特許権を活用する手段として、自社保有の特許権をライセンス(実施許諾)することは非常に有効です。

しかし、ライセンシー(実施許諾を受ける側)の利益を守るため、ライセンサーには義務もあります。

ライセンスをしたのに、逆に損害賠償金を支払うことになった!なんてことにならないように気をつけましょう。

チーたん
特許権をライセンスすると、自社が実施しなくてもロイヤリティ収入が入ってくるから理想的なビジネスだよね

ふっくん
そうですね。でも、注意しなくてはいけないことがいくつかありますよ

チーたん
そうなの?教えて!

ふっくん
まず第一に、特許権者には侵害者の監視義務があります。

ふっくん
侵害者がいると、ライセンシー(特許権のライセンスを受けた方)の収益が下がってしまうので、ライセンサー(特許権を許諾した方)には、侵害者に対し、差し止め訴訟を起こすことがライセンシーとの契約上の義務となります。

チーたん
専用実施権を設定している場合は?
ふっくん
その場合は契約で自由に決めればいいのではないでしょうか
チーたん
侵害者を発見したら、損害賠償請求訴訟は起こせないよね。自分は実施していないんだから。
チーたん
特許発明の実施を止めるように警告すれば義務を果たしたことになる?
ふっくん
差し止め請求まではすべきでしょう。
ふっくん
そのため、ライセンスする権利は訴訟で有効に侵害者を責められるほど強い権利である必要があるのですが、強い権利を取るのは難しいのです。

なぜなら、弱い権利であるほど、権利範囲が狭く、特許を受けやすく、逆に強い権利であるほど権利範囲が広く特許を受けにくいので、ついつい特許を取りやすいように弱い権利を取ることが往々にしてあるからです。

チーたん
う・・・、ぼく、拒絶理由通知に対して補正をするときに、権利範囲をだいぶ狭めちゃったよ

ふっくん
資金の限られる中小企業は余計な発明についてまで権利化する余裕などないので、できる限り広い権利を取れるようにしたいですよね。

ふっくん
余談ですが、大企業はパテントプールやノルマ、交渉のネタとして権利を取ることも多く、どうしようもない権利も散見します

ふっくん
さて、注意点の2つ目は、ライセンシーの作る製品の品質のレベルが低かった場合に、自社製品のブランドが傷ついてしまうということです。

チーたん
他のライセンシーはキチンとした製品を作っているのに、一社だけに質の低い製品を作られたら困っちゃうよね

ふっくん
このような事態を防ぐために、予め一定品質を保持するように契約で決めておくといいでしょう。

ふっくん
さて、注意点の3つ目は、特許権が後発的に無効にされてしまった場合です。

ふっくん
無効審判が確定すると、特許権は遡及的に消滅します。つまり、最初からなかったことになってしまうのです。

すると、理由のない権利をライセンスしたことになるので、受け取ったライセンス料をどうするのかという問題が生じてきます


チーたん
権利が無効になったら、ライセンス料を返却しないといけないの?

ふっくん
無効になったとはいえ、ライセンス中は安心して実施することができたのですから、それなりにライセンスにも意味があったといえるでしょう。

ですから、ライセンス料は不当利得には当たらないと思いますよ

チーたん
いろいろ教えてくれてありがとう!
ふっくん
どういたしまして。質問がありましたらまたいつでも聞いてくださいね