関連意匠制度は、一つのデザインコンセプトにかかるバリエーションの意匠を本意匠と同等に保護するためのものです。
その特殊性から登録時及び移転時において特別の要件が課せられています。
う~ん、これは以前出願した意匠に似ているので、普通に出願すると意匠法9条1項に違反するとして意匠登録出願が拒絶されます(意匠法17条)。
意匠法における先願
第九条 同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
意匠権の効力
第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
通常は、同一または類似の意匠について同じ日に2つ以上の意匠登録出願があったときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみしかその意匠について意匠登録を受けることができません。また、協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができないとされています(9条2項)。
しかし、関連意匠制度を利用すれば、関連意匠と本意匠の出願人が同一である限り、バリエーションの意匠についても保護されます(10条4項)
関連意匠
第十条 意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第十五条において準用する特許法第四十三条第一項 又は第四十三条の三第一項 若しくは第二項 の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、第二十条第三項の規定によりその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。
2 本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
3 第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けることができない。
4 本意匠に係る二以上の関連意匠の意匠登録出願があつたときは、これらの関連意匠については、第九条第一項又は第二項の規定は、適用しない。
まず、一つの本意匠を決めます。これは出願人が自由に決めて構いません。そして、それに類似する関連意匠(いくつでもよい)の願書に「本意匠」の欄を設けます(施行規則2条1項様式2備考7)。
関連意匠は本意匠と同日~本意匠の公報発行の前日までに出願します(10条1項)。
なお、本意匠の出願と関連意匠の出願が同日でない場合、本意匠と関連意匠を入れ替えたら、10 条1項違反で拒絶されるため入れ替えることはできません。
関連意匠が本意匠に類似していない場合は、関連意匠の出願から「本意匠の表示」の欄を削除する補正(60条の3)をすることにより通常の出願として登録され得ます。
10条1項違反は無効理由(48条)とはなっていません。
本意匠に類似しない意匠について関連意匠の意匠登録がされても第三者に不利益を与えることはなく、独立して登録を受けられたものであるからです。
なお、関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けることができません10条2項、17条)。
誤って意匠登録された場合は無効理由とされています(48条)。
類似意匠の無限連鎖は第三者利益を害する場合があるためです。
①関連意匠の意匠権の存続期間は本意匠の意匠権の存続期間が満了するまでです(21条2項)。
権利の重複部分について実質的な延長が生じないようにするためです。ただし、存続期間の満了以外の理由(意匠権の放棄、登録料の不能、無効)によって本意匠の意匠権が消滅しても、関連意匠の意匠権は消滅しません。本意匠と関連意匠との関係は便宜的なものですからね。
②関連意匠の意匠権は分離して移転することができません(22条1項)。
物権的請求権が二以上の者へ帰属することがないようにするためです。
③専用実施権の設定については、本意匠及びすべての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定することができます(27条1項)。権利の重複部分について二以上の者に物権的請求権が成立することになり関連意匠制度の制度趣旨に反することになるからです。
なお、条文上明文の規定はありませんが、質権の設定についても同様の制限があるものと解されます。質権の実行による権利の移転が予定されており、同様の問題が生じるからです。
すでに専用実施権が設定された本意匠についての関連意匠の登録をしたい場合は、一度専用実施権を解除後、関連意匠出願し、 再設定してください。
なお、意匠権を移転するときには特例があるので注意してくださいね(26条の2)。
また、国際意匠登録出願の場合にも、特例が設けられていますからね。
関連意匠の登録の特例:意匠法60条の8
関連意匠の意匠権の移転の特例:同60条の15
関連意匠の意匠権についての専用実施権の設定の特例:同第60条の16