登録意匠の範囲(意匠法24条)は意匠権の権利範囲を決める重要な概念です。
願書や図面等の記載からどのように登録意匠の範囲が定められるのでしょうか。
また、特許発明の技術的範囲(特許法70条)と比べ、どのような解釈の違いがあるのかその相違点に注意しましょう。

チーたん
意匠が登録されたのだけど、この意匠とちょっと違ったデザインについて実施してもいいのかな?
意匠登録後にちょっとデザインを変えて使いたくなったんだ
ふっくん
登録意匠に類似する意匠についても意匠権者は実施(意匠法2条3項)できますよ(23条)。

意匠権の効力

第二十三条  意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

チーたん
禁止権には排他権しかない商標とは違うなぁ
ふっくん
意匠権の保護客体である登録意匠は物品の美的形態(2条1項)として具体的に視覚により把握されますよね。

これは、技術的思想を保護客体とする発明(特許法2条1項)とも違います。

チーたん
「意匠登録請求の範囲」なんてないもんね
ふっくん
そうです。意匠は発明とは違って文章により特定することは極めて困難なのです。
チーたん
図面で特定すれば保護客体の特定が容易だね
あいぴー
それでもやっぱり登録意匠の範囲の特定は難しそうやけどな。
ふっくん
そうなのです。
ですから、意匠法では意匠の特殊性に鑑み、24条を規定したのです。
これにより、意匠権者にとっても第三者にとっても無用の争いを減らせることになります。
チーたん
登録意匠の範囲はどうやって決められるの?

ふっくん
登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならないとされています(24条1項)。

登録意匠の範囲等

第二十四条  登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。

ふっくん
意匠は物品と不可分の関係にありますが(2条1項)、観念的には分割して把握することが可能なので、意匠法は出願にあたり願書の記載で物品を、添付図面等によって形態を特定させています(6条1項)。
チーたん
特許出願の場合は図面の提出はできるけれど任意で添付できる書面だから(36条2項)、特許請求の範囲を解釈する参考資料とはなり得ても(特許法70条2項)、図面自体が特許発明の技術的範囲を特定する資料とはなりえない点で意匠とは違うね。
ふっくん
はい。
ここで注意しなければいけないこととして、「登録意匠の範囲が意匠権全てをさしているわけではない」ということがあげられます。
チーたん
どういうこと?
ふっくん
先ほど述べたように、法が定義する意匠は物品の美的形態であり創作にかかるものです(2条1項)。したがって、登録意匠の範囲にも創作としての広がりはなく、意匠権の効力範囲を登録意匠の範囲に限っていたのでは意匠の創作を有効に保護することができません。

そこで、意匠権の効力は登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲まで及ぶこととしたのです(23条)。

つまり、意匠の類似とは創作同一性の認められる範囲をいうものと解することができます。

チーたん
これに比べて、特許権の効力範囲は特許発明の技術的範囲(70条)に限定されるよね(68条)。
ふっくん
はい。意匠も発明も共に創作ですが、意匠法では権利客体の範囲(24条)と効力範囲は一致しないのが原則であるのに対し、特許法においては権利客体(70条)と効力範囲とは原則として一致することになります。
あいぴー
特許訴訟も大変そうやけど、意匠訴訟も大変そうやな~
チーたん
意匠の範囲について疑義があるときはどうすればいいの?
ふっくん
特許庁に対して判定を請求することができます(25条)
チーたん
技術的範囲について判定を求めることができる特許発明と同じだね(特許法71条)。
ふっくん
ちなみに、部分意匠制度の導入とともに出願人自ら主張できる意匠の創作の特徴記載制度が導入されました(意匠法施行規則6条3項)。
あくまでも参考情報を提供するためのものであって、登録意匠の範囲を定める基礎とはされませんがね。
チーたん
登録意匠とそれ以外の意匠が類似かどうかの判断はどうすればいいの?
ふっくん
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされています(24条2項)
チーたん
需要者?
ふっくん
はい。創作者を基準とすると観念的になりすぎますからね。
チーたん
意匠って簡単だと思ったけれど、意外と奥が深いんだね

ふっくん
優れた創作を効果的に保護するためには、特許権だけでなく、意匠権の取得も考慮すべきです。

チーたん

AIPブレンドだね!

ふっくん
はい(笑)