発明も知的財産なら、特許権も知的財産です。しかし、発明は知的財産とは呼べますが、知的財産権ということはできません。

「特許発明」(特許法2条2項)になった時点で、知的財産権と呼ぶことができます。

特許庁に特許出願し、特許権を得れば知的財産は知的財産権となるのです。

発明を完成させただけでは、知的財産権は有していません。将来的に特許権を取りうる「特許を受ける権利」を有しているのです。

チーたん
特許権って知的財産権だから、売ったり買ったりできるでしょ。
じゃあ、まだ特許権がない状態、つまり、発明しただけでまだ特許出願していない状態では財産的価値はないの?
ふっくん
発明者が発明をすると、その発明の完成と同時に、特許を受ける権利(特許法33条)を取得します。

この「特許を受ける権利」には財産的価値があるので、売ったり買ったりすることができます。

特許を受ける権利

第33条 特許を受ける権利は、移転することができる。
2 特許を受ける権利は、質権の目的とすることができない。
3 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。
4 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、仮専用実施権を設定し、又は他人に仮通常実施権を許諾することができない。

第34条 特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
2 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。
3 同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があつたときも、前項と同様とする。
4 特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。

5 特許を受ける権利の相続その他の一般承継があつたときは、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
6 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に二以上の届出があつたときは、届出をした者の協議により定めた者以外の者の届出は、その効力を生じない。
7 第39条第6項及び第7項の規定は、第2項、第3項及び前項の場合に準用する

ふっくん
ここで、発明者とは自然人(人間)のことをいい、法人(会社)は発明者になれません。だって、会社に発明なんてできませんからね。
ただ、発明者を雇っている会社は、完成した発明を予約承継する契約などができます(特許法35条2項)。

複数の人が協力し合って発明を完成した場合は、共同発明として、「特許を受ける権利」は発明者全員の共有となり、共有者全員でなければ特許出願をすることはできません(特許法第38条)。

売るときも、他の共有者の同意を得なければいけません(特許法第33条第3項)。

チーたん
特許を受ける権利の一部だけを移転することってできるの?

ふっくん
できますよ。一部だけを移転すると、当該特許を受ける権利は売った人と買った人の共有になります。

チーたん
特許を受ける権利の移転は、特許出願の前にするの?特許出願をしてからするの?
ふっくん
どちらでもできます。
ただし、取り扱いが違ってくるので気を付けてください。
ふっくん
特許を受ける権利を出願前に承継人に移転、つまり売ったりあげたりしたときは、その承継人が特許出願しなければ第三者に対抗できません(特許法第34条第1項)。

したがって、承継を受けたら、すぐにでも特許出願するべきです。

特許を受ける権利が出願前に移転される場合としては、職務発明であって、勤務規定や契約に特許を受ける権利の事前承継が規定されている場合や、個人発明家が企業に発明を売った場合などが挙げられます。

特許を受ける権利を出願後に承継人に移転したときは、その承継人は、特許出願人の名義を自己の名義に変更する届出を特許庁長官にしなければいけません。
 
相続その他の一般承継の場合を除き(特許法第34条第5項)、特許庁長官に届出なければその効力を生じないので注意が必要です(特許法第34条第4項)。

チーたん
ぼくが発明を会社に承継させたら、ぼくには何の権利も残らないの?

ふっくん
特許出願時に「発明者の欄」に名前を記載してもらえる名誉権が残ります。

それから、外国に出願する権利も残ります。

使用者(会社)が日本で特許出願してしまってもチーたんは中国やアメリカで特許出願できるわけです。

ただし、契約書に、「特許を受ける権利(外国で特許を受ける権利も含む)は発明の完成と同時に使用者へ承継する」と記載されている可能性があるので注意してください。


チーたん
契約書には何も書いていないよ。

ふっくん
では、勝手に外国で出願することはできます。

ただ、後々会社と喧嘩になることを覚悟で行ってくださいね(^^;)

ちなみに、商標の場合は、商標登録を受ける権利ではなく、商標登録出願により生じた権利という表現になります。
詳しくは該当記事をご覧ください。