特許権を取りさえすれば、市場を独占できる、と一般には思われているようです。

しかし、特許権は、あくまでもその権利範囲と同じ発明の実施を禁止出来るだけのもの。範囲の狭い弱い権利や回避しやすい権利では、取っても意味がありません。

特許権は出願前から、いえ、発明をする前から戦略的に考えていかなくてはいけません。

 

チーたん
ようやく特許を取れたよ!感無量~!

ふっくん
感激しているところに水を差すようですが、特許は取って終わりではありませんよ。むしろ、長い期間に渡る戦略の過程にすぎません

チーたん
えー!?拒絶理由通知を出したり補正をして頑張ったのに!

ふっくん
頑張っても事業に役立たないのでは意味がありません。

競合は特許を出願前からどのように収益を上げるか戦略を練っているのですよ。負けないようにこちらも特許戦略を練りましょう


チーたん
特許さえ取れば誰も発明を真似しなくなるんでしょ?

ふっくん
それは大きな勘違いです。

むしろ、特許を取った方が真似されるんですよ。発明の内容が全部公開されてしまうのですから。

ふっくん
真似する行為を法的に止められるのが特許権の効力の一つです。

勝手に特許発明を実施する人に対し実施をやめさせるだけでなく、ライセンスしてロイヤリティ収入で稼ぐという活用の仕方もあります。


チーたん
ぼく、特許について間違った理解をしていたかも・・・

ふっくん
どうやらチーたんの会社は特許権や商標権を取っただけで満足してしまい、それを収益に結びつけることが出来ていないようですね。

チーたんの会社だけではありません。ほかの会社もなかなか特許権を収益に結びつけることが出来ずにいます。

日本は休眠特許保有数世界ナンバーワンです。

確かに他社の牽制という意味では持っているだけでも意味があるのかもしれませんが、実際はどう使っていいのかわからずに放置しているだけというのが現状ではないでしょうか。

ふっくん
特許を取得すれば他社の参入を防いだり何かと有利にはなりますが、他社は必死で特許を回避しようとしてきます。うかうかしていると簡単に市場を奪い返されますよ。

ライバルはそのまま真似をするだけでなく、権利範囲に入らない類似の技術を作ってきます。

しかも、先行した研究の成果があるので、後発会社は低コストで作ることができます。

せっかく時間とコストをかけて最初に開発しても、後発の企業や同分野の大企業に負けてしまうことはよくあることです。

ですから、将来事業化がされたときの競争状況を予測し、競争に勝てる特許網を張っておくことが重要です


チーたん
よくわからないから図を示してよ

ふっくん
はい。この図を見てください。

特許の戦略的出願
ふっくん

上の図に示したように、”ただ書いただけの弱い特許A”は権利範囲が狭くなります。

取ってもほとんど意味がないばかりか、他社に新技術開発のきっかけを与えてしまうのでむしろ逆効果です。


ふっくん
”強い特許B”はAよりは強く、独占排他権としての機能を有します。

しかし、これでもまだ足りません。

特許で稼ぐなら、さらに強固な参入障壁を築く必要があります。そのためには、周辺技術も特許で固めて、他社が参入できないようにします。

たとえば、関連技術CやDも特許を取ります。

発明Aをした時点では、CやDを取ることまではなかなか考えられませんが、先を見据えて戦略的に研究を進めましょう。


ふっくん
ちなみに、自社発明の範囲外の発明Eを他社が発明したとします。この場合、Eは自社の特許権の侵害にはなりません。

しかし、こういった発明は非常に画期的なものなので、市場自体をごっそり奪われてしまう恐れがあります。

とはいっても、Eを他社が思いつくのは時間的にAが実施された何年も後になるのが通常なので、それまでにAで稼げばよいのです。


チーたん
なるほどね。明細書の書き方でポイントはある?

ふっくん
権利が弱くならないように文言には注意してください。言葉の使い方一つで権利範囲が狭まってしまいます。

また、特許を出願して、拒絶理由通知がきたら、特許を取りやすいように安易に明細書を補正してしまってはいけません。ギリギリまで広い範囲で特許を取れるように補正するのです。

訴訟に耐えられる強い特許を取得しなければ特許を取っても意味がありませんから。


チーたん
言葉に注意するって言っても、どんなふうに書けばいいの?

ふっくん
特許明細書は、先行技術調査を含めてほとんどをチーたんが一人で作成していますよね?

まだレベルの低いうちは、弁理士に書いてもらって、それを見て学んでみてはどうでしょう。

いくつか書いてもらったら今度は自分でも書いてみて、仕上げのチェックを依頼してみてください。

こうして練習をして上手くなったら自分だけで出願できるようになります。


ふっくん
また、関連技術の取り方も教わってください。

自分では強い特許網を張ったと思っていたのに、他社はその特許網を簡単にくぐり抜け、結局競合他社にノウハウを与えてしまっただけということになったら目も当てられませんから。

こういったことを親身になって教えてくれる弁理士さんを紹介しますよ


チーたん
ありがとう!

他にも気をつけることはある?

ふっくん
チーたんの会社の製品にはお客様が使用する素材も多いですよね?

明細書には自社製品に関する実施例だけではなく、お客様の使用形態に応じた実施例まで記載して、自社製品を使用してもらえるようにしてください。

それから、海外出願についてですが、中国や韓国の外国出願は、誤訳も致命的です。特許を取っても無駄になってしまいますから。

誤訳を避けるためにも特許請求の範囲の翻訳が適切であるのか確認するため、英語から中国語や韓国語に翻訳し、更に中国語や韓国語から英語に逆翻訳した上で出願する等、誤訳の防止に努めてください。


チーたん
大変そうだなあ

ふっくん
重要なことは繰り返しお教えしますから徐々に覚えてください。

知的財産担当者だけで特許戦略を立てるのではなく、経営者であるあいぴーも交えて戦略を立てましょう。


あいぴー
え?うちに突然振られても困るで。

技術のことはさっぱりわからへんわ


ふっくん
経営者が知財マインドを持っていないと、従業員も知財を重視しなくなってしまいますよ。

大変ですが、まずは経営者が知財について意識するようにしてください。


あいぴー
努力はするわ

ふっくん
特許戦略を立てる時期は研究開発途中であることが多いため、予測不能なことばかりです。

競合他社すらわからなかったり、その技術で他社に勝てるのかもわかりません。

しかし、それでも事業の目的を定め、ターゲットを決めて特許出願をしていかなければならないのです。

そうすることで、他社の追随を許さないゆるぎない特許の壁を築きあげることができます。

知財の取得は大変ですが、努力する価値はありますよ。

頑張りましょうね

チーたん
頑張るよ!ふっくん、協力してね
ふっくん
はい!全力でサポートいたします
ふっくん
そうそう、発明の技術的特徴が製品の外観に現れている場合にはそのデザインを意匠権で保護することもできます。意匠登録出願は図面や実物があればすぐに出来るので、外観に特徴がある製品は、ぜひ意匠登録出願もしておきましょう。AIPブレンドですよ