商標は選択物ですので発明のように創作性は必要とされません。
したがって、既存のことばについても商標登録されることがあります。

では、人物の名前の時はどのように取り扱われているのでしょうか。

あいぴー
なあなあ、他人の名前って商標登録できないんやろ?

チーたん
そうだよ。商標法4条1項8号の規定により、他人の氏名は商標登録できないんだ。

商標法4条1項8号
 

他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

あいぴー
「氏名」ってことは、名字だけとか名前だけなら大丈夫なん?

チーたん
うん。それから「氏名」の場合でも、その氏名の人全員から承諾を得ていれば大丈夫だよ。

あいぴー
それは面倒やなあ・・・。
もしその氏名の人が亡くなっていたら承諾を得ずに勝手に商標登録出願してええの?

チーたん
そういうことになるね。
あ、でも、その亡くなった人が有名人だった場合は商標登録されなかった気がするなあ

あいぴー
でも条文にそんな規定無いやろ?

ふっくん
はっきりとは書かれていませんが商標法4条1項7号で出願が拒絶されることになっていますよ

チーたん
故人の名前を商標登録することが公の秩序や善良の風俗を害するかな?

ふっくん
昔は歴史上の人物の名前でも商標登録されていたんですよ。たとえば織田信長とかね。
ただ、私企業に歴史上の人物の名前を独占させることはいろいろと問題があるんです。

たとえば、その人物ゆかりの地で土産物にその人物名を使えないと観光業が成り立たなくなってしまいますし、地元民からしてみたら、愛着がある人の名前を独占されたくはありません。
だいたい、歴史上の人物の名前にはそれだけで顧客吸引力がありますよね。
たとえば、楽器の商標が「ベートーベン」だったら、それを使うだけで音楽の天才になれそうな錯覚を起こさせることができます。

でも、そんなのフェアじゃないですよね。

チーたん
そうだね。企業努力じゃなくて有名人の著名性に便乗しているだけだから競業秩序を乱すね

ふっくん
そうです。ですから、公の秩序を害するおそれがある商標として、そのような商標登録出願は出願が拒絶されることになったのです。

具体的には、当該歴史上の人物の①周知・著名性②国民や地域住民の認識③当該歴史上の人物の名前の利用状況④指定商品・役務との関係⑤5出願の経緯・目的・理由⑥当該歴史上の人物と出願人との関係などを総合的に勘案して判断されます。


あいぴー
なんやー。指定役務「ビジネスのセミナー」で商標「福沢諭吉」を登録しようと思っとったのに・・・

ふっくん
過去に「福沢諭吉」商標の登録を受けた人がいましたが、慶應義塾大学が無効審判を請求して、無効にされていますよ。
今「福沢諭吉」商標を有しているのは慶應義塾大学だけです。

あいぴー
有名な人の愛称はどうなん?たとえば、「遠山の金さん」とか・・・

ふっくん
愛称なら商標登録されますよ。ただし、その愛称を広めた本人に限定されることもありますけどね

あいぴー
「モハメド・アリ」が亡くなったから早速商標登録しよう思とるんやけど・・・

ふっくん
最近亡くなった人でも「歴史上の人物」ですよ。特にモハメド・アリみたいな有名人の名前には、未だに顧客吸引力がありますから商標登録は無理ですよ

あいぴー
じゃあ、顧客吸引力がなくなった頃に商標登録受けよかな

チーたん
そこまでするよりは、造語商標で商標登録受ければいいと思うけど・・・^^;