膨大な数の条文がある著作権法。その中でも複雑な著作隣接権のうちの出版にかかわる権利が出版権です。
この出版権を学ぶには、まずは著作権法の基礎が頭に入っていないと本当に理解することは出来ません。ですから自信をもって著作権がわかる!と言えない人は、まずは最低限、著作権法の基礎と著作隣接権を読んでからここに戻ってきてください。
足し算引き算を知らずに掛け算割り算をすることは出来ますが、遠回りになりますよね。
同じように著作権法の基礎を知らずにいきなり出版権について学んでも頭に入ってきません。
まあ、あいぴーのことですからろくに契約書も読まずに契約してしまったのでしょうが
まあ、あいぴーの本なら売れないことが確実ですから問題にはなりませんが、作家なら出版に関する契約は知っておくべきですよ
きちんとした契約を結ぶことは出版社のためにもなるのに。
たとえば、①あいぴーの持つ著作権すべてを出版社に譲渡(売る)したり、②あいぴーの持つ著作権のうち、複製権等必要な支分権だけを出版社に譲渡したり、③あいぴーが著作権を持ちつつ出版社に対して複製・頒布を許諾したり、さらに、④あいぴーと出版社との間で出版権を設定するという方法が考えられます。
通常①②の方法は採られないと思います。著作者としては愛着ある作品の著作権を他人に売ったりしたくないでしょうし、出版社としても買っても困るでしょうから。
さて、ここからが本題です。③のように出版の許諾契約をする場合と④のように出版権の設定をする場合では、権利義務の内容が大きく異なります。
③と④の違いは、③がたんなる出版契約なのに対し、④のように出版権を設定すると、出版社は、独占的に出版できる(著作者でも出版できなくなる)力を有することになります。また文化庁に登録した場合は第三者効(たとえば当該出版社が出版している本を無断で複製している人がいたら差止等できる)を有することになります。
利用許諾契約は、独占的か非独占的な契約かで分かれます。
独占的な契約を結べば、出版権設定契約と同じように、その著作物を出版社が独占的に使用できるようになります。ただし、登録した出版権(著作権と同じように出版権も文化庁に登録できます。非常に簡単です。)とは違い、第三者効はありません。ですから、他人が無断で出版をしていても、出版の差止等をすることは出来ません。
たとえ作者でも自分の著作権のうち複製権は売ってもいいと思う人もいるでしょう。
出版権の設定
第七十九条 第二十一条又は第二十三条第一項に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権等保有者」という。)は、その著作物について、文書若しくは図画として出版すること(電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録し、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物により頒布することを含む。次条第二項及び第八十一条第一号において「出版行為」という。)又は当該方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。以下この章において同じ。)を行うこと(次条第二項及び第八十一条第二号において「公衆送信行為」という。)を引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
2 複製権等保有者は、その複製権又は公衆送信権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。
出版権はいつ発生するん?
また、単行本についてだけなのか等細かい設定も可能です。
契約する相手にも気を付けてください。「複製権者」は出版権を設定することが出来るとされています。したがって、たとえ著作者でも複製権を他人を譲渡した場合は出版権を設定することはできませんし、赤の他人でも複製権者だと名乗って出版社をだます虞があります。
特に、作者が亡くなって著作権が相続した場合には十分にご注意ください。相続人がだますつもりはなくても勘違いして出版権を設定しようとするかもしれません。
また、二次利用も考えているのであれば、契約書にその旨の条項を盛り込んでおく必要があります。出版権は「原作をそのまま出版できる権利」ですので、たとえば小説の出版権を受けたのに勝手に漫画版の出版もしてはいけません。
他にも、重刷する場合には、その都度予め著作者のその旨を通知しなければいけません(著作権法82条)。
なお、その際に著作者は原稿等に修正や増減を加えることができます。
電子書籍の場合には、複製権等保有者が3月以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらずその期間内に履行がされないときは同じように出版権を消滅させることができます(著作権法84条2項)。
八十四条 出版権者が第八十一条第一号(イに係る部分に限る。)又は第二号(イに係る部分に限る。)の義務に違反したときは、複製権等保有者は、出版権者に通知してそれぞれ第八十条第一項第一号又は第二号に掲げる権利に係る出版権を消滅させることができる。
2 出版権者が第八十一条第一号(ロに係る部分に限る。)又は第二号(ロに係る部分に限る。)の義務に違反した場合において、複製権等保有者が三月以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらず、その期間内にその履行がされないときは、複製権等保有者は、出版権者に通知してそれぞれ第八十条第一項第一号又は第二号に掲げる権利に係る出版権を消滅させることができる。
3 複製権等保有者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなつたときは、その著作物の出版行為等を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りでない。
電子書籍を出版するなら昔ながらの出版社である必要はありません。
(著作権法80条1項)
出版権の譲渡等
第八十七条 出版権は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、その全部又は一部を譲渡し、又は質権の目的とすることができる。
美人社長兼作家の著作物の出版権はとんでもない価値があるから勝手に売られたら困るからな
次の質問いくで!
出版社がお金がなくて他人にお金を借りて出版したら、その資金を出した者が出版権者になるん?
当該出版者の出版物を複製されたのなら複製権の侵害を主張できますが、そうでない場合に複製権の侵害を主張できるのは著作権者だけです。
なお、登録していなくても自己の出版物を複製する海賊版出版社に対しては出版権者は権利行使が可能です。
それから、紙の書籍の出版権だけ与えられている出版社は、電子書籍を違法に出版している人に対し権利行使することもできます。紙の出版許諾だけしかもらっていなくても、複製権・送信可能化権・譲渡権・貸与権を有するため、複製権と送信可能化権の侵害として権利行使できるからです。
ただし、当該出版社の出版物を元にした複製でない電子出版(たとえば独自にテキストを打ち込んだもの等)に対しては権利行使は難しいかもしれません。
出版物の利用の中で、本権利の支分権として想定さ れる複製、送信可能化、譲渡、貸与に関するものであ れば両方の許諾が必要となります。逆にそれ以外の 利用(翻訳、翻案等)であれば、著作権者の許諾のみ必要となります。
商業出版じゃなくて、同人誌を自費出版する場合に出版権を設定することはできるん?
出版権を設定すると、設定期間内はたとえ著作者でも自分で出版することができなくなるという制限があるから注意しなくちゃあかんけど、義務を果たさない出版権者の権利は消滅させることができるし、一定の範囲では海賊本販売者に権利行使をしてもらうことが出来るから、信頼できる出版社になら出版権を設定しても大丈夫っつーこっちゃな
出版権を与えることで著作権者は出版権の設定期間内は自分で出版することができなくなるという制限があります。しかし、それ以外に関しては何の制限もありません。
出版権は著作隣接権に過ぎませんからね。
ですから、きちんと出版してもらえるのなら出版権を与えてしまってよいでしょう。
出版権者は単なる出版契約よりも権利が強くなりますが、その分義務も課されますからね。
あいぴーがアホなことばかり言うから攻撃しているだけで
知的財産権の基礎が身についていないとこれからのグローバルな社会で取り残されてしまいますよ。美人社長さん!
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