冒認中用権について学ぶ前にまずは冒認出願について学んでください。
また、中用権(特許法80条)とも比較しておきましょう。
真の権利者への移転登録が認められると、冒認特許権者は遡及的に無権利者となります。すると、移転登録前に冒認特許権者から実施権(ライセンス)の設定・許諾を受けていたものは実施権原を喪失することとなります。
しかし、ライセンスを受けていた者が冒認の事実を知ることは困難ですよね。
特許登録原簿には冒認者の名前が書いてあるわけですし。
第三者が冒認者を正当な権利者と信じてしまっても仕方ありません。
そして、冒認者から特許権を譲り受けたり、実施権の設定・許諾を受け、特許発明の実施又はその準備を行っている場合に、真の権利者へ特許権が移転されたから今後は特許発明の実施をやめてくれ、というのでは事業のためにした投資が無駄になります。
また、冒認者自身、発明を盗んだわけではなく、その発明の特許を受ける権利が自分にあると勘違いして特許出願するという場合もあるでしょう、
そして、同じように特許発明の実施や準備をしている場合に特許発明の実施が出来なくなってしまうと投資が無駄になってしまい酷であることは同様です。
そこで、冒認特許権に基づき事故が正当な実施権原を有すると信頼した善意者を保護するため、法定の通常実施権を付与することとしました(特許法79条の2)。
特許権の移転の登録前の実施による通常実施権
第七十九条の二 第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際現にその特許権、その特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
2 当該特許権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
本条の実施権者は、真の権利者に対して相当の対価を支払わなければいけません(特許法79条の2第2項)。
また、質権者に対する救済もありません。
もちろん実用新案権に冒認中用権は認められません。