弁理士や知財部員の業務においては「中間処理」というものは大きなウエイトを占めています。
そのため、弁理士試験においても必ず出題されます。
基礎からしっかり学びましょう!
補正とは、特許出願をした後で出願人が出願書類について補充・修正することです。
手続き上の補正(方式補正)と明細書・特許請求の範囲・図面の補正(実体的補正)があります。
方式補正は、方式違反や手数料の未納などについて補正するもので、特許出願が特許庁に継続している限り(PCT出願については国内段階に移行してから)いつでも補正することが出来ます(特許法17条1項)。
自発的にすることも出来ますし(特許法17条1項)、命令に応じてすることもできます(特許法17条3項)。
いずれも手続きにおける軽微な瑕疵を治癒するために行うことが許されているものであり、大きな瑕疵を含む手続きは却下されます(特許法18条の2)。
たとえば、特許出願に出願人の氏名が記載されていない場合(特許法38条の2第1項2号)などは特許庁長官から手続き補完命令がされます(特許法38条の2)。
不適法な手続の却下
第十八条の二 特許庁長官は、不適法な手続であつて、その補正をすることができないものについては、その手続を却下するものとする。ただし、第三十八条の二第一項各号に該当する場合は、この限りでない。
2 前項の規定により却下しようとするときは、手続をした者に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出する機会を与えなければならない。
特許出願の日の認定
第三十八条の二 特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。
一 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 明細書(外国語書面出願にあつては、明細書に記載すべきものとされる事項を第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第一項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。
2 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。
ちなみに要約書は出願日から1年3月以内に補正が可能ですよ(特許法17条の3)。
実体的補正は、時期的・内容的に厳しく制限されています。
出願当初に記載されていなかった発明を追加してしまうと、出願時に発明されていなかったものにまで特許権を付与することとなり先願主義に反し、第三者に不測の不利益を与えることになってしまうからです。
まず、時期的制限としては、拒絶理由通知を受けた後は特許法17条の2第1項各号に掲げる期間内にしか補正をすることが許されません。
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正
第十七条の二 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。
17条の2第3項 第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
特にクレームの減縮補正については、補正後におけるクレームに記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるもの、すなわち拒絶理由を有しない者でなければいけません(特許法17条の2第6項)。
これを独立特許要件と言います。
特許法17条の2第5項 前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
6 第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。
あ、そうそう、補正について学習するときには、53条(補正の却下)も併せて勉強してくださいね