既に知財業界で活躍していらっしゃる方、知財業界に興味を持たれた未経験の方が知財業界で転職を考えたときにまず最初にすべきことをまとめました。手抜きで運任せな転職をして人生を台無しにしないためにもぜひ熟読されてください。
特に「3.会社(特許事務所)の選定」は必読です。
一般企業とは異なり、小さい特許事務所よりも大きい特許事務所が良いというわけではないということはしっかりと頭に入れてから転職活動を行ってください。弁理士になら容易にわかることですが、特許業界未経験の方は、ついつい一般企業と同じように考えがちです。

 

目標を設定する

まずは思いつくままに抽象的で良いので目標を書きます。
(今は大企業勤務だけど将来も安定というわけではないよな。社内政治に明け暮れるような毎日じゃなくて自分のスキルを高めることに時間を費やしたい。弁理士になるぞ!しかも一流の!)

それから具体的に目標を設定します。
・時期(今年中に転職するか?)
・地域(単身だから都内に限らず地方でもいいかも)
・譲れないもの(配偶者の仕事のこともあるから都内限定)(現在の年収が700万。転職先では年収700万はほしい)(上長になる人との人間関係が悪かったら教育してもらえないから相性の合う人と働きたい)
・妥協できること(大学での専攻は機械だけど、技術分野は違ってもいい)
・その他希望(弁理士試験の勉強をしたいから残業少なめのところがいい)

2.自分の強みの炙り出し

あなたの得意なことが入社希望の会社・特許事務所に合致しているかどうかで採用されるかどうかは変わります。
また、自分自身の満足度も異なります。

たとえば、どんなに英語が得意な人でも外国案件の無い会社・特許事務所では宝の持ち腐れです。
自分の強みを活かせてこそ楽しく仕事ができます。
入所後にがっかりしないように入所前によく考えましょう。

3.会社(特許事務所)の選定

自分が入りたい企業や特許事務所をピックアップします。
この際、転職エージェントに丸投げすることは絶対に避けてください。
ブラック企業に押し込められる危険性が非常に高いからです。

自分でも積極的に情報を取りにいきましょう。

 

なぜ転職エージェントに丸投げすることは危険なのか

転職エージェントのビジネスモデルは人を紹介することによりその人の年収の30パーセントを紹介先から受け取るというものです。あなたの年収が600万だった場合には転職エージェントは180万円を得ることが出来ます。
この高額過ぎる報酬のために「転職エージェントによるブラックへの押し込め」が起き易くなるのです。

これは実話なのですが、ある弁理士が転職エージェントによって所員定着率の低いブラックをお勧めされ、そこに入所を決めました。所長のパワハラが原因で所員定着率が非常に低い特許事務所なのですが転職エージェントはそれを彼に伝えずに「良いところですよ」と嘘をついて押し込めました。
それにより、彼は壮絶ないじめを受けました。具体的なことを書くと特定されてしまうので書きませんが、有名大学院を卒業し立派な企業で勤務経験のある弁理士がゴミのような扱いを受けたのです。
弁理士だけでなく、特許事務や特許技術者でも同様のことが起きています。お局様から毎日いじめられる特許事務、パワハラを受ける特許技術者・・・。転職エージェントによって食い物にされた転職者はたくさんいます。

「転職エージェントも仕事だから仕方ない。」「転職エージェントじゃなくて社長が悪いんだ。」
そうですね。転職エージェント個人に極悪人はいないでしょう。

悪いのはビジネスモデルです。これは人材業界全体で問題視していることでもあります。

もちろん良いエージェントも存在します。

良い転職エージェントの特徴としては以下が挙げられます。

・入社(入所)する上での懸念点も正直に教えてくれる(実は定着率が悪く、過去3年間で5人辞めた等)
・単純に「いい」「悪い」ではなくその理由を説明してくれる。
・年収の高さや従業員数、オフィスの綺麗さで勧めない
・入社(入所)前に言っていたことと齟齬が生じた場合(「良い」事務所だと言っていたのに「転職エージェントにとって都合の良い」事務所だった。たとえば教育制度が整っていない等)に責任を取ると約束してくれる(書面でそれを示してくれる)
・効果的な職務経歴書を書いてくれる

・転職しようかどうか悩んでいるときに転職ありきで考えるのではなく、転職したときのデメリットを示し、転職しない方が良いと止めてくれる(一円もお金を受け取れないのにこういうアドバイスをしてくれる転職エージェントは信頼できます

 

転職エージェントを使わない特許事務所に優良な転職先が眠っていることはよくあります。
こうした特許事務所について調べるのは非常に大変です。基本的に特許業務は陰で企業活動を支える仕事なので目立たないからです。また、所長や所属弁理士が他と変わった珍しいことをしているわけではありませんしホームページはどこも同じようにしか見えませんしウェブ上で漫然と情報検索しても的確な情報は出てこないからです。
しかし、自分が働くところなのですから時間をかけてじっくりと調べましょう。もちろんウェブ情報を鵜呑みにしてはいけません(公開公報を除く)。

注意したいのは、一番最初に述べたように、「大きい事務所が良い事務所というわけではない」ということです。
これは一般社会とは大きく異なる知財業界の特殊性が原因です。

知財業界で働いたことがある人ならわかっていることですが、特許業界未経験者の場合はついつい大きな特許事務所(従業員100人以上)を選びがちです。
盲目的に大きな事務所を選択することは未来の可能性を狭めることでもあるので十分に注意してください。(良い転職エージェントはこのあたりのこともしっかりと説明してくれるはずです)

 

4.履歴書送付前に注意すべきこと

転職希望先が決まったら早速履歴書の送付です。
でも、あなたが新卒でない限り職務経歴書の作成は必須です。
そして、職務経歴書は自己アピール以上に重要です。
職務経歴書をあっさりと1時間程度で作ってしまう人もいます。
しかし、そんなに簡単に作れるものではありません。ターゲットに訴求する職務経歴書を作成するには少なくとも3時間はかかります。
手抜きの職務経歴書で受かるのは、あなたが余程ハイパフォーマーである場合か転職先が魅力的でない企業・特許事務所である場合だけです。
また、どこに応募するのでも同じ職務経歴書というわけにはいきません。ターゲットの心を動かす職務経歴書を作成しましょう。
とはいっても、職務経歴書の作成は大変です。また、ターゲットの気持ちがわからなくては書けません。

 

まとめ

自分の職業人生をより良くしたいのなら、まずは自分で目標設定をすべきです。
何のために転職するのか。ただ逃げたいだけではないのか。転職以外の手段はないのか。
様々な可能性を考えて転職すべきだと決めたら自分の強みを活かせる企業(特許事務所)の選定を始めます。

この際、非常に時間がかかることから途中で嫌になってしまうかもしれません。すると、直感に頼るといった危険な選定法を選ぶ虞れがあります。
データを出し論理的に選定し、一緒に働く人の人間性などは面談で見極めましょう。(面談では取り繕うことが可能なので、できれば他企業・他事務所の人に聞いてみると良い。特に共に創業した経営者が別れ別れになっている場合には公開公報を見て理由を推測する。この場合、本人の言い分を鵜呑みにしない。)
これだけ時間をかければ失敗を極力減らした転職ができます。

もし途中でしんどくなったらいつでもご相談ください。
あなたが幸せな転職をできるように力添えをいたします。