有体物の共有については民法で定められています。
しかし、知的財産権のような無対物についてはその特殊性から特許法73条で特別な規定が設けられています。
この共有規定、少し不公平なところがあるようです。いずれ改正されるかもしれません。
有体物と比べながら例をあげてみましょうか。
例えば、チーたんとあいぴーで一つのドライヤーをシェアしているとします。
その場合、どちらかが髪の毛を乾かしてからもうひとりが使いますよね。二人で同時に使うことはできません。
でも、収容できる人数や場所に限界があるでしょう。
たとえば、カーシェアリングだったら、毎朝8時から12時まではAさん、午後はBさん、土日はCさんとDさんというように一つの車を使い回しますし、ホテルだったら、決まった場所に時間が空いたら人が泊まれます。
では、無体物である知的財産権はどうでしょうか。
知的財産権は、無体物なので、使おうと思ったら場所が離れていても同時にいくらでも使うことができます。
日本とアメリカと中国とフランスで同時に一つの特許権を使うことができるのです。
・・・というよりも、契約で縛らない限り制限を設けられません。
ですから、知的財産権を共有している場合は、原則として共有者は全員が全ての範囲についていつでもどこでも実施することができます(特許法73条2項)
ただし、契約自由の原則により、実施を制限することもできます。例えば、チーたんは関東で、あいぴーは関西で使うと決めることができます。
契約でチーたんが40%、あいぴーは60%の持分であるとしましょう。この場合、特許庁へ支払う金額が1万円だとすると、チーたんは4000円、を、あいぴーは6千円を払います。
一方、その特許権により100万円の収入を得た場合、チーたんは40万円を、あいぴーは60万円を得られます。
なお、共有者の利益を守るために、共有者の同意なしに勝手に知的財産権の持分を売ったり貸したりできないことになっています(特許法73条1項、同3項)
たとえば、チーたんが自分の持分を勝手に大企業へ売ってしまったとしましょう。すると、大企業は資本力があるので全国的にたくさんの特許製品を販売してしまいます。
すると、零細企業であるあいぴーは、予期せぬ影響を受けることになってしまいます。
共有に係る特許権
第73条 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
もし、企業同士じゃなくて、企業と研究所だったらどうなるの?
ただ、研究所は特許発明を実施して収益を上げることができないのに、他社にライセンスするときは共有企業の許可を得なければならないとなると不公平ですよね。
ですから、そのような場合は不実施補償をしてもらうといいのではないでしょうか。
知財の評価は更に複雑です。
安く買い叩かれたり高く買わされたりしないように気をつけないといけませんね。