商品の原産地や品質をそのまま表現しただけの商品名を見かけることがあります。そのような商標は、商品の特徴や品質を購買者にすぐ理解してもらえるため販売者にとって好都合だからです。
しかし、そのような商品名をつけることはお勧めできません。
なぜなら、商標登録を受けることができないからです。
チーたん
発明アイデアが思いつかないからちょっと散歩に行ってくるよ
あいぴー
なら、ついでだから「おいしい牛乳」買ってきてや
チーたん
名前は?
あいぴー
「おいしい牛乳」や
チーたん
だから、「おいしい牛乳」の名前は?
あいぴー
そやからさっきから「おいしい牛乳」って言うとるやろ!
チーたん
どこのメーカーの牛乳があいぴーにとって美味しいかなんてぼくにわかるわけないだろ!
あいぴー
だから、「おいしい牛乳」って名前の牛乳を買うてきてくれっつーとんねん!
チーたん
・・・え?それ、商品名なの?
あいぴー
そや
チーたん
メーカーは、なんでそんな名前にしたんだろ?
というかこんな名前で商標登録受けられるのかな?
ふっくん、教えて!
というかこんな名前で商標登録受けられるのかな?
ふっくん、教えて!
ふっくん
「おいしい牛乳」で商標登録を受けることはできませんよ
チーたん
だよね!・・・でも、今調べてみたら、森永と明治がそれぞれ「おいしい牛乳」について商標登録を受けているのだけど・・・
ふっくん
よく見てください。どちらの会社も「おいしい牛乳」で商標登録を受けることはできていませんよね。
「森永のおいしい牛乳」というように、会社名+「おいしい牛乳」でようやく商標登録を受けていますよね
「森永のおいしい牛乳」というように、会社名+「おいしい牛乳」でようやく商標登録を受けていますよね
チーたん
あ、本当だ!
ふっくん
「おいしい牛乳」だけでは自他商品等の識別力を有しません。
そのような商標の登録を認めたら、健全な競争秩序を阻害し、一般消費者にも不利益を与えることになります。
ですから商標法3条1項3号の規定により、商品の品質等を現しただけの商標の登録は認められないこととなっています。
基本的で重要な条文ですから、よく読んでみてください。
そのような商標の登録を認めたら、健全な競争秩序を阻害し、一般消費者にも不利益を与えることになります。
ですから商標法3条1項3号の規定により、商品の品質等を現しただけの商標の登録は認められないこととなっています。
基本的で重要な条文ですから、よく読んでみてください。
商標法3条1項3号
そ
の商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
ふっくん
商標法3条1項3号は条文を読むだけでなく、特許庁の審査基準を見て、実際の例を通じて覚えると簡単ですよ。
たとえば、「その商品の産地、販売地」とありますが、これは「銀座」のような現在の地名だけでなく、過去に存在した「尾張」や「伊賀」のような地名もいけません。また、川の名前や他国の国家名などもいけませんよ。
あいぴー
中国で「和歌山」とか「青森」とか商標登録出願されているようやけど
ふっくん
・・・ま、まぁその話はここでは置いておきましょう。
チーたん
指定商品「牛乳」について、「おいしーい」はどうかな?
ふっくん
たとえ長音符号を用いても、その商品の「おいしい」という特徴を表すに過ぎないので登録は無理です
チーたん
じゃあ、食べ物について商標「ほっぺ落ち」はどうかな?
ふっくん
ほっぺが落ちるほど美味しいという意味にとれますが、それなら商標登録可能です。
商標が、商品又は役務の特徴等を間接的に表示するに過ぎませんからね
商標が、商品又は役務の特徴等を間接的に表示するに過ぎませんからね
チーたん
なるほど。
「おいしい」という形容詞だとそのものズバリ過ぎてダメだけど、頭を使って表現を変えればいいんだね。
指定商品「椅子」について「すわりん」とか・・・
「おいしい」という形容詞だとそのものズバリ過ぎてダメだけど、頭を使って表現を変えればいいんだね。
指定商品「椅子」について「すわりん」とか・・・
ふっくん
そうそう。さすがチーたんは呑み込みが早いですね
あいぴー
商品「録音済みのコンパクトディスク」について商標「ケツメイシ」で取ってエエ?
うち、ケツメイシめっちゃ好きやねん
うち、ケツメイシめっちゃ好きやねん
ふっくん
・・・ファンならそんなふざけたことしないでください。
まあ、そんな商標は登録されませんが
まあ、そんな商標は登録されませんが
チーたん
レディガガ本人が出願しても商品「録音済みのコンパクトディスク」について商標「レディガガ」は登録されなかったというニュースを見たことあるよ
あいぴー
じゃあ、指定役務「イタリア料理の提供」で「ナポリ」はどうやろ?うちの会社の近くにあるお店の名前やねんけど
ふっくん
無理ですってば
あいぴー
指定商品「お茶」について商標「美味しい宇治新茶」はどうやろ?
ふっくん
商品の品質+宇治という地名+お茶の種類でもダメですよ
チーたん
色の商標もとれるようになったよね。
指定商品「お茶」について「青」はどうかな?ありえない色だから登録されるんじゃない?
指定商品「お茶」について「青」はどうかな?ありえない色だから登録されるんじゃない?
ふっくん
絶対に存在しないとは言い切れませんし無理でしょう。緑のことを青と言ったりしますし
チーたん
あ、でもさ。井村屋の「あずきバー」については商標登録受けているよね。なんで商標登録されたの?原材料+形状の商標に過ぎないのに・・・
あいぴー
「堂島ロール」も商標登録受けとるで!
ふっくん
よいところに気が付きましたね!
チーたんとあいぴーの言うとおり、そのような商標は本来は商標法3条1項3号の規定に該当しているため商標登録を受けることはできません(商標法15条1号)。
しかし、そのような商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については例外的に商標登録を受けることができるのです(商標法3条2項)
チーたんとあいぴーの言うとおり、そのような商標は本来は商標法3条1項3号の規定に該当しているため商標登録を受けることはできません(商標法15条1号)。
しかし、そのような商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については例外的に商標登録を受けることができるのです(商標法3条2項)
商標法3条2項
前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。
あいぴー
なんや、そんなら広告でもして商標を有名にすればエエっちゅーことやな
ふっくん
その「有名」の度合いは相当のレベルでないといけませんよ。
日本全国にその名前が轟くほど知られていなければいけません。
「ご近所で人気」レベルではとても無理ですよ。
日本全国にその名前が轟くほど知られていなければいけません。
「ご近所で人気」レベルではとても無理ですよ。
チーたん
記述的商標を一社が独占してしまうと消費者にもデメリットがあるけど、超有名になればその商標は一社に独占させてもいい、というか独占させてしまったほうが商標法の法目的に沿うよね
ふっくん
その通りです。
チーたんはバランス感覚が優れていますね
チーたんはバランス感覚が優れていますね
あいぴー
めっちゃ天才的なこと思いついたで!
「あずきバー」という商品を販売するんや。井村屋のあずきバーと勘違いされて売れるで!
アイスであずきバーを販売しなければ商標権侵害にはならんやろ
「あずきバー」という商品を販売するんや。井村屋のあずきバーと勘違いされて売れるで!
アイスであずきバーを販売しなければ商標権侵害にはならんやろ
ふっくん
あ、それは無理ですよ。
井村屋の「あずきバー」については「アイスキャンディ」のみに使用されていましたが、指定商品「あずきを加味してなる菓子」について商標登録を受けることができましたから。
専用権の範囲も禁止権の範囲も「アイスキャンディ」だけのときより広いですよ。
井村屋の「あずきバー」については「アイスキャンディ」のみに使用されていましたが、指定商品「あずきを加味してなる菓子」について商標登録を受けることができましたから。
専用権の範囲も禁止権の範囲も「アイスキャンディ」だけのときより広いですよ。
チーたん
指定商品の同一性について緩やかに解釈されたんだね。
そのほうがあいぴーみたいに変なこと考える人から消費者を保護することにもつながるし妥当だね。
そのほうがあいぴーみたいに変なこと考える人から消費者を保護することにもつながるし妥当だね。
あいぴー
指定商品「携帯電話」について「携帯」を使い続けて超有名になったら「携帯」という言葉を独占できてエエな♪
ふっくん
無理ですよ。そのような商標は商標法3条1項1号に該当して拒絶されます(商標法15条)。
商標法3条1項1号違反の場合は商標法3条2項の適用はありませんから。
商標法3条1項1号違反の場合は商標法3条2項の適用はありませんから。
チーたん
商標法はうまくできているね♪
ふっくん
商標法3条1項3号を学ぶときには商標法4条1項16号とセットで学習するといいですよ