PCT国際出願は実務でも弁理士試験でも重要なところですのでしっかり勉強しましょう。
PCTについての基礎的な知識が怪しい人は、先にPCTとはと外国へ特許出願する方法をご覧ください。
PCT国際出願は、日本の特許出願を基礎にしなくてもできますが、パリ条約による優先権を主張することもできます。すると、パリ条約上の利益(日本の特許出願の出願時を基準にして、新規性・進歩性等の特許性の判断がされる)を受けることが出来ます。
日本の特許出願人は、いきなり日本で特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を行うこともあると思いますが、チーたんの言うように、日本での特許出願に基づき、PCT出願を行うことが多いと思います。
日本で国内出願をし、優先権の主張を伴って国際出願をする場合について考えてみましょう。
この場合、指定国「日本」については、「自己指定」となり、優先権の要件と効果については日本の特許法の規定を受けます。つまり、「国内優先権」の主張の効果が現れます。
ですから、日本での出願に基づく優先権主張を伴った国際出願について日本で権利を取得するためには、優先日から30月以内に国内移行手続きを取らなくてはいけません(存続期間は、PCT出願の出願日から20年)。
国内移行手続きをとらない場合、先の出願は取り下げられてしまうのですから、以下の場合を除き、日本で権利を取得することは出来なくなるので注意が必要です。
①国際出願願書(第Ⅴ欄)に設けられた日本のチェックボックスにチェックをして日本の指定を除外する。
②先の出願がみなし取下げとなる、先の出願の出願日から16ヶ月前に「指定国の指定取下書」を受理官庁に提出し、日本の指定を取り下げる。
③「上申書」を受理官庁である日本国特許庁に提出し、「国内優先権の主張」を取り下げる。
先の出願について権利を取得するだけなら、国際出願を取り下げるという方法もあります。
これで、自己指定にはならず、先の出願は取り下げ擬制されないので権利が取得できます(存続期間は、基礎出願の出願日から20年)。
もちろん、国際出願については日本で権利を取得することはできませんよ。
ちなみに、指定国から日本を除外した場合についてですが、国際出願の国際調査報告を作成する時に、優先権主張の基礎となる日本の国内出願の審査結果 が利用できる場合には、納付された調査手数料のうち一部が出願人の請求により返還されます。そのためには、
①国際出願に先立って早期に国内出願の審査請求をする
②願書第Ⅶ欄の「先の調査結果の利用請求」の欄に 国内出願の番号等を記入する
③国際出願における日本の指定を除外し又は取り下 げる
④国際調査手数料の一部返還請求を提出する。
ことが必要です。
ところで、先の出願が日本での国内出願、優先権主張を伴った出願が国際出願の場合、日本においては自己指定になるといいましたが、日本以外の指定国についてはパリ条約による優先権の主張となります(PCT8条2(b)、特許法184条の15、41条、42条)。
さて、パリ優先と国内優先の違いになるのですが、第一国出願がパリ同盟国にされ、パリ優先権を伴って第二国出願をする場合、パリ優先権主張の基礎とすることができるのは、いずれかの同盟国に正規にされた出願であればよいとされています。したがって、後に取り下げ・放棄・拒絶査定等が行われても構いません。
国内優先権の場合はどうですか?
では、PCT出願について日本で権利を取得するためには国内移行手続きを取る必要があるといいましたが、基礎出願についても国際出願についても権利を取得したい場合にはどうしたらよいのでしょう?
日本以外の国に関してはパリ条約による優先権を主張できるので大丈夫なんですけどね。
また、国際出願について、日本の指定は維持されているので、調査手数料の一部を返還してもらうことはできません。
国内出願については、早期に審査請求をしましょう。
その審査状況を見ながら、国際出願について国内移行手続きをとるかどうか決めます。
先の出願が国際出願の場合も教えて!
それはまた別の機会にして今日のところはおやつにしましょう!
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