インディーズバンドをしていると、他人のバンドの商標権を侵害しないか、自分のバンド名も商標登録すべきなのかという疑問が沸いてくると思います。
そんなミュージシャンのために、商標調査の仕方や先使用権などについて説明いたします。
これ、ぼくの好きなインディーズバンドのオリジナルグッズなんだ。
他にもTシャツとマグカップも持ってるよ♡
「ウイザ・ミッションマン」っていうバンドなんだ
*「ウイザ・ミッションマン」は商標法の説明のために福田が勝手に考えたバンド名であり、実在の団体名とは一切関係ありません。
ほれ、ググッて見てみい!
一度見たら忘れられない強烈なキャラクターだね。
・・・あれ、このTシャツのロゴ、ぼくのTシャツと似ているな
曲を聞いてみてよ!
どういうこっちゃろ
商標法的に順番に検討していきましょう。
まず、MANWITH A MISSIONですが・・・どれどれ、世界的にライブを開いているかなり有名なバンドのようですね。
私は知りませんでしたが、これだけライブを開いたりテレビ出演をしているならMAN WITH A MISSIONは「有名な商標」といえるでしょう。「著名」な商標といってもいいくらいかもしれません。
そのバンド名と似たバンド名で活動していると、いろいろと問題が出てきます。
まずJ-Platpatにアクセスします。
そして左から3つ目の「商標」「称呼検索」を選んでください。
そして、一番上に、「マンウィズアミッション」と入れてみてください。
中黒(・)を入れて「マン・ウィズ・ア・ミッション」にするとエラーが出るので気をつけて!
区分41類に関しては、2012年3月6日に株式会社エッグマンから出願されている。
半年後に商標登録を受けているね
このバンドは2010年から活動を開始しているみたいですね。
順調に知名度を上げていき、2013年には、映画「変態仮面」の主題歌を歌っています
有名なバンドなんだね。
周知性(知名度)はどれくらいありますか?
他人の登録商標の出願前から同一又は類似の商標について同一または類似の指定商品又は役務について使用をしており、その商標が有名になっている場合には、引き続きその商標の使用を出来るという権利です。
先使用による商標の使用をする権利
第三十二条 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項 の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
この時点でのぼくの好きなインディーズバンドの知名度は・・・まだあんまりないかな。
たとえば、被服の販売について「ゼルダ・ZELDA」という商標についてはバイヤーたち(問屋等)の間での知名度のみでOKとされました。
一般人に尋ねても分かるほどの周知性は不要と判断されたのです。
業界内では有名な商標ってありますよね。
*任天堂のゲームの「ゼルダの伝説」は関係ありません。
隣接都道府県程度の周知性じゃだめかなあ
このまま活動を続けていると、商標権者から権利行使をされる可能性はあります。
登録されている他人の商標と同じバンド名やロゴと同じものを使わないということです。
登録商標の効果は絶大です。
「気付かなかった」という言い訳は効きません。
商標権の効力が及ばない範囲(商標法26条1項1号)があるので「商標的使用(商標法2条3項)」をしない限りはバンド名を使い続けることは出来ますが、そのバンド名を使ってファングッズを販売してしまったりすると、チーたんの好きなインディーズバンドは、差し止め請求(使うのを強制的にやめさせられる)や損害賠償請求(損害が生じていたら賠償金を払えと言われる)をされる可能性があります。
商標権のせいで活動を中止させられるなんてやるせないよ
商標権は他の知的財産権法と異なり、公益保護の面が強いのです。
つまり、似たような商標の使用を許さないことによって一般人が混乱しないようにして一般人の利益の保護も図っているのです。
チーたんの好きなバンドにとっても「パクリバンドだ」とか「マン・ウィズ・ア・ミッションに名前が似ているから間違ってCD買っちゃったけど全然ダメだった」なんて言われるのは辛いですよね。
ですからこれ以上被害が広がる前にバンド名を変更してしまったほうがいいでしょう。
まず、J-Platpatにアクセスして、バンド名を入れます。次に、役務全類(35類を除く)を選ぶか、41類と入力します。または、類似群コードをいれます。類似群コードは41E03です。
ちなみに、指定商品では15類 楽器あたりも危険でしょう。
全角カタカナで、それから少し変えた用語も入れてみてください。
全く同一でなくても「類似だ」と判断されたらアウトですので時間をかけてじっくり検索してください。
たとえば、あなたのバンド名が「GLAY」だったら、「グレイ」「ズレー」「グレー」など考えられるバリエーションは全て検討してください。
何十個ものバリエーションを試して、それでも似たような名称が出てこなかったら、おめでとうございます。
無事その名称は使い続けることができますし、商標登録を受けることも出来ます。
(指定商品CDについては日本では無理ですが)
商標登録にはかなりのお金がかかりますが、自分でここまでやっておくと、弁理士の手間も減りますから、割引して貰えるかもしれません。
ちなみに、個人で登録すると、実名と住所が公表されてしまいますので、それを避けたい人は会社を創設するか事務所に所属してから商標登録をしたほうが(してもらったほうが)いいでしょう。
焦って商標登録をするよりはまずは知名度をあげることに力をいれるべきでしょう。
日本の商標法は「登録主義」を採用してはいますが、登録主義の弊害を是正するために「使用主義」的な要素も取り入れています。
つまり、人気バンドの名前で商標登録出願をしてしまうような不正な目的で出願してしまう人の商標登録出願は認めず、また、認めてしまったとしても無効にし、正当に使用している人の権利を守ってくれるのです(商標法4条1項10号、15条1号、46条1項)
特にバンドマンの場合はファンが家に押しかけてきたりする危険性があるから怖いね
または、その商標を持っている人から商標を売ってもらうようにしてください。
活動しているバンドだったら、まあ売ってはくれないでしょうが・・・。
活動を中止したバンドだったら不使用取り消し審判(商標法50条)を請求して商標登録を消すことも出来ますよ。
さて、晴れて商標登録を受けることが出来たとしても、ロゴが他社の意匠権を侵害している可能性もあります。
つまり、この先自分のバンドのロゴを付したTシャツやマグカップなどを販売しようとしたときに、似たようなデザインで意匠登録を受けている人がいた場合、その人の意匠権の侵害となってしまいます。
ですから、画像意匠検索支援ツール(Graphic image park)を使って似たような意匠がないか検索してください。
簡単ですので説明はいらないでしょう。
パソコン内部に自分のバンドのロゴを入れておいて、それを選択すればいいだけです。
商標登録を受けたからといってバンドが儲かるわけではありません。むしろ逆に商標の維持費がかかるわけですからマイナスです。
出来ることなら早い時期に商標を得たいところですが、商標登録出願をするのは、数年バンドを続けて、知名度も得て、この先も活動し続けてもっと有名になれると確信してからでも遅くはないかもしれませんよ。
ファンにとってバンドマンはミステリアスであってほしい・・・だから個人名で商標登録なんて不要や!