特許戦略において拒絶理由通知(特許法50条)や補正(特許法17条の2)、そして、分割出願は重要な役目を持っています。
難しそうだからといって毛嫌いせずに学んで活用してください。それほど複雑ではありませんよ。
心配だったら、専門家である弁理士に教えを請えばよいのです。実践のなかで学べます。
出願費用を抑えるためにわざわざ出願の単一性(特許法37条)を満たして出願したのに、なんで分割しちゃうの?
しかし、たとえば、一部の請求項のみが拒絶理由通知を受けている場合、分割出願を行うことで拒絶を受けている請求項を切り離し、拒絶理由のない請求項については早期に権利化を狙うことが可能です。
分割出願を行った場合、その分割出願は元の出願時に行ったものとみなされるので、元の出願後、分割出願の前に他人の特許出願があった場合でもその特許出願を原因として自己の分割出願が拒絶されることはありません。
特許のクロスライセンスの材料にするのです。
ところで、分割出願は拒絶理由通知を受けた時にだけできるの?
1.補正期間内
2.特許査定の謄本の送達があった日から30日以内。
3.最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内。
特許出願の分割
第44条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を1又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定及び第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。
ただし、新たな特許出願が第29条の2に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第30条第3項の規定の適用については、この限りでない。
特許が登録されると権利範囲は確定し、変更はできないんじゃないの?
しかし、特許査定を受けた後にも分割出願をしたいと願う実際のニーズがあったのです。
たとえば、特許査定を受けたクレームが限定し過ぎていて、もう少し大きな権利が欲しい場合や、明細書中に記載してある別の発明を権利化したいと思う場合は多々あるわけです。
そういった特許出願人のニーズに応えて、特許査定謄本の送達後、一定期間内に限って分割出願をすることを認めたというわけです
特許査定後(または拒絶査定後)に分割する場合、その審査過程等において補正により削除してしまった事項は分割することができないのです。
たとえば、分割出願をする直前の原出願の明細書等に記載されていない事項であっても,原出願の出願当初の明細書に記載されていた事項(=審査過程において一度削除した事項)は、補正により復活させることができるので、分割出願をする場合に、わざわざ補正をして削除した事項を復活させてから分割出願をするという面倒くさいことはしなくてよかったのです。
例を挙げてみましょうか。
たとえば、拒絶理由通知(特許法50条)が来た時に、物の製造方法についての請求項は放棄して、物の発明だけ特許化をしよう、
と決めることがあると思います。
そして、製造方法の請求項だけでなく、製造方法が記載されている明細書の部分(たとえば実施例など)もすべて補正で削除してしまうことがあります。
しかし、請求項だけでなく、明細書全体から物の製造方法についての請求項を消してしまうと、分割出願をするときに、物の製造方法の発明について復活させることができずに、権利化のチャンスを逃してしまうことになるのです。
(ちなみに、「補正をできる時期」に分割出願をする場合には、出願当初明細書の範囲で分割が可能です)
それは、「分割出願に親出願でされた拒絶理由と同じ拒絶理由があった場合は、補正が却下される」ということです。
既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知
第五十条の二 審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
原出願が共同出願である場合には、出願人全員で分割出願しなければなりません。
出願人全員が、原出願の明細書等に開示された発明の全てについて、特許を受ける権利を共有しているものと考えられる(特許法34条1項)ためです。
なお、発明者は一致している必要はありません。
分割出願と孫出願