条約と聞いただけでうんざりしてしまう人もいるかと思いますが、国内法と比べながら学んでみると意外とすんなりと理解できます。
条文と照らし合わせながら学習してみましょう。
産業財産権ともいいますね。
知財とは重なる部分もありますが、著作権については保護していません。
著作権についてはベルヌ条約や万国著作権条約のような他の条約で規定されていますよ。
パリ条約はあくまでも「工業所有権」の保護を目的としています。
なお、パリというくらいですからフランス語が正文です。
保護の対象は、特許、実用新案、意匠、商標、サービスマーク、商号、原産地表示または原産地名称及び不正競争防止に関するものです(パリ条約第1条(2))。
パリ条約第2条 同盟国の国民に対する内国民待遇等
(1) 各同盟国の国民は,工業所有権の保護に関し,この条約で特に定める権利を害されることなく,他のすべての同盟国において,当該他の同盟国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受する。すなわち,同盟国の国民は,内国民に課される条件及び手続に従う限り,内国民と同一の保護を受け,かつ,自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる。
さて、内国民待遇の原則を実効たらしめるため、パリ条約では優先権制度(パリ条約4条)と各国工業所有権独立の原則(パリ条約第4条の2、第6条(2))を定めています。
パリ条約の優先権制度とは、いずれかの同盟国において正規の特許、実用新案、意匠、商標の出願をした者は、特許及び実用新案については12か月、意匠及び商標については6か月の期間中優先権を有するというものです(パリ条約4条A(1)、4条C(1))。
この優先権期間中に他の同盟国に対して同一内容の出願を行った場合には、その他の国において新規性や進歩性の判断や、先使用権の発生などについて、第一国出願時に出願したものとして取り扱われます(パリ4条B)。
その国での特許出願として認められるためには、その国の言語で出願することが必要、つまり翻訳文の提出が必要とされますが、パリ優先権を主張しておけば、翻訳文をゆっくりと用意することができます。
外国に特許出願する場合にはPCT制度を利用することが多いと思いますが、意匠や商標を出願する場合にもパリ優先は重要になってきます。
パリ優先との違いや要件・効果を復習しておかなきゃ
特許独立の原則についてはパリ条約第4条の2に、商標独立の原則についてはパリ条約6条(2)、(3)に規定されていますが、実用新案や意匠については独立の原則は規定されていません。
特許が独立しているとは、特許権の発生や無効、消滅について各国が他の国に影響されることはないということです。たとえば、ある国において特許が無効にされてもそれにより他国の特許まで自動的に無効にされるものではありません。
この内国民待遇の原則・優先権・工業所有権独立の原則3つを合わせてパリ条約の3大原則といいます。
条約の勉強は大変ですが、最低限私の話したことを覚えておけば弁理士試験にも通用しますよ。