特徴あるデザインの部分を保護できる部分意匠の登録制度は、意匠法の中でも非常に重要な制度です。
出願に当たっては、通常の意匠登録出願の要件にプラスして独自の要件が課せられています。

あいぴー
新規な自転車のデザインをしたで!
チーたん
ハンドルの部分のデザインが斬新だね。意匠登録出願しようか
ふっくん
単に自転車の意匠登録出願をするのも良いですが、同時にハンドル部品の意匠や自転車の部分意匠としても出願しましょう。
あいぴー
部分意匠?
ふっくん
部分意匠の意匠登録制度とは、物品の部分の形状、模様、もしくは色彩またはこれらの結合(以下「形態」という)について独創的で特徴ある創作がなされた場合に、当該部分について意匠登録を認めて保護する制度を言います(意匠法2条1項かっこ書き)。

従来、意匠法の対象となる「物品」は、独立した製品として市場流通性を有する有体物と解されていたため、独立して取引の対象とはなりえない「物品の部分」にかかる意匠は意匠法の保護対象から除外されていました。

そのため、一つの意匠に独創的で特徴のある創作部分が複数箇所含まれている場合であっても、物品全体として一つの意匠権しか取得できず、それらの一部が模倣されていても、意匠全体としての模倣が回避されているならば当該意匠権の効力は一部模倣された意匠には及ばない状況にありました。

しかし、独創的な意匠を保護し創作の奨励を図りつつ産業の発達に寄与しようとする意匠法では、かかる状況は意匠の創作意欲を削ぐ結果となり、産業政策上好ましいことではありません。
そこで、このような点を考慮して意匠を構成する「物品」の定義に「物品の部分」が含まれることを明記し(意匠法2条1項かっこ書き)、物品の部分について独創的で特徴のある創作をした場合には、当該部分を部分意匠として保護することとしたのです。

チーたん
なるほど。特徴ある部分を模倣しつつも全体としては非類似の製品を販売されてしまったら困るもんね。
あいぴー
要件が厳しそうやな
ふっくん
部分意匠の成立要件としては以下の4点が挙げられます。

1つ目として「意匠にかかる物品が必ず特定されていなければならず、その物品は別表第1(7条)に例示される従来より意匠法の対象となる物品であること」が挙げられます。

部分意匠制度の導入によって意匠と物品との一体性がなくなったわけではないからです。
したがって、出願にあたっては部分意匠であることを明確にするとともに、意匠にかかる物品を明記しなければなりません(意匠法6条1項3号)。
物品と離れて模様あるいは色彩のみを表したものは部分意匠とは認められません。

チーたん
物品と離れて模様あるいは色彩のみを表したものって?
ふっくん
ピンクの花柄だけなどです。

2つ目の要件は、「物品全体のなかで、一定範囲を占める部分の形態であること」です。

図面等において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定し、「意匠の説明」の欄においてどのように特定されているかを説明することが必要です。

あいぴー
いまいち想像できへんな。
ふっくん
たとえば、乗用車の側面を投影したシルエットのように物品の形態のシルエットのみを表したものは、一定の範囲を占める部分の具体的形態ではないため、物品の部分とは認められません。
あいぴー
確かに抽象的で掴みどころがないもんな
ふっくん
さて、3つめの要件です。
「当該物品において、他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る部分であること」

各部品ごとまたは「蓋」のように一般的名称で呼べるような部分ごとに示さなければいけません。
創作の単位がはっきりしないからです。

あいぴー
「マグカップの持ち手の近く」とかじゃあかんのやな
ふっくん
そうです。カップの特定された部分が不定形であり、対比の対象となる意匠の創作の単位が表されていない部分を部分意匠とすることはできません。

さて、最後4つ目の要件です。
「組物の意匠(意匠法8条)にかかる部分意匠ではないこと(2条1項かっこ書き)」

組物の意匠制度は複数の物品を組み合わせたシステム製品にかかるデザイン全体の統一感を一創作として保護する制度であり、その制度趣旨に鑑みれば組物の意匠に関する部分意匠はデザイン全体の統一感の保護とは関係がなくなるからです。
この4つの要件を満たさなかった場合は意匠を構成しないとして出願が拒絶されます(意匠法3条1項柱書違反)。

あいぴー
この4つの要件を満たせば意匠登録されるん?
ふっくん
部分意匠も通常の意匠と同じように一般的登録要件(意匠法3条、5条1号、同2号、同3号等)も具備しなければなりません。

また、手続的要件も満たさなければなりません。

あいぴー
部分意匠に特有の手続的要件とかあるんやろな
ふっくん
はい。部分意匠として出願する場合には、権利対象を明確にするため、「意匠の説明」の欄において、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分が図面等において、どのような方法によって特定されているかを必ず記載しなければなりません(意匠法施行規則2条1項様式2備考8、同3条様式6備考11参照)
あいぴー
「意匠の説明」の欄さえ設ければOKなんか?

ふっくん
いいえ、手続きの便宜のため、一般の意匠登録出願と同じように一意匠一出願の原則(意匠法7条)に従う必要があります。
「意匠にかかる物品」の欄には、省令で定める「物品の区分」にしたがって全体の物品名を記載しなければいけません

あいぴー
つまり、「○○の部分」みたいな書き方はあかんのやな
ふっくん
そうです。
なお、もし一つの物品の中に物理的に分離した部分意匠が2以上表示されているものを出願した場合には7条違反になります。出願分割(10条の2)で救済されますが。
あいぴー
先後願(意匠法9条)の判断はどうなるん?
ふっくん
部分意匠同士を対比することにより行われます。
たとえば、自転車の全体意匠と自転車の部分意匠とでは、願書中の意匠に係る物品の記載は同一ですが、意匠登録を受けようとする方法・対象が異なるため、類否判断は行われません。
チーたん
先願が部分意匠の意匠権で、後願がその部分意匠を含む全体意匠の意匠権である場合は?
ふっくん
先願が部分意匠の意匠権であり、後願がその部分意匠を含む全体意匠または部分意匠の意匠権である場合は、利用関係が成立し(意匠法26条)、後願意匠権者の実施が制限されます。
先願優位の原則の下、権利関係を調整したものです。
あいぴー
これらの要件を満たしたら意匠登録されるん?
ふっくん
意匠の登録要件を満たした場合には登録査定(18条)をされ、「部分意匠」に係る意匠権が発生します(20条2項)。
あいぴー
効力は全体意匠の意匠権と同じなん?
ふっくん
同じです。意匠権者は業として当該部分意匠に係る登録意匠及びこれに類似する意匠の実施を専有することができます(23条)。
チーたん
これで物品の部分的な特徴の模倣を効果的に排除することができるね
あいぴー
部分意匠の類否判断はどんな風にされるん?
ふっくん
部分意匠は、「意匠に係る物品」「意匠登録を受けようとする部分の機能・用途」「意匠登録を受けようとする部分の位置・大きさ・範囲」「意匠登録を受けようとする部分の形態」に各要素に基づいて認定されます。
そして、いわゆる当業者の立場から見て、願書の記載や図面等からこれら要素を総合的に判断して、それら要素が同一であると判断した場合には同一であり、差異がある部分に評価すべき構成要素がないと判断した場合には類似とされます。
チーたん
この類否判断は重要だね。しっかり覚えなきゃ
ふっくん
さて、これで部分意匠制度について大事なことは大方説明しましたが、ご理解いただけたでしょうか。
あいぴー
部分的にはわかったで!
チーたん
部分意匠だけにね(^^;