意匠法には一意匠一出願の原則(7条)がありますが、その例外として組物の意匠制度というものが存在します。
あいぴーがこんなアクセサリーを作れるなんて!意外と器用なんだね。
第8条 同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
一意匠一出願の原則(7条)に従うと、構成物品の組み合わせに存在する美観を保護できないこととなり、システムデザインの模倣に対して構成物品の個別的な意匠権では保護が不十分であるという問題がありました。
そこで、システムデザインを一意匠として保護する組物の意匠制度を構築し、組物全体として権利行使を可能としました。
なお、従来の組物制度は、省令に定める物品が13品目しかありませんでした。また、2種以上の物品に係るものでなければいけないという登録要件がありました。
さらに、個々の構成物品に登録要件を課す一方、組物全体としてしか権利行使できないという制約がありました。
施行規則8条別表2
一組の下着セット
一組のカフスボタン及びネクタイ止めセット
一組の装身具セット
一組の喫煙用具セット
一組の美容用具セット
一組のひなセット
一組の洗濯機器セット
一組の便所清掃用具セット
一組の洗面用具セット
一組の電気歯ブラシセット
一組のキャンプ用鍋セット
一組の紅茶セット
一組のコーヒーセット
一組の酒器セット
一組の食卓用皿及びコップセット
一組のせん茶セット
一組のディナーセット
一組の薬味入れセット
一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンセット
一組のいすセット
一組の応接家具セット
一組の屋外用いす及びテーブルセット
一組の玄関収納セット
一組の収納棚セット
一組の机セット
一組のテーブルセット
一組の天井灯セット
一組のエアーコンディショナーセット
一組の洗面化粧台セット
一組の台所セット
一組の便器用付属品セット
一組の紅茶セットおもちゃ
一組のコーヒーセットおもちゃ
一組のディナーセットおもちゃ
一組の薬味入れセットおもちゃ
一組のナイフ、フォーク及びスプーンセットおもちゃ
一組のゴルフクラブセット
一組のドラムセット
一組の事務用具セット
一組の筆記具セット
一組の自動車用エアスポイラーセット
一組の自動車用シートカバーセット
一組の自動車用フロアマットセット
一組の自動車用ペダルセット
一組の自動二輪車用カウルセット
一組の自動二輪車用フェンダーセット
一組の車載用経路誘導機セット
一組のオーディオ機器セット
一組の車載用オーディオ機器セット
一組のスピーカーボックスセット
一組のテレビ受像機セット
一組の光ディスク再生機セット
一組の電子計算機セット
一組の自動販売機セット
一組の医療用エックス線撮影機セット
一組の門柱、門扉及びフェンスセット
「同時に使用される」とは、その組物を構成する物品相互間に一つの使用が他の使用を観念的に予想せしめる関係があれば足り、必ずしも同時に使用される必要はありません。
組物の構成物品は、組物の構成物品表(審査基準)において組物ごとに定められたものとされています。
原則として、「構成物品」の欄内に併記されている各構成物品を少なくとも各一品ずつ含むものでなければいけません。それ以外の物品を含むものは、その加えられた物品が同時に使用されるものであり、かつ各構成物品に付随する範囲内の物品でなければいけません。この要件を満たさない場合、組物とは認められず、拒絶理由となります(17条)。
統一がなければ一体的創作性を認められませんからね。
「統一がある」とは、各構成物品の形態相互間に密接な関連性があることを要します。
たとえば、
①純粋意匠上の統一(模様上の統一、形状上の統一、色彩上の統一)
②構成物品の形状、模様もしくは色彩又はこれらの結合が同じような造形処理で表されている場合や構成物品が全体として一つのまとまった形状又は模様で表されている場合
③観念上の統一
があげられます。
また、「意匠の説明」「意匠に係る物品の説明」の欄に必要に応じて、各構成物品の説明を記載します。
図面は、各構成物品の図面だけで組物の意匠を十分に表現できる場合には、構成物品ごとの6面図を作成してください。たとえば、それぞれに同一の模様が表され統一感がある場合には構成物品のそれぞれの図面で足ります。
統一を示すために組み合わされた状態の図面が必要な組物については、構成物品ごとにそれぞれ作成するとともに、全構成物品を組み合わされた状態において意匠を十分に表現することができる図面についても作成する必要があります。
たとえば、結合させることにより、新たな形状や模様、観念が生じる場合です。
構成物品が適当でない場合や構成物品間に純粋意匠上又は観念上の統一性が認められない場合、それから部分意匠を含む組物の意匠の意匠登録出願も8条違反となります。
権利行使をするときにも組物全体で権利行使します。
一方、5条3号については組物全体でのみ判断されます。
意匠登録を受けることができない意匠
第五条 次に掲げる意匠については、第三条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
一 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
二 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
三 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
8条違反は無効理由となっていないので(48条1項各号)、無効とすることはできません。また、その場合、複数の意匠が現わされていることになるので7条違反となりますが、7条違反も形式的瑕疵であり無効理由にはなっていません(48条)。
したがって、過誤登録された組物の意匠は無効とすることはできないと解されます。
この場合は8条違反あるいは3条違反として拒絶されると解されます。2条1項柱書はきょぜる理由(17条各号)に挙げられていないため、原則拒絶理由の対象となりませんが、8条を介して拒絶されると解されます。
第2条
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
なお、組物の意匠として認められたものを分割することはできません。もし分割出願した場合には、分割の時に出願されたものと扱われます。
それから、願書に添付した図面等についてした補正については注意してください。
たとえば、組物の構成物品として不適当であると認められるものを削除する補正は要旨の変更とはなりませんが、組物の構成物品として適当であると認められるものを削除したり追加する補正は要旨の変更となります。
組物全体で一意匠だから無理なのかな?
なるほど。じゃあ、構成物品の一部だけを製造・販売している無権利者に権利行使できるかな?
じゃあ、構成物品の全部をバラバラに販売していたら?
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