意匠法においても「補正」を行うことが出来ます。その補正は「要旨を変更するもの」であってはいけません。
ちょっと、失敗してしまってな。どうしたらエエんやろ。
そうです。なお、不利益行為ではないため、共同出願の場合は各人が単独で補正できます(準特14条)。
手続の補正
第六十条の二十四 意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続をした者は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。
客体的要件は、出願意匠の要旨を変更しない範囲で補正できます(意17条の2第1項)。要旨変更補正を認めると、補正の遡及効によって第三者に不測の不利益を与えるからです。
なお、願書又は図面に加えられる補正は、意匠の同一性が保たれる範囲であれば、要旨の変更ではないと解されます。第三者に不測の不利益を与えないからです。
不適法な補正の場合、登録査定謄本送達前に認定されれば、補正却下となります(意17条の2第1項)。登録後に認定されれば、出願時が手続補正書提出時に繰り下がります(意9条の2)。
補正可能な時期を徒過した補正は、弁明書提出機会を与えられた後に(準特18条の2第2項)、却下処分となります(準特18条の2第1項)。
原則として、願書の「意匠に係る物品」の欄の記載についてした補正が、願書の記載の要旨を変更するものであるか否かは、当該物品の区分を補正することによって、願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本を総合的に判断した場合に、出願当初の意匠の要旨を、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲を超えて変更するものであるか否か、又は出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものであるか否かによって判断します。
ここで、「意匠の要旨」とは、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、願書の記載及び願書に添付した図面等から直接的に導き出される具体的な意匠の内容をいいます。
この場合、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断しても、意匠法施行規則別表第一の下欄に掲げられた物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分のいずれかを当然に導き出すことができないときに、別表第一の下欄に掲げられた物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分のいずれかに訂正する補正は、出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものであることから、要旨を変更するものです。
ただし、商標名、何何式など固有名詞を付したものではあっても、それらの語を除いた記載部分が、別表第一の下欄に掲げられた物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分であるときに、商標名・固有名詞を削除する補正は、同一物品内において記載の様式を整えるものと認められ、要旨を変更するものではありません。
たとえば、出願当初、「○○式手編機」としていた物品の区分を「手編機」と訂正する補正は、要旨を変更するものではありません。
他にも教えて
先ほどと同じように、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断しても、別表第一の下欄に掲げられた物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分のいずれかを当然に導き出すことができないときに、別表第一の下欄に掲げられた物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分のいずれかに訂正する補正は、出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものであることから、要旨を変更するものでとなるのです。
なお、具体的な例として、出願当初、物品の区分を「照明器具」とし、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄に「本物品は、卓上で電気スタンドとして使用できる一方、キャンプ等屋外で手に持って使用することもできる照明器具である。」旨の記載があり、更に、当該物品が図面の記載を総合的に判断した場合に、懐中電灯の用途及び機能を有するものであることを当然に導き出すことができるときに、物品の区分を「懐中電灯」に訂正する補正は、要旨を変更するものではありません。
さらに別の例も挙げましょう。
出願当初、物品の区分を別表第一の上段に記載された「家具」としており、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断した場合に、物品の区分が別表第一の下段に記載された物品の区分である「いす」と当然に導き出すことができるときに、当該物品の区分「いす」に訂正する補正は、要旨を変更するものではありません。
構造又は作用効果を付したもの(例えば、「何何装置」、「何何方法」)や、
省略されたもの(例えば、「8ミリ」)、用途を明確に示していないもの(例えば、「ブロック」)、
組(別表第二によらないもの)、セット、一揃、ユニット(歯科用ユニットを除く)、
一対、一足などの語を用いたもの、
形状、模様又は色彩に関する名称を付したもの、
材質名を付したもの(例えば、「何何製」。ただし、普通名称化している場合は除く。)
などを、物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分とする補正は、「物品の区分」として不適切な表現となります。
さらに、外国文字を用いたものを、物品の区分又はそれと同程度の区分による物品の区分とする補正についてですが、願書の「意匠に係る物品」の欄がすべて外国文字で書かれているとき、又は日本語と外国文字が混在して記載されているときは、意匠法施行規則第28条で準用する特許法施行規則第2条第1項に違背するものとして、相当の期間を指定して、特許庁長官名による手続の補正が命じられます(意匠法第68条第2項で準用する特許法第17条第3項)。
たとえば、出願当初、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分を「机、いす、本棚」として、願書に添付した図面には「机」のみが表されているときに、物品の区分を「机」とする補正は、要旨を変更する?
そして、「意匠に係る物品の説明」の欄の記載についてした補正についても「意匠に係る物品」の欄の記載についての補正と同様に、願書の記載の要旨を変更するものであるか否かは、当該欄の記載を補正することによって、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断した場合に、出願当初の意匠の要旨を、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲を超えて変更するものであるか否か、又は出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものであるか否かによって判断します。
なお、「機能に基づいて変化する意匠」(動的意匠)についてですが、物品の形状などが変化する意匠である場合であって、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断しても、変化の前後にわたる具体的な形状などを当然に導き出すことができないときに、意匠の変化の前後の状態を表す図面等を補充する補正は、出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものであることから、要旨を変更するものとなります。
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