特許権とは何ですか?と聞かれたら、あなたは何と答えますか?
「自分の発明を自由に実施できる権利だ」
そう答えたあなた、必ずしもそうとは言い切れないんですよ!
ここでのキーワードは、「利用発明」と「選択発明」です。
ぼくが使っている特許発明は、ちゃんと特許登録がされているのに!
ふむふむ。どうやら、チーたんの特許発明は、ライバル会社の特許発明の利用発明みたいですね。
利用発明のときは、特許権者といえどもその特許発明を自由に実施できないのです。
特許を取ったということは、その発明を「他の人が実施できない」という意味です。
意味が分からないよ
そして、そのAさんの「携帯電話」から着想を得たBさんが「インターネット付き携帯電話」を発明したとします。
その「インターネット付き携帯電話」が、それまで世の中になかったものなら、Bさんは特許を取ることができます。
でも、Bさんが「インターネット付き携帯電話」を製造販売したら、「携帯電話」を製造販売したということになりますよね。
こんなときには、Bさんは、たとえ自分の特許発明でも実施をすることができなくなります。
このような関係を「利用関係」といいます。
先ほどの例は「思想上の利用」といいます。
他にも「実施上の利用」という利用形態もあります。
「実施上の利用」の例として、先願が物の発明のときに、後願が物の製造方法の発明の場合があげられます。
チーたんの特許発明に進歩性(特許法29条2項)が認められれば、そのような発明に特許を与えることは望ましい行為です。
ただし、後から特許出願したチーたんが先に出願したライバル社の特許発明を無制限に実施できるとしてしまうとせっかく特許を取ったライバル社がかわいそうですよね。不公平です。
ですから、特許法では、先願優位の原則に基づいて、他人の特許発明等と利用関係にある特許発明の実施を制限しました(特許法第72条)
[特許法 第72条 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。]
ぼくが特許を取った意味あるの?
もしライバル社がチーたんの発明したA+B+Cを実施したいと思ったら、チーたんから実施許諾を受けなくてはいけないんです。
チーたんはA+Bを実施できませんが、ライバル社もA+B+Cを実施できないんです。
すっごく無駄じゃない?(--;)
ですから、特許法では、クロスライセンスを認めています。
ライバル社側からでも、チーたん側からでも、特許発明の実施許諾をするように請求することができます。
利用発明等を実施するための裁定制度
[特許法 第92条 特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第72条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議を求められた第72条の他人は、その協議を求めた特許権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする特許発明の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
3 第1項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
4 第2項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第72条の他人は、第7項において準用する第84条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
5 特許庁長官は、第3項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第72条の他人又は特許権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
6 特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第4項の場合において、第3項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
7 第84条、第84条の2、第85条第1項及び第86条から前条までの規定は、第3項又は第4項の裁定に準用する。]
悔しいからできるだけ利用発明をされないようにしたいな。
「バラの抽出エキス(5~10ml)にイモリとヤモリを入れて反応させることによって得られた魔法薬A」
という特許をチーたんが取ったとします。
そして、その後にライバル社が、
「バラの抽出エキス(8ml)にイモリとヤモリを入れて反応させることによって得られた魔法薬B」という発明をしたときに、これは特許になるでしょうか?
取れる場合があるんですよ。
例えば、魔法薬Aが「飲んだ人が飲ませた人に惚れてしまう」という効果であるのに、ライバル社の発明した魔法薬Bには、惚れてしまう効果がなく、「髪の毛がクルクルになる」という効果があるというような場合です。
そもそもチーたんは、バラの抽出エキスを8ml入れれば、髪の毛カール薬が完成するということを認識していなかったわけですから、魔法薬Bについてはライバル社の特許発明になります。
もちろん、この場合も後願であるライバル社は先願のチーたんの発明を自由に実施できず、チーたんもライバル社の特許発明を自由に実施できないことに変わりはありません。
特許を取ったらすぐに利益に結び付きやすいし。
よーっし。
すごい化学薬品を創るぞ!
もしかしたら昼間じゃなくて月夜の晩のうしみつ時にヤモリとバラとローソクを焼いてつぶして粉にすれば、かつてない媚薬が作れるかもしれない!
ホロレチュチュパレロ♪