商標法にも特許法における「補償金請求権(65条)」と似ている出願後設定登録前の第三者の使用に対し商標権者(となる者)を保護する制度があります。ただし、単なる準用条文ではないので気を付けてください。

チーたん
商標公報見るのって面白いな~。変なネーミングの商標を見つけるとつい笑っちゃうよ・・・って、あれ?
この商標・・・うちで使っているのとそっくりだ!
ふっくん
指定商品も同じですし、このままだと商標登録出願が商標登録(商標法18条)された場合、商標権の侵害(25条、37条)として権利行使されてしまいますよ。それだけでなく、金銭的請求権も行使されてしまいます。
チーたん
金銭的請求権?
ふっくん
商標登録出願人が、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる とする制度です(商標法13条の2)。

設定の登録前の金銭的請求権等

第十三条の二  商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。
2  前項の規定による請求権は、商標権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。
3  第一項の規定による請求権の行使は、商標権の行使を妨げない。
4  商標登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第四十三条の三第二項の取消決定が確定したとき、又は第四十六条の二第一項ただし書の場合を除き商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
5  第二十七条、第三十七条、第三十九条において準用する特許法第百四条の三第一項 及び第二項 、第百五条、第百五条の二、第百五条の四から第百五条の六まで及び第百六条、第五十六条第一項において準用する同法第百六十八条第三項 から第六項 まで並びに民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条 及び第七百二十四条 (不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が商標権の設定の登録前に当該商標登録出願に係る商標の使用の事実及びその使用をした者を知つたときは、同条 中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「商標権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。

チーたん
特許法の補償金請求権(特許法65条)と似ているね。
ふっくん
そうですね。ただし、「その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金」(特許法65条)を請求できる補償金請求権とは違い、「使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払」しか請求できません。ですから、商標登録出願人が当該商標を使用していることが必要です。
また、金銭的請求権の場合は出願公開が要件となっていません。これは、そもそも出願された商標は出願公開されるものですし(特許の場合は原則出願から1年6月後に出願公開)、補償金請求権のように「出願公開による模倣行為」に対し出願人に保護を与えるという趣旨も存在しないからです。
チーたん
そっか。制度は似ているけど、特許法と商標法では保護する客体が違うから文言上は似ていても違いがあるんだね。
ふっくん
そうです。混乱しないようにしてくださいね。もし迷ったら、法目的(1条)にかえって考えてみるとよいでしょう。