特許権を始め、商標権や意匠権、著作権といった知的財産権はその名のとおり財産権なので、担保権の目的とすることができます。

ベンチャー企業や中小企業にとっては知的財産権の担保化が有効な資金調達方法となります。

しかし、特許庁の統計過去20年ほどを振り返ってみると、知的財産権は担保としてうまく活用されてきたとは言えないように見えます。
かろうじて著作権が有効利用されてきた程度でしょうか。

知的財産権が担保として有効に機能してこなかった理由の一つは、知財の価値の評価の難しさです。そして、もう一つは日本においては取引市場も活性化していないということもあげられます。

民間の会社に評価を頼むと数十万円もかかってしまいますし、だからといって銀行などの内部で適切に評価することもできていない状態ですので、このままでは財産権を眠らせたままになってしまい非常に勿体ないといえます。

早急に知的財産権の適切な評価方法を確立し、市場を活性化することが必要です。

チーたん
うちの会社、資金繰りが苦しいってあいぴーが言ってたよ。
めぼしい資産はないけど知的財産権はあるから、特許権に抵当権をつけて資金を調達できないかな?
ふっくん
特許権には質権を設定することができますよ。それから専用実施権や通常実施権にも質権を設定することができます。

ただし、特許を受ける権利は質権の目的とすることができません(特許法33条2項)。

チーたん
質入れしちゃうとうちの会社も特許権を使えなくなっちゃうよね?それは困るから抵当権が良いんだけど・・・

ふっくん
特許法の質権には留置的効力は無いので大丈夫ですよ。
質権者は、契約で別段の定めがある場合を除き、特許発明の実施をすることができないんです(特許法95条)

チーたん
え、じゃあ、質権を設定しちゃってもぼくは引き続き特許発明を実施できるの?

ふっくん
そうですよ。実施だけでなく第三者に実施権の設定・許諾をすることもできます。

チーたん
なんで普通の動産と違って、特許権はそんなことが認められているの?

ふっくん
無体財産権である特許権の特殊性ゆえですね。

一般的に、質権者よりも特許権者の方が特許発明については詳しいと言えます。質権者は高度な技術的思想である発明(特許法2条1項)をうまく使いこなすことはできませんが、特許権者なら有効に活用できるでしょう。

チーたん
質権とは名ばかりで抵当権みたい(笑)
ふっくん
なお、質権設定後も自由に特許発明の実施をすることができるとはいえ、質権設定後は質権者の承諾を得なければ特許権の放棄(特許法97条)や訂正審判・訂正請求をできません(特許法127条、134条の2第9項)。
なぜなら、質権者に無断で権利内容が変更してしまったり消滅してしまうと質権者の利益を害することとなるからです

チーたん
なるほどね

ふっくん
また、特許権(専用実施権、通常実施権)を目的とする質権は、特許権(専用実施権、通常実施権)の対価または特許発明の実施に対しその特許権者(専用実施権者)が受けるべき金銭その他の物に対しても行うことができます(特許法96条)

チーたん
債務の履行を確保するため?

ふっくん
その通り!
ただし、特許権者が取得した金銭その他の物が特許権者の一般財産に組み込まれた後に質権の行使を認めると、特許権者に対する一般債権者の利益が害される恐れがあるため、金銭の払い渡し又は物の引渡し前に差し押さえておくことが必要です(特許法96条但し書き)

チーたん
特許法上の質権って使いやすそうだね!
さっそく質権の設定契約を結ぼうかな

ふっくん
質権は登録が効力発生要件ですので気を付けてくださいね(特許法98条1項3号)

チーたん
うん!
質権以外に特許権を担保化する方法って無いの?

ふっくん
譲渡担保や財団抵当があります。

ただし、譲渡担保は担保権者が特許権者となるため、侵害訴訟への対応などは担保権者自身が行わなければならなくなり、担保権者に特許管理上の負担が生じてしまいます。


チーたん
それならやっぱり質権の方がいいかな。
あいぴーと相談してみるよ!
最悪、特許権を譲渡して資金調達するよ

ふっくん
それだと特許発明を実施できなくなってしまいますからやはり特許権を担保にした方が良いでしょう
または役立たずなあいぴー社長を質入れしてしまっても良いでしょう

あいぴー
サラリと恐ろしいこと言わんといてや!

チーたん
あ、役立たずな社長が今頃現れた(笑)