事業が拡大すると、日本国内だけでなく、外国でも商標の保護を図りたいと考えることがあるでしょう。そのようなときに便利な制度がマドプロ出願です。

あいぴー
外国でも商標権を取得したいのやけど、各国ごとに違う法制度を調べたり翻訳文を出したり・・・・と面倒やなぁ。
ふっくん
そんなときはマドプロ出願をしましょう!
チーたん
マドプロ?
ふっくん
マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)、通称マドプロです。
商標の国際登録について定める国際条約ですよ。
本国官庁(日本では特許庁)を通じて手続きをすることにより一度の手続きで複数の国で権利を取得することができます。
また、更新登録の手続きも一度で済むので、商標の管理が容易ですし、翻訳文の提出が不要なので、コストも抑えられます。
あいぴー
そんな制度があるんやね!
ふっくん
便利でしょう?
商標権を取得したい国がマドプロ締約国でないと利用できませんが。
チーたん
PCTみたいね
ふっくん
一度の手続きで複数の国で権利を取得できるという点では同じですね。
でも、違う部分もあります。
たとえば、マドプロの場合は、本国での基礎出願または基礎登録が必要です。
また、基礎出願・基礎登録と商標の同一性(標章同一及び指定商品・役務の同一)も必要とされます。
チーたん
PCTの場合は自国に特許出願したり特許が登録されている必要はないよね。
ふっくん
はい。ちなみに意匠のジュネーブ改正協定の場合も基礎出願や基礎登録の存在は不要です。
チーたん
指定国はみなし全指定されるの?
ふっくん
いいえ。国際出願時に保護を求める国を指定するだけです。
チーたん
手数料は受理官庁が徴収するの?
ふっくん
いいえ。国際事務局に納付します。
チーたん
似ているようで違う点もいっぱいあるみたいね
ふっくん
その辺については別のところでご説明いたしましょう。
あいぴー
出願は、日本語で日本の特許庁にすればエエの?
ふっくん
さすがにそこまでは認められていません。
マドプロで認められている言語は英語、フランス語、スペイン語のいずれかだけです。
日本の場合は英語だけです。
チーたん
国際登録されたら指定国でどのような保護を受けられるの?
ふっくん
本国官庁を通じて国際事務局に英語で国際出願をし、国際登録を受けたら、指定国官庁が12か月(または各国の宣言により18か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において国際登録日からその商標がその指定国の官庁に登録されていた場合と同一の効果を得ることができます。
チーたん
存続期間は10年?
ふっくん
そうです。国際登録日から10年となります。また、その後更新も可能です。指定国ごとに手続きをする必要はありません。
チーたん
本国官庁である日本国特許庁へ国際登録出願を提出した後の手続の流れを教えて
ふっくん
本国官庁では願書の方式審査及び本国認証を行います。すなわち、特許庁に係属している商標登録出願等(商標登録等)との標章の同一性、出願人(登録名義人)の同一性、指定商品・役務の範囲などについて確認を行い、マドリッド協定議定書上求められる要件を満たしていると判断したときは、国際登録出願の受付日(受理日)を付与して、当該願書をWIPO国際事務局へ送付します。
チーたん
国際事務局による手続きはどんなふうに行われるの?

ふっくん
国際事務局は、国際出願の方式審査をした後、国際登録簿に商標を国際登録します。国際登録された商標は、国際事務局により国際公表されます。

国際事務局は、国際登録後、その旨各指定国の官庁に対して通報します。
指定国の官庁は、その指定国において国際登録に係る商標の保護を拒絶する場合には、拒絶の通報の日から12か月又は18か月以内にその旨国際事務局へ通報します。


あいぴー
審査期間が制限されとるというのはエエな。いつ頃登録されるか予想がつくからな

ふっくん
国際登録の日から5年の期間が満了する前に本国における基礎出願が拒絶又は基礎登録が無効若しくは取り消しなどとなった場合には、国際登録も取り消されます(セントラルアタック)。その際、国際登録の名義人であった者は、救済措置として各指定国において国際登録を国内出願へ変更することができます。
あいぴー
セントラルアタックって必殺技みたいで怖いけど、何なん?

ふっくん
基礎登録の無効・取消しにより国際登録が取り消されることです。
国際登録日から5年間は、国際登録の保護は本国官庁における基礎出願・基礎登録に従属します。
具体的には、国際登録の日から5年以内に、国際登録の基礎となった自己の商標登録出願又は防護標章登録出願(以下「商標登録出願等」という。)が拒絶、取下げ、若しくは放棄となった場合、又は基礎となった自己の商標登録又は防護標章登録(以下「商標登録等」という。)が期間満了、無効若しくは取消しとなった場合には、取り消された範囲内で国際登録の全部又は一部が取り消されることです。商標登録出願等の指定商品・役務を減縮し登録になった場合も、商標登録等の商品・役務が減縮された範囲で、国際登録簿に記録された商品・役務が取消しとなります。

あいぴー
怖いな

ふっくん
指定国における登録の効果も当該取り消しの範囲内で失効しますが、国際登録簿に取り消しが記録された日から3月以内にその国の条件を満たす商標登録出願(転換出願)を行えば、当該出願は国際登録日(又は事後指定日)に行われたものとみなされます。

なお、指定国での拒絶対応については、当該国の代理人による手続きが必要とされることがあるので注意してください。

チーたん
スムーズに登録されればいいけど、拒絶された場合は手間とお金がかかるというわけだね

ふっくん
料金についてですが、マドプロを利用する場合、一の通貨(スイスフラン)による料金支払いだけで、国際出願をしたり、国際登録を更新することができます。

チーたん
ところで、国際登録後に、国際登録名義人は指定国や商品・役務を追加することができるの?

ふっくん
できますよ。
国際登録名義人は国際登録出願時に指定しなかった締約国はもとより、出願後に新たに加盟した締約国についても事後指定によって追加することができます。
また、国際登録出願時に特定の国に対し商品・役務を限定的に指定していた場合でも、国際登録の範囲内であれば、指定しなかった商品・役務を追加することができます。

チーたん
なるほど。マドプロは外国で商標登録を受けたいときに便利な制度だということがわかったよ

あいぴー
横文字は覚えにくいけど、セントラルアタックについては忘れられん

チーたん
あいぴーはさっきからそれしか言っていないよ(笑)