました。

これは独占禁止法19条違反ということで許されませんでした。

 

チーたん
そうなんだ。
確かに、OSを使わせてもらっているからといって自社の特許権を自由に使われたら嫌だよね。

 

ふっくん
そうです。マイクロソフトの地位を不当に強化し、日本のパソコンメーカーの発明開発意欲を失わせることになりますからね。

もちろん全ての非係争義務がいけないということではありません。

範囲を決めて非係争義務を課すのなら独占禁止法違反にはなりません。

 

チーたん
なるほどね。

 

ふっくん
こちらの記事も参考になさってください。

改良技術は誰のもの?