利害関係人は商標登録を無効にする審判の請求をすることが出来(商標法46条)、無効審決が確定すると、その商標登録は初めから存在しなかったものとみなされます(商標法46条の2)。

しかし、一定の場合には商標登録無効審判を請求することが出来ません。

 

あいぴー
うちの会社の商標が勝手に商標登録されてたわ!急いで無効審判を請求するで!
チーたん
いきなり無効審判だなんて穏やかじゃないね。
もしもあいぴーの勘違いだったらどうするのさ。無効審判を請求するならきちんと下調べをしてからじゃないと、相手に迷惑がかかるよ。
あいぴー
何を調べればエエねん
ふっくん
基礎的なことですが、まずは、当該商標と指定商品・役務(サービス)を比べて下さい。
あいぴー
商標は同一。指定商品の一部は被ってるで。
ふっくん
相手の商標が登録されたのはいつですか?
チーたん
ん〜っと・・・わ、5年も前だよ!
あいぴー
そんなに以前に商標登録を受けたなんて許せんわ!
ふっくん
ちょっと待ってください。あいぴーの会社ではいつからその商標を使っていたんですか?
あいぴー
1年前や
ふっくん
じゃあ商標権者はあいぴーの会社の商標を真似したわけじゃないですよ!
というよりあいぴーが真似したんでしょ!
あいぴー
うちが考えたんや。真似なんてしとらんわ
ふっくん
知らずに商標権を使用しても商標権の侵害になるんですよ!だから、いつも商標を使用する前に商標調査をするように、と口を酸っぱくして言ってるでしょう!
あいぴー
1年前はふっくんはおらんかったもん・・・
ふっくん
とにかく、その商標は、即刻使用を中止するかライセンス契約を結んでください!
チーたん
ねえ、もしもうちの会社が5年以上前からその商標を使用していたらどうだったの?
ふっくん
その場合でも無効審判(商標法46条)は請求出来ないでしょうね。

チーたん
え?なんで?

ふっくん
「除斥期間」というものがあります。
これは、競業秩序の安定のために定められた規定です。

除斥期間

第四十七条  商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。

ふっくん
つまりですね、たとえあいぴーの会社の商標に便乗して模倣した商標を登録して使用した人がいても、その人が使用し続けて5年も経てばその商標にも信用が蓄積します。
5年も経ってから「その商標登録は無効だ!」と言われると、逆に市場の秩序を乱してしまいますよね。
無効にしたいなら5年も放置しないでさっさと無効審判を請求すべきです。
チーたん
確かに消費者からしてみれば、だれが商標権者かなんて関係ないもんね。一定の品質の製品を供給してくれているんならそれでいいし。困るのは真似された人だけだもんね。
ふっくん
そうです。商標法は公益的側面の保護も目的としていますからね(商標法1条)。
というわけで、5年という除斥期間の経過後は、利害関係人は商標登録無効審判を請求できないのです(商標法47条)
チーたん
どんな商標権でも5年経ったら無効審判を請求出来ないの?
ふっくん
いいえ、例外はあります。
たとえば、公序良俗に違反する(商標法4条1項7号)ような商標登録は、除斥期間の経過後でも無効審判を請求できます。
他にも勲章や国旗と同一・類似の商標(商標法4条1項1号)や赤十字の標章(商標法4条1項4号)と同一・類似の商標も同じように無効審判を請求できます。
チーたん
じゃあ、もし近いうちに紛争地域で独立国家が成立して、うちの会社が使っている商標と同じようなデザインの国旗が創られたらどうなるの?この商標は使い続けることは出来なくなるの?
ふっくん
残念ながらそういうことになりますね
チーたん
そんな〜(T-T)
ふっくん
まあ、そんなこと滅多にありませんから大丈夫ですよ
あいぴー
その滅多にないことを引き起こすのがうちや
チーたん
全然嬉しくないからっ(- -;)