最近は、上司にちょっと叱られたり同僚たちと上手くコミュニケーションをとれないだけで「ブラックだ!」と騒ぎ立てる人がいます。そのため、年配の人は「何をこの程度のことで・・・」と苦々しく思っていることも多いと思います。
しかし、実際に「ブラック」な企業・特許事務所も存在します。
ブラック企業・ブラック特許事務所に入ってしまうと、地獄を味わうことになります。そんな地獄に入らないためにも、事前にブラック企業・ブラック特許事務所を見分けなければいけません。
では、どのように見分ければ良いのでしょうか。
・・・と、その前に、ブラック企業・ブラック特許事務所に使われている形容詞「ブラック」についてですが、これは勿論法律用語などではありません。いわゆるネットスラングです。ですから、労働基準法などにその内容が明確に定義されているわけではありません。
発明とは何かについてなら特許法2条1項に定義されていますが、ブラック企業とは何かについては法律に定義されていないのです・・・。
とはいっても、厚生労働省が「労働基準関係法令違反に係る公表事案」と題していわゆるブラック企業を実名入りでリストアップしてくれています。
リンク先は平成29年度のものです。
これを見ると、どんな会社がどんなブラックぶりを発揮したのかよくわかります。
たとえば、最低賃金法第4条違反の例として「○○万円の支払いがなかった」というように会社名を公表されています。多い場合は1千万円の支払いがなかったとか・・・。
それから労働基準法32条違反「時間外労働」についても多いですね。
なお、ここに載っていなくても”ブラック”な企業、特許事務所は存在するので、載っていないからといって安心するのは早計です。
有給休暇の消化率などはブラックとホワイト特許事務所を線引きする有効な情報です。
ブラック特許事務所では、有給休暇はとりたくてもとれないので消化率は公表できません。
なお、基本的に、ブラックな企業・事務所には以下のような特徴があります。
[ブラックの特徴:基礎レジュメ]
・所長が顔採用した秘書を雇っている
・所長は弁理士で弁護士を雇っていないのにやけに訴訟の話をする。
・実力次第・実力主義などの言葉が使われている
・ノルマなし!など、ノルマという言葉が使われている
・経営者を崇めている。一種の宗教!?
・常に人材を募集しており、社員(所員)定着率が低い(のでいつも転職サイトで名前を見かける)
・ネットで検索してみると批判だらけ(でも事務所名はぼかされているから他人にはよくわからない)
・若くして幹部登用される人が多い
・男尊女卑。女性弁理士は男性特許技術者以下の扱い。
・SNSをやっている場合には、基本的に仕事(上で付き合いのある人たちや同業者)の話や最近読んだ本(漫画含む)の話しかしない。
さて、以下は、あなたが転職の意志を示したときにブラックな企業・特許事務所が取り得る措置の例です。
1.退職の意志を伝えても話を聞き入れない
あなたが意を決して退職の意志を上司や所長に伝えても「そうか。」の一言だけで話を進めてくれない可能性があります。あなたはあっさりと受け入れてくれたなと思って安心するかもしれませんが、何度話をしても話は平行線を辿るだけで退職させてくれないのです。
具体的に退職の日付などを言おうとすると話を遮って「君のような優秀な人がいてくれて助かっている」などと今まで聞いたこともないお世辞を使ってくることもあります。
本心ではないでしょうが、その一言だけで気持ちが落ち着いて我慢出来る人もいます。・・・が、数ヶ月後、「丸め込まれた」事に気づきます。
2. 給与や待遇の改善案を示す
企業や事務所によっては給料(年俸)を上げる提案をしてきたり、急に上司・所長の態度が良くなったりすることがあります。褒美で釣ることによって退職を思いとどまらせようとするのです。
この提案が本当に守られるのなら転職を思いとどまっても良いでしょうが、お情け程度にほんのわずかしかあがらない可能性もあります。年俸700万円が705万円とか・・・。
3.人格を否定してくる
退職の意志を何度も伝えると上司や所長はキレる可能性もあります。
「そのような中途半端な明細書しかかけないくせに他でやっていけると思うのか。」「育ててやった恩を忘れやがって何様のつもりだ」「逃げ出すようなやつは転職先でも成功しない」とあなたの人格を否定するような暴言を吐き、精神的に追い詰めます。
しかし、よく考えると論理が破綻していますよね。「他でやっていけない」ような人材なら、さっさと出ていってもらったほうがいいはずです。
それなのに引き止めるということは、あなたがいないと困るということなのです。
4.法的処置に出ると脅す
「退職できるのは退職の意思表示をしてから6月後だ。すぐに辞めるというのなら契約違反になる」「今やめられると顧客に迷惑がかかる。君に損害賠償請求をすることになるだろう」
といったように法律をちらつかせてあなたを引き留めようとしてくることもあります。
しかし、民法では、退職すると伝えてから2週間経てば退職できることになっています。
民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。
したがって「退職するためには6ヵ月以上余裕を持って申し出ないといけない」という規則は、そもそも無効ですので従う必要はありません。
憲法18条では「奴隷的拘束の禁止」を、憲法22条では「職業選択の自由」を認められているため、退職の意思を伝えて2週間が経過すれば問題なく辞めることができるのです。(余談ですが、過酷な労働環境にある法律事務所では、弁護士も憲法を忘れてしまっているところがあるようですね・・・)
さて、あなたが退職の意志を伝えたときにブラック企業・事務所のとり得る措置を述べてきましたが、これに対しあなたのとり得る措置・・・というか、とるべきでない措置を挙げてみたいと思います。
1.退職すべきかどうかを会社・事務所の人に相談しない
家族に退職すべきかどうかを相談するのは良いのですが、上司や所長に相談するのはやめましょう。悪い印象を持たれてしまうだけです。
特に、一度退職の意志を示してしまうと、「忠誠心の低いやつ」というレッテルが貼られ、そこに居づらくなってしまいます。すると、自らの意志で退職するはずが、追い出されるように転職する羽目になってしまいます。
2.退職撤回はしない
一度退職すると決めて、その意志を表示した後は、あなたに対する上司や所長の態度が変わってしまいますので、関係が改善しない限り、情に流されて退職の意志を撤回してはいけません。
精神的に、より苦しい思いをすることになるからです。
3.内定辞退をしない
既に転職活動をして転職先も決まったのなら内定辞退をしてはいけません。
転職先に多大な迷惑をかけることになってしまうからです。
ここまで話が進んでいるのなら、今の職場も覚悟が出来ているでしょうし、あとは心機一転新しい場所での仕事に取り組むだけです。
ブラックな企業や特許事務所に勤務されている方は、鬱になったり体を壊す前に、転職してしまったほうが良いでしょう。勤務先の都合よりも自分を優先すべきです。それは、日本国憲法によって人間として当然に認められた権利なのです。
なお、残業代の支払いが滞っている場合には、転職後において「未払いの残業代」等を請求しておくと良いでしょう。
残業代込みの年俸をもらっている場合は不可能では?と躊躇してしまうかもしれませんが、残業代込みとして提示できる金額にも限度というものがあります。
詳しくは知人の弁護士さんに相談されてはどうでしょうか。
「知人だと余計相談しにくい・・・」という方には弁護士をご紹介いたしますので、ご面倒ですがお問い合わせよりご連絡ください。
また、特許事務所へ転職する場合にはこのブログに書かれていない情報も色々お伝え出来ますのでご相談ください。