旅行先で有名な建築物やモニュメントの写真を撮るということは通常当たり前に行われていることです。しかし、斬新な建物は著作物にはならないのでしょうか。そして、写真を利用しても複製権侵害にはならないのでしょうか。実はかなり複雑な建築物の著作権について見ていきましょう。
題名は「サグラダ・ファミリアのサクラたち」
写真を売るなんてできるのかな
みんなSNSとかブログに建物が写った写真をアップしとるやろ
この辺りの著作権って、どうなっているんだろ。ふっくん、教えて!
条文を見てみましょう。
著作権法10条1項に著作物の例示として「建築の著作物」が規定されています。
しかし、タワーだろうがダムだろうが、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法1条)と評価されれば著作物といえます。
普通のビルや橋や住宅は著作物ではありません。
「この法律で意匠とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」
つまり、物品ではない不動産は意匠ではありません。
でも、仕方ないのか。建築の著作物は風景の一部になっているもんね。それを著作権があるからと第三者の利用を制限してしまうと、過度に第三者の行動や表現の自由を抑制することになるもの。
著作物に該当するとしたら、スカイツリーの写真や動画を撮ったり、100分の1のミニチュアを販売すると著作権の侵害になっちゃうね!
著作権法46条の規定により、保護期間内にある建築の著作物についても、建物や屋外に恒常的に存在する建造物については,原則として自由に撮影したり放送したりすることが出来ます。
公開の美術の著作物等の利用
第四十六条 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
でも、そんなこと普通の人には無理ですから、通常は心配する必要はありません。
また、建築の著作物の著作権侵害になる場合には、建築の設計図に従って建築物を建てることも該当しますが、これも普通の人には関係ありません。
スカイツリーが写った写真を販売しても大丈夫です。
ただし、商標権や肖像権の侵害には注意してくださいね。
それから、あいぴーが撮ったサグラダ・ファミリアの写真についてですが、見物人たちには肖像権がありますから人物の顔にモザイクを入れる等なんらかの配慮をしなくてはいけません。
たとえば、岡本太郎の太陽の塔の写真を撮ったら著作権侵害になる?
著作権法46条4号にあるように、「美術の著作物」の複製物の販売を目的として複製等することは許されません。
ですから、太陽の塔のカレンダーやミニチュアを作って販売してはいけませんよ。
写真を撮ってブログやSNSにアップすることは構いませんが。
外に飾られているので46条の規定の適用があるようにも思えます。
しかし、クリスマス前後という期間限定ですから、「恒常的に設置」されているとはいえないですよね。
すると著作権法46条1項の「恒常的に設置されている」に該当しないため、許諾なしで写真を撮ったりその写真をブログにアップしたり販売することはできなくなります。
なお、エッフェル塔も夜だけライトアップされるので、エッフェル塔を夜撮影すると著作権の侵害となってしまいます。
ところで、ゴミ屋敷とか一般住宅を撮るのはどうなの?
よくテレビで報道されているけど
特に、勝手口などの写真は、公道から撮れないことが多いので、必然的に住居に侵入することになってしまいます。著作権侵害にはならなくても他の法律にひっかかるので大問題ですよ。
仮にクレームがついたとしても、「著作権侵害にはならない」と根拠を示して理解してもらってください。
ただ、他人の敷地に侵入して写真を撮ったりしないように気をつけてください。また、夜だけライトアップされる等恒常的に飾られるわけではない美術の著作物(夜間のエッフェル塔のイルミネーションなど)の写真を撮った場合には絶対にブログやSNS等にアップしたりしないようにしてください。
それだけを気をつければ大丈夫です。どんどん建築物の写真を撮って楽しんでくださいね