特許(発明)、商標に続き、意匠にも国際出願制度が導入されました。シンプルで使いやすく金銭的にもお得な制度です。
ハーグ協定には3つの改正協定があり、このうち我が国が加入したのはジュネーブ改正協定です。
ジュネーブ改正協定は、これまでの改正協定を修正・補完するものとして、審査主義国等の更なる加入を促し、より多くの国が利用できる意匠の国際登録制度を目指して、1999年7月にジュネーブで採択され、2003年12月に発効しました。
わかりやすく例えると、基礎出願・基礎登録が不要なマドプロ、
指定国での国内移行手続きが不要なPCTのようなものです。
日本で外国商標出願をする場合、3分の1ほどがマドプロ経由ですが、意匠の場合はハーグ協定のジュネーブ改正協定経由が非常に多くなっています。
使わないなんてもったいないな
さて、 ジュネーブ改正協定に基づく国際出願の魅力を感じたところで、メリットについて詳しく述べてみましょう。
まず、1つ目は、手続の簡素化です。
ジュネーブ改正協定に基づく国際出願では、国際事務局への一つの出願手続で、複数の締約国に出願した場合と同等の効果を得ることができるため、各国ごとに願書を作成し、提出する必要がありません。
また、出願する意匠が国際意匠分類の同じ類に属する場合、一つの出願に最大100の意匠を含むことが可能です。
2つ目のメリットは、書類作成が容易ということです。
ジュネーブ改正協定に基づく国際出願では、各国の公用語にかかわらず、所定の様式に基づき英語、仏語又はスペイン語のうち出願時に選択した言語で手続を行うことができます。
そのため、各国の国内手続が求める異なる書類様式、言語により出願する必要がないことから、より簡易に書類を作成することができます。
3つ目は、権利管理の簡便化です。
ジュネーブ改正協定では、国際登録の権利は国際事務局において一元管理されます。
よって、5年ごとの権利更新や国際登録の変更(所有権の移転、名称変更、放棄、限定等)の手続を、各国ごとに行う必要はありません。
4つ目は、経費の削減です。
各国ごとに直接出願する場合は、各国が指定する様式によって各国の言語で出願書類を作成する必要があるため、各国の代理人の報酬や翻訳等の費用が必要になります。
ジュネーブ改正協定に基づく国際出願は、代理人を選任せずに出願することが可能であり、
基本的には各国別の代理人の選任は不要であるため、そのための代理人費用は発生しません。
ただし、指定締約国での実体審査の結果、拒絶の通報が通知され、その応答を指定締約国に行う場合等には、その国の代理人の選任が必要となる場合があります。
5つ目のメリットは、審査が迅速ということです。
ジュネーブ改正協定では、指定官庁が拒絶の理由を発見した場合、国際公表から6ヶ月(又は、実体審査国の場合各国の宣言により12ヶ月)以内に国際事務局に対して拒絶の通報を送付しなければなりません。
各国ごとに直接出願をする場合には、このような審査期間の制限のない国もありますが、ジュネーブ改正協定に基づく国際出願においては、登録の可否がわかる時期が明確です。
国際出願の効果等についても教えて
国際事務局へ直接出願する場合(直接出願)は、国際事務局が国際出願を受理した日が国際出願日になります。 (協定9条(1))
締約国の官庁を通じて国際出願を行う場合(間接出願)は、各官庁が国際出願を受領した日が国際出願日になります。ただし、国際事務局が、各官庁の出願書類受領日から1ヶ月以内に書類を受理しなかった場合は、国際事務局の受領日が国際出願日となります。 (協定9条(2)、規則13(3))
なお、国際事務局が国際出願を受理した時に、その国際出願に出願日の延期を要する不備があるとして出願人に対し不備の補正を求めた場合、国際出願日は、国際事務局がその不備の補正を受理した日に繰り下がります。(協定9条(3)、規則14(2))
国際事務局は出願書類を受理すると直ちに国際出願の対象である各意匠を登録します。ただし、国際事務局が、受理した出願がジュネーブ改正協定又は規則の要件を満たさないとして出願人に必要な補正を求めた場合には、必要な補正の受理をもって国際登録されます。 (協定10条(1))
原則、国際登録日は国際出願の出願日になります。ただし、追加される必須の内容に関連する不備がある場合には、国際登録日は国際事務局が当該不備の補正を受理した日又は国際出願の出願日のいずれか遅い日となります。(協定10条(2)、5条(2))
国際事務局は、国際出願が該当する要件に合致すると認めた場合には、その意匠を国際登録簿に登録し、名義人に国際登録の証明書を送付します。 (規則15(1))
国際登録は、国際事務局が発行する公報により公表されます。
国際公表は、国際登録の日から原則6ヶ月後ですが、出願人の請求により、登録後直ちに公表すること、又は公表を延期することが可能です。延期期間は、国際出願の日又は優先日から最大30ヶ月です。 (規則17(1))
ただし、公表の延期を国内法が認めていない締約国もあり、延期可能な期間が各国で異なるので注意が必要です。複数の締約国を指定する国際出願については、全指定締約国が公表の延期を認めている場合に限り延期が可能ですが、延期期間が異なる締約国を指定した場合は、それらの期間のうち最も短い期間の満了時に公表が行われることになります。 (協定11条)
まず、国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しません(意匠法60条の9)
また、国際公表があるということは、補償金請求権のようなものが必要ということですから「国際公表があつた後に国際意匠登録出願に係る意匠を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業としてその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。」というように、特許法における補償金請求権と同じような規定が設けられています(意匠法60条の12)。
ジュネーブ改正協定に基づく特例
秘密意匠の特例
第六十条の九 国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない。
国際公表の効果等
第六十条の十二 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があつた後に国際意匠登録出願に係る意匠を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業としてその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠であることを知つて意匠権の設定の登録前に業としてその国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対しては、同様とする。
2 特許法第六十五条第二項 から第六項 までの規定は、前項の規定により請求権を行使する場合に準用する。この場合において、同条第五項 中「出願公開後」とあるのは「国際公表後」と、同条第六項 中「第百一条 、第百四条から第百四条の三まで、第百五条、第百五条の二、第百五条の四から第百五条の七まで及び」とあるのは「意匠法第三十八条、同法第四十一条において準用する特許法第百四条の二 から第百五条の二 まで及び第百五条の四 から第百五条の六 まで並びに意匠法第五十二条において準用する特許法 」と読み替えるものとする。
各指定締約国の官庁(指定官庁)は、国際公表の日から定められた拒絶の通報期間内であれば、各国国内法の保護要件に基づき国際登録の効果を拒絶することができます。
国際登録は、拒絶の通報期間内に拒絶の通報がなされない場合には、遅くともその期間満了の日から、また、拒絶の通報がなされた後それが取り下げられた場合にはその取下の日から、各指定締約国の法令に基づく意匠の保護の付与と同一の効果を有します。 (協定14条(2))
国際登録の名義人は、更新手数料の納付、権利移転等といった国際登録以後の意匠権管理についても国際事務局に対して手続を行えばよく、その手続には各指定官庁に行ったのと同等の効果が与えられます。
国際事務局による意匠の登録は、国際登録日から5年間にわたって効力を有します。 (協定17条(1))
所定の手続に従い、所定の手数料の支払いを条件として、5年ごとに更新することができます。 (協定17条(2))
指定締約国における保護の存続期間は、国際登録が更新されることを条件に、国際登録の日から起算して15年ですが、指定締約国の国内法における意匠の保護期間が15年よりも長い場合には、当該指定締約国の保護期間と同一となります。(協定17条(3)
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