特徴あるデザインの部分を保護できる部分意匠の登録制度は、意匠法の中でも非常に重要な制度です。
出願に当たっては、通常の意匠登録出願の要件にプラスして独自の要件が課せられています。
従来、意匠法の対象となる「物品」は、独立した製品として市場流通性を有する有体物と解されていたため、独立して取引の対象とはなりえない「物品の部分」にかかる意匠は意匠法の保護対象から除外されていました。
そのため、一つの意匠に独創的で特徴のある創作部分が複数箇所含まれている場合であっても、物品全体として一つの意匠権しか取得できず、それらの一部が模倣されていても、意匠全体としての模倣が回避されているならば当該意匠権の効力は一部模倣された意匠には及ばない状況にありました。
しかし、独創的な意匠を保護し創作の奨励を図りつつ産業の発達に寄与しようとする意匠法では、かかる状況は意匠の創作意欲を削ぐ結果となり、産業政策上好ましいことではありません。
そこで、このような点を考慮して意匠を構成する「物品」の定義に「物品の部分」が含まれることを明記し(意匠法2条1項かっこ書き)、物品の部分について独創的で特徴のある創作をした場合には、当該部分を部分意匠として保護することとしたのです。
1つ目として「意匠にかかる物品が必ず特定されていなければならず、その物品は別表第1(7条)に例示される従来より意匠法の対象となる物品であること」が挙げられます。
部分意匠制度の導入によって意匠と物品との一体性がなくなったわけではないからです。
したがって、出願にあたっては部分意匠であることを明確にするとともに、意匠にかかる物品を明記しなければなりません(意匠法6条1項3号)。
物品と離れて模様あるいは色彩のみを表したものは部分意匠とは認められません。
2つ目の要件は、「物品全体のなかで、一定範囲を占める部分の形態であること」です。
図面等において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定し、「意匠の説明」の欄においてどのように特定されているかを説明することが必要です。
「当該物品において、他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る部分であること」
各部品ごとまたは「蓋」のように一般的名称で呼べるような部分ごとに示さなければいけません。
創作の単位がはっきりしないからです。
さて、最後4つ目の要件です。
「組物の意匠(意匠法8条)にかかる部分意匠ではないこと(2条1項かっこ書き)」
組物の意匠制度は複数の物品を組み合わせたシステム製品にかかるデザイン全体の統一感を一創作として保護する制度であり、その制度趣旨に鑑みれば組物の意匠に関する部分意匠はデザイン全体の統一感の保護とは関係がなくなるからです。
この4つの要件を満たさなかった場合は意匠を構成しないとして出願が拒絶されます(意匠法3条1項柱書違反)。
また、手続的要件も満たさなければなりません。
「意匠にかかる物品」の欄には、省令で定める「物品の区分」にしたがって全体の物品名を記載しなければいけません
なお、もし一つの物品の中に物理的に分離した部分意匠が2以上表示されているものを出願した場合には7条違反になります。出願分割(10条の2)で救済されますが。
たとえば、自転車の全体意匠と自転車の部分意匠とでは、願書中の意匠に係る物品の記載は同一ですが、意匠登録を受けようとする方法・対象が異なるため、類否判断は行われません。
先願優位の原則の下、権利関係を調整したものです。
そして、いわゆる当業者の立場から見て、願書の記載や図面等からこれら要素を総合的に判断して、それら要素が同一であると判断した場合には同一であり、差異がある部分に評価すべき構成要素がないと判断した場合には類似とされます。