転職をするときに、「平均年収が高いからこの業界に行こう」「◯◯という仕事は平均年収が高いから◯◯になろう」とインターネットで得た情報を元に、深く考えもせずに転職先を決める人がいます。
これは非常に危険な行為です。
なぜなら、平均年収というものは、多少参考にするのは良いにせよ、漠然と見ているだけでは、あてにならないものだからです。
まず、基本的に年収というものは、経験や年齢によって変わってきます。
(未経験なら年齢が40代でも20代と同じ給与ということもあるでしょうが。)
平均年齢が高い企業なら平均年収も高くなります。
極端な話、50歳の人が20人と20歳の人10人がそれぞれ年収1000万円と200万円だったら平均年収は730万円となります。
このように、若手が少ない企業では平均年収が高くなります。したがって、20代も50代もごちゃ混ぜにしているデータを見ていては自分の望む情報を得られません。
また、たとえ年代別の平均年収がわかったところで、平均年収はポジションによっても変わってくるので「これだけの年収がもらえるのか!」と鵜呑みにすることはできません。
いくら「知財業界は平均年収が高い」からといって、平均的な特許事務員や特許翻訳者やサーチャーが弁理士ほど高い給与を貰えることはありません。
知財業界全体で見ると特許事務所経営・勤務の弁理士だけが平均年収を押し上げていると言えます。
平均の母数をどこに置くかによっても値が異なってきます。
同じ業界で同じような事業規模でも平均年収が大きく違う場合は、この母数の違いによるものです。
規模の小さな企業や事務所の場合は、トップの考え方一つで給与の支払額は変わってきます。従業員になるべく還元しようと考えているところは、同業種他社・他所に比べ、給与の支払額が高めです。
また、個人の能力によっても年収は大きく変わってきます。
たとえば、大企業の場合は、昇進試験に合格し順調にステップアップしていくジェネラリスト(個人のスキルを磨くというよりも、なんでもそつなくこなし、部下を上手くマネジメントできる人)ならば、若くても高い年収を得ることが出来ます。
一方、規模の小さい会社(法律事務所や特許事務所も)や外資系企業では、スペシャリストとして個人のスキルを磨くと年収に直結し易いといえます(ベンチャーだと逆にジェネラリストにならざるを得ないでしょう)。
ところで、「業界別平均年収」と言っても、全ての企業におけるデータが網羅されているわけではありません。非上場企業のデータは含まれていないことも多いでしょう。
したがって、「思ったより年収が低い」という事態に遭遇することもあるでしょう。
また、残業代込みなのか基本給だけなのかによっても平均年収は変わってきます。
さらに、大企業と中小企業では福利厚生の充実度も異なることなら単純に年収だけで比較はできません。
(福利厚生のことを考えると、見かけの年収は低くても事務所よりも大企業で働くほうが良いと言えるかもしれません。
ただ、弁護士や弁理士のような法務や特許のスペシャリストの場合、その仕事自体が面白く、管理など他の仕事をやりたくないという人もいるでしょう。
そんな人の場合は、法律事務所や特許事務所でひたすら自分のスキルを高めるという生き方も良いと思います。)
まとめ
以上見てきたように、平均年収というものは見せ方次第ではいくらでも応募者を騙すことが出来てしまう値ですから、素直に信じ込んでしまうのは危険です。
また、基本的に年収の高い仕事は仕事も激務になりがちです。
弁理士は非常に高給取りですが、その分仕事のストレスも多く、拘束時間の長さを考えると辛い仕事かもしれません。
給与は年俸制であることが多く、残業代も年俸込みとしているところもあり、際限なく仕事をし続ける可能性があります。
それに比べ、弁理士よりずっと給与は低いですが、特許事務員は基本的に定時退所ですから、ワーク・ライフ・バランスをとりたい女性には最高の仕事でしょう。
平均年収だけではその仕事が自分に向いているのかどうかわかりません。
平均年収を調べるのも良いのですが、仕事内容の面白さなどを考えて仕事を選んだほうが生き生きと働けるでしょう。
ご自身の性格や考え方等を総合的に考慮して、平均年収に惑わされることなく、間違いのない転職をしてください。
なお、知財業界に興味がある方は、弁理士、商標・意匠弁理士、特許技術者、サーチャー、特許翻訳者、特許事務員、知財部員がそれぞれどのような仕事なのかリンク先で説明しておりますので御覧ください。
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