自社によって生み出された発明を独占する手段として、内容を秘密にして実施するという方法と、
知的財産権である特許権を取得して自社だけが特許発明(特許法2条2項)を実施するという方法が考えられます。
前者は秘密がバレてしまったときや他社が同じ発明について特許権を取得してしまった時に不利になってしまいます。
一方、特許権を取得することは、国からお墨付きをもらえるわけですから対外的な信用力を得られ、強力である反面、
その内容を全世界に公開しなければいけないことになっています。
発明の公開の代償として特許権が与えられるわけです。
発明は秘密にすべきか、特許を取るべきか、しっかり知的財産戦略を練らなければいけません。
公開されたら特許が登録されるの?
出願された特許は、そのままでは3年経過後に取り下げたことになってしまいます。特許権がほしかったら、出願するだけではなくて、審査請求(特許法48条の3)をして出願した特許を特許庁の審査官によって審査してもらわなければいけないのです。
とりあえず出願はしたけれど、審査請求料は高くて払うのはもったいないし、やっぱり権利はいらない、と思ったらそのまま放置しておけばいいわけです。
注意したいのは、権利化を望まない発明についても、特許出願をしてしまったら、出願日から1年6か月後に強制的に出願公開されてしまうという点です(特許法64条)。
出願が公開されてしまうと、だれが、どんな発明について出願したのか全世界に内容が知られてしまいます。
これは、発明が知的財産であることを考慮すると大きな痛手となります。
したがって、出願したら、権利化を望まない場合には1年6か月経つ前に取り下げておく必要があります。
もちろん、出願公開してしまうというのも特許戦略上、ありかもしれません。
発明が公開されたら、その公開された発明については他人が特許出願を取ることはできなくなりますから(特許法49条、特許法29条)
秘密にしておけないの?
公開しなくては、同じような発明を他人が発明することになり、労力の無駄です。
産業の発達のためには発明は公開した方が良いのです。
特許権が与えられるのは、公開の代償と考えてください。
出願公開
第64条 特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第1項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
特許出願人は、出願公開があった後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をすると、その警告後特許権の設定の登録前に業として(仕事として)その発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合に補償金の支払を請求することができます。
出願公開の効果
第65条 特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
ただし、この請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができないので、将来的に特許出願が拒絶(特許法49条)されてしまったら、いくら特許出願と同じ発明を実施していても補償金請求権を請求することはできません。
一定の書面を特許庁長官へ提出すればいいんです。
出願公開の請求
第64条の2 特許出願人は、次に掲げる場合を除き、特許庁長官に、その特許出願について出願公開の請求をすることができる。
一 その特許出願が出願公開されている場合
二 その特許出願が第43条第1項、第43条の2第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願であつて、第43条第2項(第43条の2第2項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)に規定する書類及び第43条第5項(第43条の2第2項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)に規定する書面が特許庁長官に提出されていないものである場合
三 その特許出願が外国語書面出願であつて第36条の2第2項に規定する外国語書面の翻訳文が特許庁長官に提出されていないものである場合2 出願公開の請求は、取り下げることができない。
補正後も実施行為が技術的範囲に属するならば再度の警告は不要とも考えられますが、いずれにせよ警告しておく方が無難です
ただし、特許法と異なり、商標自体は単なる選択物ですので、出願公開されただけの商標と同じ商標を出願することはできます。
その特許出願が結局、拒絶査定されてもうちに責任はない!
内容の伴わない知的財産を売っても産業の発達に貢献しませんよ(^^;)