意匠法には、部分意匠制度、関連意匠制度など特有の制度が存在します。今回学ぶ動的意匠も意匠法特有の制度です。
チーたん
ねぇ、あいぴー。これ見て。ダンゴムシのおもちゃを作ってみたんだ。
あいぴー
ごく普通のおもちゃに見え・・・ぉわっ!触ると丸まるんか!
チーたん
面白いでしょ
あいぴー
エエな、これ。子供が喜びそうや。真似されんように意匠登録しといてや。
チーたん
普通の状態と丸まった状態の二つの意匠登録出願をしなくちゃいけないのかな?
ふっくん
動的意匠の出願をすれば、一つの意匠登録出願で大丈夫ですよ。
チーたん
動的意匠?何それ?
ふっくん
いわゆる動的意匠とは、意匠にかかる物品又はその部分の形状、模様等がその物品の有する機能に基づいて変化する意匠をいいます。
法上の意匠は、物品又はその部分の形状等であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいますよね(2条1項)。この物品等の形状等は、必ずしも静止したものに限られず、動く形状等も含まれると解されます。
しかし、変化した各形状等ごとに別々の意匠を構成するとすれば、異なる形状等ごとに登録を受けなければならず(7条)、手続きが煩雑となります。
そこで、法は、いわゆる動的意匠についてもその動き全体を一意匠とみなし、一出願で完全な権利取得を認めることとしたのです(6条4項)。
チーたん
原則は一意匠は一出願しなくてはいけないけれど(7条)、例外として認められたんだね。ところで、さっきからふっくんはいちいち「いわゆる動的意匠」と言っているけど、どうして?
ふっくん
関連意匠(意匠法10条)や組物の意匠(8条)のように条文上使われている言葉ではないからです。6条4項を見てください。「動的意匠」という言葉は出てきませんよね
意匠法6条4項
意匠に係る物品の形状、模様又は色彩がその物品の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。
チーたん
本当だ。
あいぴー
動的意匠として登録を受けられる例は他にもあるん?
ふっくん
たとえば、巻き込み笛や飛び出し玩具、それからふたを開くとおばけが飛び出すびっくり箱、コマ(回転すると模様現れるため)のようなおもちゃをはじめとして、蓋が開くグランドピアノやオルガン、扉が開閉する冷蔵庫、傘(展開するため)などがあります。
チーたん
出願時にはどんな手続きをとればいいの?
ふっくん
願書の意匠の説明の欄に動的意匠である旨と物品の機能の説明を記載します(6条4項、様式2備考40)。
また、変化の前後がわかるような図面を記載します(様式6、備考20)。
また、変化の前後がわかるような図面を記載します(様式6、備考20)。
なお、図面の代わりに写真を提出することもできます(様式7,8)
チーたん
審査はどのように行われるの?
ふっくん
願書の意匠の説明の欄に動的意匠である旨と物品の機能の説明を記載されておらず、図面に変化の前後がわかる状態が記載されていない場合は意匠法3条1項柱書違反として拒絶されます(17条)。これは無効理由にもなっています(48条)。
あいぴー
変化の前後がわかる図面を追加する補正をすればエエやん
ふっくん
それは「出願当初に具体的でないものを具体的にする補正」に該当するので要旨の変更として却下されます(17条の2第1項)。
あいぴー
なんやそうなんか・・・
ふっくん
ただし、他の図面と矛盾せず、かつ、変化する状態が当業者から見て特別なものでない限り、要旨変更にはなりません。
チーたん
物品によって意匠の要部が変わってくるし、難しいね。
ところで、願書の意匠の説明の欄に動的意匠である旨と物品の機能の説明は記載されていないけれど、図面に変化の前後がわかる状態が記載されてる場合はどう取り扱われるの?
ところで、願書の意匠の説明の欄に動的意匠である旨と物品の機能の説明は記載されていないけれど、図面に変化の前後がわかる状態が記載されてる場合はどう取り扱われるの?
ふっくん
複数の意匠が記載されていることになりますから、原則として一意匠一出願(7条)違反として拒絶理由になります(17条)。
ただし、形式的な瑕疵に過ぎないので、無効理由にはなりません。
ただし、形式的な瑕疵に過ぎないので、無効理由にはなりません。
チーたん
願書に動的意匠の説明を追加する補正をしたらどうかな?これもダメかな?
ふっくん
同じように「出願当初に具体的でないものを具体的にする補正」に該当するので要旨の変更として却下されます(17条の2第1項)。
ただし、変化の前後の図面があれば必ずしも意匠の説明は必要でない場合もあるでしょう。そのような場合には、動的意匠の説明を補充しても要旨変更ではないでしょう。
ただし、変化の前後の図面があれば必ずしも意匠の説明は必要でない場合もあるでしょう。そのような場合には、動的意匠の説明を補充しても要旨変更ではないでしょう。
チーたん
個別具体的に判断されるんだね
あいぴー
もし意匠登録出願が拒絶されたらどうすればエエの?
ふっくん
分割(10条の2)や補正をして一の意匠に限定することになります。
チーたん
動的意匠の類否判断はどのようにされるの?
ふっくん
変化の前・中・後の状態を総合して全体観察します。
動的意匠と静的意匠(普通の意匠)の類否判断は、基本的な姿態が同一又は類似であれば、動的意匠の動作が突飛でない限り両者は類似と判断されやすくなります。
動的意匠同士の類否判断は、基本的な姿態が同一又は類似であれば、多少動作が違っていても、その動作が突飛でない限り両者は類似と判断されやすくなります。
あいぴー
先願に係る静止意匠があったとして、その意匠と同一又は類似の意匠をその動作の途中に含む動的意匠は登録されるん?
ふっくん
登録されますよ。ただし、先願意匠を実施しなければ後願意匠を実施しえない「利用関係」にあると考えられ、その実施は制限されます(26条)。
チーたん
なるほどね。
ふっくん
要件を具備したら意匠権(23条)が発生します。
変化の前・中・あとの一連の形態を有する意匠の全体を一つの意匠として意匠権が付与されますよ。
変化の前・中・あとの一連の形態を有する意匠の全体を一つの意匠として意匠権が付与されますよ。
チーたん
このダンゴムシとお友達のだん君、ごむしーちゃんについても意匠登録出願しようっと
ふっくん
それはバリエーションの意匠として関連意匠で保護を図ってくださいね。
あいぴー
だん君とごむしーちゃんというネーミングについては商標登録出願やな(笑)
ふっくん
AIPブレンドですね(^^)
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