普段聞き慣れない言葉ですが、不実施補償とは何でしょう?

産学連携が叫ばれていますが、大学と一緒に共同研究をした場合に問題となることが多い条項です。

オープンイノベーションの一環として大学との共同研究は良く行われることですが、社外発明を取り入れたいメーカーさんは、要注意です。

チーたん
大学と一緒に研究を進めて特許を取ったのだけど大学側から、不実施補償をしてほしいと言ってきたよ!

特許権は共同で所有しているのに、なんで?

ふっくん
どうやら契約書をキチンと読んでいなかったようですね。

契約の前には必ず全ての条項を読んで納得してからでないとサインをしてはいけません。

チーたん
過ぎたことを責めないでよ。とにかくどうしたらいいか教えて!
というか、不実施補償ってそもそも何??
ふっくん
不実施補償というのは、特許を共同で出願し特許権が共有になった場合において、一方が製造メーカーでない場合に、特許権を実施して利益を得た企業が特許権を実施していない側の大学や県等に利益を補償するために予め決められた料率の金額を支払うことをいいます。

ふっくん
特許法73条2項では、特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。

と規定されています。

しかし、そもそも大学等は特許発明を実施して製造等をすることはないのでこの規定の恩恵を受けません。

それにもかかわらず、特許法73条1項及び3項の規定
[1項 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。]

[3項 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。]

を守らなければいけません。

大学側にしてみれば、自分は特許発明を実施して利益を得られないので他人にライセンスしたり特許権を売って利益を得たいと考えるのが当然です。

しかし、企業側は独占実施したいので、大学側のそんな願いにOKというわけがありません。

したがって、大学側はせっかく特許発明を完成させても、それから恩恵を受けることができなくなってしまうのです。


 

チーたん
契約書を見ると、結構高い料率が書いてあるよ。こんなに支払ったら、儲けがなくなっちゃう!
ふっくん
契約書にサインをしてしまった以上、約束を破るわけにはいきませんから支払うしかありません。

良い勉強だったと思って、次回からは契約締結前に、不実施補償の条項がないかよく読み込んでください

チーたん
サインする前に、ふっくんに見てもらえば良かったよ・・・(T_T)
ふっくん
まぁ、これを読んでいる人たちは助かるわけですし、めでたしめでたし、ですね
チーたん
人の役に立てて光栄だよ(T_T)