突然ですが、ファービー人形を知っていますか?キモかわいくて、目や口が動くぬいぐるみです。
さて、これは著作物でしょうか?

また、最近は精巧なフィギュアが出回っていますが、これらは著作物でしょうか?

 

そして、座るという実用目的がメインの椅子が著作物になる可能性なんてあるのでしょうか?

今回は簡単そうに見えて難しい応用美術について学習しましょう。

あいぴー
うちのデザインした芸術的なマグカップが真似されとる!
著作権侵害で訴えたる!!
チーたん
え?著作権?
マグカップなんかに著作権が発生するのかな?
あいぴー
普通のマグカップは無理やろうけど、うちのデザインしたものは高度な芸術性を備えとるんや
チーたん
意味わかんないから(笑)
マグカップに著作権は発生しないよね?ふっくん。
ふっくん
う〜ん、通常はそう思いますが、もしかしたら、あるいは・・・
チーたん
ええっ!?マグカップに著作権が発生するの??
ふっくん
表現に制作者の何らかの個性が発揮されていれば著作物性を認められる可能性はありますよ。
チーたん
本当に!?
著作権法で言う著作物って、絵画とか彫刻とか写真とか美的鑑賞性を持っているものだよね?

マグカップは工業的に量産されるものだから「美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性は無い」と思うのだけど・・・。

ふっくん
私も基本的にはそう思います。

しかし、工業的に量産される妖怪フィギュアにも著作物性が認められました。

チーたん
まぁ、フィギュアや人形は実用性がないから著作物として認めてもいい気がするよ。
ふっくん
また、TRIPP TRAPP事件では幼児用の椅子の一部に著作物性が認められています。
チーたん
何で?椅子は実用品でしょ。

椅子を知的財産権で守りたかったら意匠権を取ればいいじゃない。

ふっくん
そうなのですが、意匠法との重複適用を認めても良いとTRIPP TRAPP事件では判示されました。

著作権の方が保護期間はずっと長いですし自動で発生する権利ですし、著作物性が認められるならそのほうがずっと良いですよね。

チーたん
ぼくはやっぱり、昔ながらの考えに賛同するよ。大量生産されるものは美術品ではないと思う。

意匠法と棲み分けるのがいいと思うな。

ふっくん
しかし、著作物かそれとも単なる実用品かを見分けるのは難しいですよね。

裁判所が芸術であるかどうかを判断するのもおかしいですし。

たとえば、洗練されたデザインのマグカップが美術館に飾ってあったら、それを見た人は「これは美術品だ」と思うはずです。

チーたん
そりゃそうだけど・・・。
ふっくん
こうしたデザイン性のある実用品は「応用美術」と呼ばれています。応用美術という用語は著作権法の中には出てきません。

対立する用語は「純粋美術」です。
純粋美術は当然著作物です。

 

従来、応用美術が著作物として保護を受けられるのは例外的な場合のみとされてきました。
すなわち、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性がなければならないとされていたのです(段階理論)。

ふっくん
さて、応用美術の中に「美術工芸品」というものがあります。
これは、一点制作のアクセサリーや仏像などが該当します。

この美術工芸品は純粋美術ではありませんが、著作権法2条2項に「この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。」との規定があるため、著作権法で保護されます。

ただし、美術工芸品以外の応用美術が著作権法で保護されるのかどうかはわかりません。

ですから、裁判で多数争われているのです。

TRIPP TRAPP事件の他にも様々な裁判の中で応用美術の著作物性が争われていますよ。

チーたん
そりゃ争うだろうね。
著作権で守って貰えるならありがたいもの。
ふっくん
裁判では、「個別具体的に、作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべき」
とされているので難しいところです。

応用美術と美術工芸品との境界は曖昧で、大量生産される工業製品であっても、独立して美的鑑賞の対象となりうるものもありますし。

チーたん
意匠権を調べて、既に意匠権は切れているということがわかったから似たようなデザインの椅子を造っていたら、ある日突然著作権侵害で訴えられるって怖すぎるよ!
ふっくん
あ、言い忘れていましたが、TRIPP TRAPP事件では、椅子の一部に著作物性は認められましたが、TRIPP TRAPP側の請求は認められていません。

被告は裁判所が著作物と認めたTRIPP TRAPPの特徴部分を備えていなかったからです。

したがって、単に似ているだけでは著作権侵害が認定されることはないでしょう。

チーたん
え?あ、そうなの?
結局、応用美術のデザインは著作権法で保護されるの?されないの?
ふっくん
これはあくまでも私個人の見解ですが、著作権法で応用美術が保護されるのは、その制品と完全同一なデザインだけで、ちょっとでも変えたものには著作権法の保護は及ばない。類似の範囲も保護してほしいときは意匠権で。ということになっていくのではないでしょうか?

・・・わかりませんけど。

チーたん
ぼく的には実用品に著作物性を認めると裁判の渋滞を引き起こすので好ましくないと思うけどな。
ふっくん
そうですね。

ただ、諸外国では著作物として認めているところもあり、日本だけ保護を薄くするわけにもいかないという気持ちもあるのでしょう。

しかし、著作権の保護期間が70年になるとより争いが長期化し泥沼化していくと思います・・・。

チーたん
応用美術のデザインが著作権法で保護されることになると、工業的に量産された製品の写真を撮ったり動画撮影した場合、複製権の侵害になっちゃうよね。

 

ウェブサイト上に写真を載せるために写真を撮るということはよく行われるから困るな。

それに、著作財産権だけでなく、著作者人格権も発生するよね。

ということは、似ている製品を創ると翻案権の侵害になるの・・・?

ふっくん
う〜ん、どうなるのでしょうね・・・。
チーたん
こんな頼りないふっくん、初めて見たよ!(笑)
ふっくん
すみません。早く決定的な判決が出てほしいところです。

いずれにせよ、製品を創作した者は、意匠権だけを取るのではなく、特許権や商標権、不正競争防止法など様々な知的財産権によりその製品を守ってもらえるようにするべきです。

チーたん
ふっくん
そうです。それぞれ法により保護範囲に違いがありますからね。

また、同じように、他者の意匠権だけを気にするのではなく、他者の特許権や商標権、著作権の存在にも気を配るべきです。

チーたん
知財部や法務部の仕事が増えて大変なんだけど(^^;
あいぴー
まあ、がんばってや。

ところで、うちのマグカップのことなんやけど、模倣した会社を著作権侵害で訴えといてな

ふっくん
模倣といっても一部似ているように見えるだけですから著作権侵害は認定されないでしょうね・・・。
チーたん
そもそもこのマグカップは意匠権すらとっていないよ。
あいぴーみたいな人が訴訟を起こしてくるから、やっぱり実用品に著作権を認めると良くない気がする!(^^;