素敵なネーミングを思いついたら他人に真似されないように商標登録出願しようと思うかもしれません。そして、他人にそのネーミングを真似されたら怒ってしまうでしょう。
ですから、ネーミングも知的財産と考えて、商標登録出願前に保護してほしいと思うはずですが・・・?

あいぴー
超カッコいい商品名を思いついたで!
これ、商標登録出願しようかと思うんやけど、お金かかるし、だれかにこの商標の商標登録を受ける権利を売ろうかと思ってるんや。
どうすればエエんかな?
チーたん
え?商標登録を受ける権利なんてあるの?

あいぴー
あるやろ。だって、特許を受ける権利(特許法34条)があるんやで?
商標登録を受ける権利もあるやろ

ふっくん
いいえ、そんな権利ありませんよ。

あいぴー
は?なんでやの?

ふっくん
商標法においては、特許法のように出願前に認められる知的財産権を受ける権利のような者は存在しないのです。

なぜなら、特許出願をする前には、まず前提として人間が発明(特許法2条)という知的財産を創造します。

それに対し、商標登録出願をする前には、「知的財産の創造」という行為がありません。

あいぴー
あるやん!うちは一生懸命この商品名を考えたんやで!
ふっくん
商標自体は単なる選択物です。

たとえ他人がそのあいぴーの考えた商品名を商標登録出願してもあいぴーは何も言えません。

考えてみてください。
スティーブ君が「アップル」という商標を指定商品「パーソナルコンピュータ」で取得したいと思ったとします。

しかし、「アップル」は昔々の人が考えた言葉だから使っちゃダメと言われたら、何も商標登録出願できなくなってしまいます。

同じように、マーク君が、「フェイスブック」という商標を指定商品「インターネットを通じたサービスの提供」で取得したいとき、赤の他人が、「フェイスブックという言葉は私が考えたものだ。使うな!」と言いがかりをつけたらどうなるでしょうか?

あいぴー
それはそうやけど・・・
このネーミングを考えたのはうちやねん。造語や。誰も使っていないはずや。

ふっくん
商標自体は単なる選択物に過ぎません。極端な話、他人が創った造語についても関係ない第三者が商標登録出願したって良いのです。

あいぴー
じゃあ、うちが「ペンパイナッポーアッポーペン」で商標登録出願してもエエんやな?

ふっくん
商標登録出願をすること自体は構いませんよ。

ただし、「ペンパイナッポーアッポーペン」についてはあいぴーは商標登録を受けることができない可能性が高いでしょう。
商標法4条1項各号の要件違反で拒絶されてしまいますから(商標法15条)

「ペンパイナッポーアッポーペン」ほど有名じゃない造語なら盗んでも大丈夫ですよ。盗む価値があるかどうかわかりませんが

あいぴー
うちは、知的財産というものを根本的に誤解しとったかもしれん
チーたん
ぼくも・・・。商標法は「言葉」を真似しちゃいけない法律なのかと思っていたよ。

ふっくん
商標法が保護しているのは、形式的には目に見える「商標」ですが、実質的には、目に見えない「商標に備わった無形の信用」なのです。

言葉を表面的に真似しても商標権侵害にはなりませんよ。


ふっくん
繰り返しますが、特許法が保護する発明は創作物ですが、商標自体は単なる選択物であって、創造物ではありません。

ですから、商標法においては、特許法にあるような知的財産権を受ける権利はないのです。

チーたん
出願をした後はどうなの?

ふっくん
「商標登録出願により生じた権利」が発生します(商標法13条2項)。これは、商標登録出願により発生する、国家に対して商標登録を請求し得る権利であって、移転可能な財産権です。

あいぴー
うちがこの商品のネーミングを保護してほしいと思ったら、最低限商標登録出願をしとかなあかんのやな。
よっしゃ、ついでに他人の考えた造語も商標登録出願するで!
ふっくん
商標登録出願においては、一応、商標登録出願人に「使用の意思」も要求されているので注意してくださいね。
自分が使うつもりもない商標について商標登録出願をするのはどうかと思いますよ。

商標登録の要件

第3条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

チーたん
J-PlatPatで検索してみたら、明らかに無関係な人から有名な造語が商標登録出願されてる!

ふっくん
流行語には顧客吸引力がありますからね。そうしたくなる気持ちもわかります。

あいぴー
他人が使って有名にした言葉を赤の他人が商標登録出願して、独占排他権である商標権(商標法18条)を取るのはどうかと思うで。

チーたん
あいぴーが言わないでよ(笑)