補正や訂正をするときに出てくる「誤記の訂正」。普段補正や訂正をするときにそれほど意識することはないと思いますが、一度はきちんと学んでおきましょう。
ですから、形式的には新規事項の追加に見えても脱字程度なら大丈夫ですよ
アセテートと書くべきところをアセタールって書いちゃったんだけどそれも直しておこうっと
「誤記の訂正」はあくまでも「誤記」を訂正することですから「アセエート」と間違ってしまった記載を「アセテート」に直すことはできるでしょうが、「アセタール」という別の化合物名を記載してしまうと誤記の訂正と認めてもらうことは困難でしょうね。
また、数値限定発明においては、数値はそれ自体重要な発明特定事項であることから、数値そのものを誤記として補正・訂正することは難しいといえます。
特許請求の範囲の実質的な拡張・変更になることも多いでしょうし。
特許庁の審査基準では、数値限定の補正については「数値限定が明示的に記載されている場合には、その数値限定を請求項に導入することができる」とされているので、数値の補正時には、補正後の数値が原明細書に明示的に記載されていることが必要です。
まとめてみましょうか。
補正や訂正時に「誤記の訂正」として認められるためには、
①特許明細書、特許請求の範囲または図面中の記載に誤記が存在すること
と
②訂正後の記載が出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(又は外国語書面)に記載した事項の範囲内のものであること
が必要です。
つまり、訂正後の記載が
通常の日本語出願に係る特許にあっては出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的に記載された事項、あるいはそれらの記載から自明な事項であること、
外国語書面出願に係る特許にあっては仮想翻訳文(外国語書面の語句を一対一に文脈に沿って適正な日本語に翻訳した翻訳文)に明示的に記載された事項、あるいはそれらの記載から自明な事項であること、
が必要です。
請求項中の記載が、それ自体で、または特許明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から正しい記載が自明な事項として定まる場合において、その誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではありません。
これに対し、出願当初の明細書または外国語書面を参酌して初めて正しい記載が定まるときは、あらためて訂正前と訂正後の特許請求の範囲を対比し、訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものか否かを審理することを要します。
補正や訂正後のものが(出願当初の)明細書等に記載した事項の範囲内か否かということや、特許請求の範囲の実質的な拡張・変更になっていないかということで争われることが大半です。
誤記を補正・訂正した結果、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲を逸脱した場合や、特許請求の範囲の拡張・変更になってしまうとそれらを理由として補正・訂正が認められないこととなりますが、適法な誤記の訂正を行った場合、形式的には請求の範囲の拡張・変更等になってしまっても、実質的にはそうではないと判断されます。
ですから、補正や訂正をするときに誤記の訂正か否かということを争うこと自体よりも誤記の訂正をしたことにより新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更にならないように気を付ければいいでしょう
やっぱり補正や訂正って厳しいな~