昔は、俳優やアイドルが車やビールのアピールをしているテレビ広告をよく見かけました。
最近では、「そもそもその俳優はその車に乗っていないじゃん」という冷めた目で見る消費者が増えたためにこういう広告は減ってきました。

そして、最近は企業が採用マーケティングの一環としてSNS(Youtube,Facebook,Twitter等)等を利用して情報発信をすることが増えました。

それを見て企業に魅力を感じる人も多いと思いますが、転職の際には本質的なところを間違えないようにしてください。

 

すなわち、採用ブランディングというものは、”自社を魅力的に見せる”ことを最重視しているために、「内よりも外面が魅力的」、すなわち外から見ると魅力的には見えるけど働きやすさやスキルアップについては二の次であることも多いということです。不利なことはあえて触れないからです。

誰もが憧れる魅力的な企業であるならわざわざ(炎上リスクのある)SNSをする必要なんてありません。
むしろ、ブランド力のある優良企業だったら情報に踊らされる情報弱者には来てほしくないので過度に情報発信はしないでしょう。

 

企業の採用でよく聞く望ましい採用方法は、特にアピールなんてしていないのに(そもそもSNSは一般消費者向けにしか運用していない)、応募者が隅々までホームページを読み込んだだけでなくその他の公開情報にも触れ、場合によってはその企業出身者と話をし、見極めた上で応募してくれるという採用方法です。

規模に関係なく、いえ、小さい企業でも隠れ優良企業はたくさんあるので、そんなところを見極めて応募する人は調査能力にも優れているといえます。

 

もちろん情報発信が全くのゼロ(ホームページすら無い)では情報入手が困難なので論外ですが、過度に露出している場合には注意が必要です。

 

そして、調べもしないでイメージだけでそんな企業に入社してしまうと、とんでもない失敗をすることになります。

特許事務所でも似たようなことは言えるでしょう。

たとえば、あなたが知財業界未経験者だとします。未経験者なら、適切かつ高いスキルを身につけられる企業や特許事務所へ行きたいと思うでしょう。
そして、そのためには教育担当となる人の能力が高く、教える技術も高い必要があります。

 

では、どうすればその能力の高低を判断できるでしょうか。

企業だったら上司となる人と何度も面接で話し合うくらいしか方法が無いかもしれません。

 

でも、もし特許事務所だったら、教育担当者となる人の明細書をいくつか読めばわかります。

でもあなたが未経験者だったらそもそも明細書の良し悪しがわからない可能性もあります。

 

そんなときは、大企業の知財部員に明細書を見てもらうと良いでしょう。
彼らは特許事務所を選定する立場におり、明細書を見る目に長けています。

そして質の低い明細書を書く弁理士はすぐに切り捨て、質の高い明細書を書く弁理士に鞍替えします。

 

でも、身近に大企業知財部員がいない。いたとしても一人だけだから信憑性に欠ける・・・

そんな場合でもご安心ください。

 

大企業をクライアントに持つ特許事務所なら質が高いことが多いといえます。
もちろん、大企業のノルマ出願を大量に任されている特許事務所もあります。
そうではなくて、大企業の重要案件を任されている特許事務所に転職すれば良いのです。

 

間違っても特許事務所の規模(在籍スタッフ数)で選んではいけません。

ノルマ出願を請け負う特許事務所で最初の数年間を過ごすと悪い癖がついて抜けなくなります。
それでは3年後に転職しようと思っても同様に大企業のノルマ出願をこなす特許事務所にしか転職できなくなる虞れがあります。

 

大企業知財部員は明細書を見る目が厳しいので半端な明細書では重要案件を任せてもらえません。

特許が会社に何百億、何千億というインパクトを与えることに繋がるのですから大企業が特許事務所を厳しく選定するのは当然です。

(そして、選定基準は明細書の質だけなので、書いている人の資格の有無にはこだわりません。弁理士ではなくエンジニアを指名してくることもよくあります。無資格者は代理人には慣れませんが明細書作成補助は出来るのでこういうことになっています)

 

調べるのは手間がかかりますが調べるだけの価値があります。
少なくとも私は何十時間もかけて調べたことがあります。
それで判明したのは、大企業案件をやっているからといって良い特許事務所とは限らず小さな事務所で大企業以外の明細書を書いていても良い事務所は存在するので判断は非常に難しいということでしたが・・・。
特許事務所の良し悪しを判断するのは本当に難しいのですが、少なくとも企業や特許事務所側からのアピールだけを見てその企業や特許事務所の良し悪しを判断するのでは本質を見誤ることになるということは言えるでしょう。

企業や特許事務所がアピールしないことを見るのです。隠していることを見極めるのです。

 

優良企業や優良特許事務所には特に採用マーケティングと言われるSNS運用等をしなくても高いスキルを得られることを期待している頭の良い人が集まってきます。

 

あなたは「情報に踊らされる人」ではなく「自分で情報をつかみに行く人」にならなくてはいけません。

 

情報は公開されているのです。
調べるのに手間がかかるだけです。

 

しかし、自分自身の将来のためならばそれくらいの労力を惜しむべきではありません。
自分のことなのに転職に割く労力を手抜きして転職エージェントや広告、自己アピールを信じて転職に大失敗する人がたくさんいます。

あなたは企業や特許事務所のアピール(良い面)だけを見せられるのではなく、自分から背後に回り込んで企業や特許事務所の背中を見るようにして下さい。
実はハリボテだったと気づくことも多いでしょう。

 

転職を急がないのならば、ぜひ時間をかけて公開情報から本当の情報を得て下さい。

もし急ぐのでしたら私が時間をかけて調べたことを情報提供いたします。

 

もちろん、全てが百点満点の企業や特許事務所なんて存在しません。スキルは高いけれど教える技術が低い、労働時間が長過ぎるブラック、人柄は良いけれどスキルは二流というような企業や特許事務所のほうが多いでしょう。

なので、自分が何を重視するのかをリストアップして、優先順位をつけると良いでしょう。

「スキルアップできるのならば多少の厳しさは構わない」、「いくら上司の能力が高くても毎回怒鳴られるのでは気が滅入る。人間的に普通の人のところで働きたい」「弁理士資格はあるけれど、実は弁護士的な仕事に興味がある」「知財コンサルをやってみたいけどどうせやるなら口先でクライアントを騙すんじゃなくて本物になりたい」

などなどたくさんリストアップしてみてください。

 

相談相手が欲しい場合にはいつでもご相談ください。

追記:やはり、情報発信をして良く見せかけている事務所は危険なことが多いようです。ご相談いただく方の在籍事務所名を見たら素晴らしい(と思っていた)事務所であることが頻繁にあります。所長がパワハラしてくる事務所の特徴はいくつかあります。ここではあまり詳しく挙げられませんが、キラキラ見せかけているところには注意してください。