ブランドは育てることも大事ですが、せっかく大切に育てても、「使えなくなってしまう」危険性を秘めています。

自分の責任によって使えなくなることもあれば、善意の一般人の使用により使え無くなることもあります。

ブランドが有名になるということは、嬉しい半面、社会的影響も大きいので注意する点があります。

あいぴー
一年前に取ったドメイン名、来月が更新月やねん。気に入らなかったから使ってへんかったのやけど、今月に入ってからドメイン登録業者から毎日毎日「更新期限が迫っています」というメールが届いてウザいわ
チーたん
まあ、確かに一種の迷惑メールだけど、見方を変えれば親切じゃない(笑)
本当に必要なドメインだったら、更新のし忘れで登録が抹消なんてビジネス上大損失だからね
ふっくん
更新といえば、知的財産権も更新できる権利がありますよ
あいぴー
ホンマに?!特許権が更新されたら40年間も保護されるやん!超お得やな!
ふっくん
いえ、さすがに特許権は更新されません。そんなことしたら産業を大きく阻害します。
更新されるのは商標権だけですよ。
チーたん
あ、商標権はいつまで保護される?で、商標権は更新登録さえすれば半永久的に独占できる権利だって言ってたね
ふっくん
よく覚えていますね。

商標権の更新登録は、権利が切れる日の6ヶ月前からできます。ドメイン名業者ほどしつこくお知らせはしてくれませんが、特許庁から更新登録のお知らせが会社の住所へ届きます。
ですが、住所変更をしたあと特許庁へそのことを届け出ていないと特許庁からのお知らせが届かず、更新登録申請をし忘れて権利がなくなってしまうという恐れもあります。

あいぴー
商標権の期限管理は知財部の重要な仕事やな
ふっくん
パソコン本体だけに重要な情報を記録しておくと、パソコンが壊れてしまったときにデータが飛んでしまうので大変です。
重要な情報はクラウドにあげておくようにしましょう。

知財部がない会社は、特許事務所に頼んでおけば、期限管理も全てしてくれるので楽ですよ。

チーたん
商標管理について他に重要なことはない?

ふっくん
商標権を売ったり買ったりしたときは、忘れずに特許庁へ登録することですね。
ライセンスを受けるときなども登録してください。

チーたん
特許庁への手続き以外で重要なことはある?

ふっくん
商標を適切に使うということです。

商標は、指定商品・サービスについて実施していないと、不使用取消審判で取り消されてしまうことがあります(商標法第50条)。

また、適切に使用していない場合も同じように取り消される可能性があります(商標法52条の2、53条、53条の2)。

チーたん
自分の商標権なのに使わなかったり変な使い方をしたら取り消されちゃうの?
ふっくん
商標には公益的な面もありますからね。

自分の商標の適切な使用も大事ですし、他人の商標を不正目的で使用するのもいけませんよ。

それから、他人が自分の商標を使用するときには監視する必要があります。

チーたん
ライセンシーが変な使い方をしたり、低品質の製品を作らないように監視しなくちゃいけないんだね

ふっくん
そうです。
ただ、商標をライセンスしているときだけでなく、一般の人や他社が使う場合にも監視をする必要があります。

ふっくん
どういうことかというと、例えば、非類似の指定商品・サービスに対してなら、他人が同じブランドを使用することができますが、同じブランドを多数の人がいろいろな商品・サービスに使用した結果、本来の商品・サービスとの結びつきを弱めてしまうことがあります。
これを希釈化(ダイリューション)といいます。

たとえば、ソニー株式会社とは関係ない人が、貸金業に日本橋ソニーや神田ソニーといった商標を使うと、ブランドの希釈化が起きます。
ソニーはこの侵害者たちに対して迅速に差し止めや損害賠償を請求しました。そして、ソニーブランドの著名性ゆえに、訴えは認められました。

ふっくん
それから、一般の人が使うことについてですが、商標を商標として表示しないで使うと、「商標の普通名称化」が起こる可能性があります。
チーたん
何それ?

ふっくん
例えば、歌手が「青いクレパスで描く~」と歌ったとします。

すると、この「クレパス」という言葉は商標なのですが、この歌を聞いた一般消費者は、「クレパス」をクレヨンの普通名称だと思い込んでしまいます。

すると、商標法が保護する「自他商品識別機能」が失われることになってしまいます。


チーたん
ん?どういうこと?

ふっくん
商標を出願するときに指定商品「りんご」に対して「りんご」は出願できませんよね?

同じように、「クレパス」が普通の名称と認識されてしまうと、指定商品「クレパス」に対して商標「クレパス」で出願していることになってしまいます。

それでは商標権を登録しておく必要がなくなってしまいますよね。

むしろ、そんな普通の言葉は登録を取り消して誰にでも使わせるべきです。

ふっくん
したがって、せっかっく大切に育ててきたブランドも、普通名称化によって商標権としての力を失ってしまうことになるのです。
チーたん
う~、怖いな
ふっくん
独自性があまり強くないブランドは希釈化が起こりやすいので注意してください。

たとえば、うどんについて、”うどんすき”という商標がありましたが、誰もが使ってしまった結果、普通名称になってしまい、商標の重要な機能である識別機能が失われてしまいました。

ふっくん
それから、新製品も注意が必要です。

「エスカレータ」というものがなかったときに「エスカレータ」という言葉が現れると、一般の人はその言葉しか選択肢がないので、普通に「エスカレータ」という言葉を使うことになります。

チーたん
エスカレータって商標だったんだ。普通の用語だと思っていたよ。
ふっくん
ウォークマンだって商標を取っていますが、普通名称化してしまったために外国では商標登録を取り消された例がありますしね。
あいぴー
うちが考えた商標がそこまで有名になるなんて思えへんけど
ふっくん
でも、有名になるかもしれませんよ。

商標は大切にすべきです

チーたん
一般人が普通名称化させてしまうのをやめさせる方法はある?
ふっくん
RマークTMを商標の横に表示するというのが一つの手です。

今回はブランドの管理の重要性について話しましたが、大体のところはわかっていただけたでしょうか?

あいぴー
わかったで! まとめると、「クレヨンしんちゃん」は良いけど「クレパスしんちゃん」は商標権の侵害ってことやな
チーたん
全然分かってないからっ(;゚Д゚)!