共同で研究していたら発明を抜け駆け的に特許出願されてしまった、または抜け駆けとまではいかなくても、双方の認識の食い違いから特許を受ける権利の帰属についてお互いの意見が違ったということはよくあることです。

あいぴー
大手メーカーから依頼を受けてうちの会社でその製品の使用に合わせて機械の設計をしたんやけど、いつの間にか、その機械について、大手メーカーが勝手に特許出願して特許を受けていたんや!特許公報を見てようやく気づいたわ!
どうすればエエんやろ?
ふっくん、助けてーな
ふっくん
その大手メーカーは発明にはかかわっていないんですか?
あいぴー
「こんなのを作ってほしい」というような依頼をしてきただけや。
ちょっとは設計にかかわったと思うけど、主に機械を作ったのはチーたんやで。
開発資金はちょっと出してもらったけどな・・・
ふっくん
では、あいぴーの会社の従業員であるチーたんがした発明を冒認出願されてしまった、または共同でした発明を勝手に出願されてしまったということですね。
あいぴー
そうや。相手はうちの会社の大事なお客様だから下手なことはいえへんし、だからといって放置できるような事態やないし・・・
ふっくん
最近は企業同士や大学との共同研究が活発化しているため、このようなことが多いですね。

既に大手メーカーに特許権を取得されているので、あいぴーの会社に特許権を移転するには、大手メーカーと交渉をして、真の権利者であるあいぴーの会社へ権利の移転を請求することができます(74条1項)。
それにより、特許権は初めからあいぴーの会社に帰属していたものとみなされます(74条2項)。

あいぴー
法律的にはそうかもしれへんけど、そんなに上手くいくやろか・・・
ふっくん
大手メーカーとの交渉が難航し、権利譲渡の契約に至らなかったときには、無効審判を請求することができます。
冒認出願又は共同出願違反は、拒絶理由に該当しますし(特許法第49条第号、7号)、特許無効理由にも該当しますから(特許法第123条第1項2号、第号)。
チーたん
でも、それだと権利が遡及的に消滅(特許法125条)するだけでしょう?
ふっくん
そうなんです・・・。
ですから、こんな事態に陥らないように、あらかじめ契約条項などをしっかり決めておくべきでした。
事前に共同開発契約などを結んでいればこのような抜け駆け的な出願はされなかったでしょう。
特に、私のような者が間に立てば、「知財への意識の高い会社」と相手に思わせることができるので、相手もおいそれとは下手なことはしてきません。
チーたん
そんなこと今更言われても・・・(T T)
ふっくん
私がもっと早い時期に御社とかかわりを持っていればよかったのですが・・・。
まぁ、良い勉強だったと思って、これを機に特許を受ける権利について勉強してください。
あいぴー
無知のうちが悪いん?!