著作権法で守られる権利には、実に様々なものがあります。
今回は、著作権法のなかでもわかりにくい著作隣接権のなかの「実演家の権利」について考えてみましょう。

チーたん
トリプルアクセル、決まった~!
羽生結弦選手、さすがだね!
あいぴー
チーたんはフィギュアスケート好きやなぁ。アイスショーのチケットやろか?
荒川静香、高橋大輔、他にも歴代のスケーターたちの演技を間近で見ることができるで
チーたん
ほんと!?行く行く♪
あいぴー
代わりに動画撮ってきてな。うちのyoutubeチャンネルにアップするから
チーたん
え?そんなことしていいの?
あいぴー
フィギュアスケートは「実演に当たらないから著作物として保護されない」ってふっくんが言っとったで
チーたん
ええっ!?本当なの?ふっくん!!
ふっくん
う~ん、あいぴーの言い方はちょっと語弊がありますね。
フィギュアスケートが実演に当たらないのではありませんよ。アイスショーでの演技は実演に該当しますから、スケーターたちの演技は著作権法で保護されます。
あいぴー
なんやねん、それ!
前に「実演には当たらない」言うとったやないかい!

実演
著作権法2条1項3号   

著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

実演家
著作権法2条1項4号  

俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

ふっくん
フィギュアスケート自体ではなくて、フィギュアの世界大会やオリンピックでのフィギュアスケートが実演に当たらない可能性があるといっただけですよ
あいぴー
違いなんてないやろ
ふっくん
それがあるんですよ・・・。
たとえばフィギュアの世界大会などでは、「競技として」行われており、「芸能的性質を有さない」と解されています。したがって、著作権法の言う「実演」とは認められないのです。
チーたん
競技だから実演じゃない?わけわかんない
ふっくん
ちょっとおかしいですよね(^^;
アイスショーだけでなく、競技としてのオリンピックや世界大会の演技も十分に芸術性があると思いますが・・・。
チーたん
たとえ羽生結弦選手でも、スポーツの競技に参加した場合には実演と認められないのか・・・
ふっくん
いえ、それがですね、フィギュアスケート等の振り付けが「舞踏の著作物」に該当するなら、その振り付けに従って踊ることは「実演」に当たることになります。
また、たとえ「舞踏の著作物」に当たらなくても、「芸能的な性質」を有するのなら「実演」に含まれることになります。
あいぴー
結局どっちやねん!
ふっくん
以前は、私が先ほど述べたように競技としてのフィギュアスケートは実演ではないとする説が有力だったのですが、最近では、フィギュアスケートの振り付けは舞踊の著作物に含まれると解する余地があるとする見解が有力です。
あいぴー
ということは、アイスショーにしろ、オリンピックでの競技にしろ、どちらにも羽生結弦選手の著作権があるんやな?
チーたん
著作権じゃないよ。実演家の権利だよ。
あいぴー
ようわからんわ。
ふっくん
著作権は、振り付けを考えた人やBGMとして使われている曲を作った人が有する権利です。
羽生結弦選手は自分で曲を作ったり振り付けを考えているわけではないですよね?
スケートを舞う羽生結弦選手は著作権者ではなく、「実演家」なのです。
実演家には「実演家人格権(著作権法90条の2、同90条の3)及び実演家財産権(著作権法91条~)」が認められます。
チーたん
著作権者の権利と違って、実演家には公表権がないんだね。
ふっくん
実演は公表を前提として行われますからね
チーたん
フィギュアスケートの選手以外で実演家にはどんな人たちがいるの?
ふっくん
歌手や俳優にダンサー、漫才師や落語家などがあげられます。
チーたん
そうか。落語なんて昔からあるネタを演じているだけだもんね。
ふっくん
そうです。
また、手品や曲芸のような著作物でないものを演じている場合でも、芸能的な性質を有していれば実演家としての保護が与えられます。

さらに、舞台の演出家やオーケストラの指揮者も、演じているわけではありませんが、実演を行っていることと同一視できるため、実演家と言えます。

あいぴー
小難しいことに興味はないわ。それよりも、アイスショーで撮った映像をうちのあいぴーちゃんねるにアップすることはいいのか悪いのかだけ教えてくれん?
チーたん
だからぁ、フィギュアスケートの演技は作曲家や振付師の著作権も実演家の権利も関わってくるからそんなこと許されないんだよ