現代では、誰でも簡単に写真や動画をインターネット上にアップロードすることが出来ます。
しかし、たとえばキャラクターのTシャツを着ていた場合のように写真を撮るときに、他人の著作物が写り込んでしまうこともあります。
そのようなときにまで著作権侵害の責を負わなくてはいけないのでしょうか。
何で?
昨日アニメイトの店内で自撮りしたんやけど、背景に思いっきりキャラクターのポスターやら何やらが写り込んでもうたから、モザイクかけたんよ。
著作権的になんか言われそうで怖いやろ?
っていうか、モザイクなんてかけなくても大丈夫なんじゃないの?
以前、ふっくんが写り込みはOKって言っていたよね?
「付随対象著作物」の写り込みなら平気ですよ。
何やねん、それ・・・
分離困難性・軽微性・利益不侵害性の3つを満たしていれば付随対象著作物とされます。
条文の文言を説明してもわかりにくいので、写真の著作物と音楽の著作物で具体例をあげて説明しましょう。
たとえば、あいぴーが自分の写真を撮ってもらったとします。
背景にはとある映画のポスターが小さく写り込んでしまいました。
あいぴーが着ている服にもキャラクターのイラストがついています。
その写真をあいぴーはモザイク処理無しでブログにアップするとします。
この場合、確かに他人の著作物は写り込んでしまっているのですが、「付随対象著作物」に当たるのでそのままアップしても大丈夫です。
また、たとえば、子供がショッピングモールで遊んでいるところをお父さんがビデオにおさめたとします。
そのときに、たまたまショッピングモールで著作権のある音楽がかかっていたとします。
その後、「翔太・5歳の思い出」と題した1時間に渡る動画をYouTubeにアップロードしたとします。
ショッピングモールでの動画はそのうち2分程度だとしましょう。
その場合、確かに著作権の存在する音楽を勝手に使っていることになりますが、全体のうちほんの少しですし、その曲が動画のメインではないので、著作権法30条の2の規定により著作権侵害とはなりません。
著作権法第三十条の二
写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製又は翻案することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により複製又は翻案された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物の利用に伴つて利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
あと、動画も撮って、ユーチューブにアップするで。
たとえば、もしあいぴーが「ガンダムのポスターと私」という題名でブログに自分の写真をアップしたとします。
すると、ガンダムのポスターの写真はあいぴーと同列の主役級の扱いですよね。
しかもガンダムのポスターが大きく鮮明に写っていたとしたら、「写り込み」の限度を超えていますよね。
さらに、あいぴーが自身のブログでアニメキャラクターグッズのアフィリエイトをしていたりアドセンスを行っていた場合、「他人の著作物の顧客吸引力を利用」していることになります。
あいぴーはその写真から不当に金銭的利益を得ることになりますよね。
写り込みの扱いはブログだけでなく、インスタグラムやFacebookなども同じです。
著作物が小さく映り込むだけなら大丈夫ですが、鮮明に大きく扱われている場合には注意が必要です。
自分では映り込みだから安心、と思っていても、著作権者から訴えられる可能性は十分にありますよ。
モザイク処理した方が安全なんだね。
いくら「写り込み」なら非侵害、と言ってもグレーゾーンもありますからね。
主婦のブログで自分の息子がたまたまアニメキャラのTシャツを着ていて、それをアップしたくらいなら大丈夫ですが、アニメをネタにしているブログで毎回ブログの運営者がいろんなアニメのTシャツを着ていたら著作権侵害になる可能性は高いですね。
ちなみに、付随対象著作物と認められたものは、メインの写真や動画の著作物に伴って上映や演奏、それから販売することもできますよ。
たとえば、あいぴーがキティちゃんのシャツを着て踊っている動画のDVDを販売したり上映したりすることができます。
ただし、当たり前ですが、勝手にAKBの歌を歌ったりエグザイルのダンスを踊ってはいけませんよ。
たとえば、あいぴーの会社でガンダムのキャラクターグッズの販売を行いたいと考えたとします。その場合、企画書やプレゼン資料にシャアやザクのイラストを載せたとしましょう。
その場合、ガンダムの著作権者からライセンスを受けることを前提にしているので著作権者の利益を不当に害することにはなりません。
しかし、形式的には著作権の侵害行為に当たります。
検討の過程における利用 著作権法第30条の3
著作権者の許諾を得て、又は第六十七条第一項、第六十八条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、これらの利用についての検討の過程(当該許諾を得、又は当該裁定を受ける過程を含む。)における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
「利用しようとする者」であって「利用する者」ではないので、最終的に企画がおじゃんになってしまったとしても著作権侵害の責を負う必要はありません。
ガンダム関連グッズを売り出したいのだけど、ガンダムを見ていない社員がいるからその社員のためにガンダムのDVDを複製して配るの
じゃあ、うちの会社で3Dプリンタでガンダムの模型を造って、こんなの販売しようと思っているのですがどうですか?って取引先に配ったり、お客さんに無料であげたりするのはどう?
たとえば、会社内で新しい録音装置や録画装置の発明をしていたとします。そのときにきちんと動作するかどうか確かめるために著作物である音楽や動画を録音・録画することがあります。
そのような場合も試験や研究のための著作物の利用ですので、著作権侵害にはなりません。
技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
著作権法第30条の4
公表された著作物は、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度において、利用することができる。