通常、知財部に転職する者の多くは20代〜30代前半です。
しかし、中には30代後半以降に転職して管理職のポストに就きたいと考える人もいます。
管理職のポストは一般知財部員と比べ限られていることから、簡単には転職して知財部の管理職(IPマネージャー)となることはできません。
そこで、知財部管理職の求人へ応募して転職に成功する方法を見ていきましょう。
なぜ知財部管理職の求人が出るのか
管理職となる人材は、通常は社内の人間です。わざわざ外部から人を雇うということは稀でしょう。
しかし、たまに知財部管理職のポストの求人があります。
この理由は、たとえば、現在の管理職が何らかの理由により退職するため、突然ポストに空きが出てしまったということもあるでしょう。
また、急成長して規模が大きくなった会社なのに知財部は小さいままで、知財部の人員が足りておらずその補強のために外部から、既に知財部で管理職経験のある人材を雇うことによって、知財部全体を強化したいと経営者が考える場合もあるでしょう。
他にも様々な理由が考えられます。
いずれにせよ、知財部管理職のポストが求人に出ることは知財部一般職の求人よりもずっと稀なことなのです。
どれだけの人が管理職になれるのか
当然ですが、一人の人間が複数の人間をまとめ上げるため、管理職の数は一般社員の数より少なくなります。
また、主任や係長といった肩書よりも、知財部長の方が階級が上なので、ポストに就くのはより難しくなります。
いくら年功序列だからといって、年齢が上がったから(年をとったから)管理職になれるわけではありません。
管理職になれなかった人は、一般知財部員としての仕事を続けることになります。
なお、管理職の責任は重いことから、あえて管理職に就くのを拒む人もいます。
昔風の考え方だと、管理職になる=出世と捉えて昇進を喜ぶものですが、最近は会社に命を捧げる人よりも、自分や家族との時間を重視する人が増えたことから、最初から昇進を望まない人も多くいます。
そして、そんな人はジェネラリストではなくスペシャリストとして優れた実績をあげていることも少なくないので、会社としては重要な人材です。
(大きな企業の知財部で働く人ほど一度は直面する壁でしょう。)
知財部管理職の求人に応募する条件
管理職のポストは限られたものであることから、誰もが求人に応募出来るわけではありません。
その一つが、現在の会社での管理職経験です。
すなわち、管理職の経験が無い限り、他社の知財部管理職のポストに就くことなどできないのです。
これはちょっと想像してみるだけでも容易に理解できるでしょう。
ある日突然上司が現れた。
その人は管理職の経験なんて持っていない。
明細書の作成などについてはうるさく文句をつけてくる。
こんな人が上司になって社員の士気が上がるでしょうか。
会社としても社内の人間を管理職に抜擢したいと考えるのが通常です。
したがって、現在の会社で管理職経験のない人には、他社の知財部管理職のポストへ応募することはできないのです(応募自体はできますが、書類選考には通過しません)。
知財部管理職の年収
大手企業の知財部長ともなると年収は1300万〜1500万円となります。
しかし、中堅企業の管理職だと大手企業に比べ年収は低めになります。
ここで注意しておきたいのが福利厚生です。
大企業はどこも福利厚生が充実しているのですが、住宅手当については会社によって負担割合がかなり異なることがあります。
たとえば、家賃が管理職になるくらいの年齢になると家族も増えることから、ある程度大きな家に住むことが多いでしょう。すると家賃は都心だと15万円程度にはなってしまうでしょう。
この家賃を会社に負担してもらう場合ですが、会社が9割補助してくれるなら、自己負担は1.5万円で済みます。
しかし、会社の補助が1割の場合は、自己負担は13.5万円です。
これはかなり痛い出費です。年間で100万円以上の差が出てしまいます。
これでは、年収を100万円下げてでも福利厚生の充実した会社に転職したほうが良いことになります。
したがって、転職時には福利厚生をよく考えてください。
それから、地域や在宅勤務がどの程度認められるかというのも気になるところです。
管理職の転職と転勤
管理職ともなると、転勤についてはどうしても受け入れなくてはいけない問題です。
年老いた両親がいる、共働きの妻がいる、受験を控えた子供がいる、そんな状況では、転勤については家族の理解をなかなか得られないこともあるでしょう。
家族の主張はもっともです。
ですから、管理職に就くのを諦めるか、単身赴任するか、家族を説得するか・・・非常に悩むところではあります。
これは家族持ちの人にとっては深刻な問題です。
しかし、会社からしてみれば、転勤命令に従わない人は使いにくく、雇いたくないのです。
ですから、管理職に就くと決めたなら、日本中どこにでも、いえ、海外へでも転勤する覚悟を決めなくてはいけません。
そうでなくては、管理職のポストには他の身軽な人が就いてしまいます。
場合によっては管理職となるのを諦めて、特許事務所で弁理士として働くというのも良いでしょう。
管理職とは違ってスペシャリストとしてひたすら己のスキルを磨き上げていく仕事ですが、年収は高いですし、経験を積んだら独立開業して一国一城の主となることもできます。
(すると、管理職ではなく、経営者、すなわち組織のトップになります)
”優秀”な管理職とは
履歴書や職務経歴書、面接において自己の優秀さをアピールするときに、過去のプレイヤーとしての実績を示したいと考える人もいるでしょう。
しかし、管理職としての優秀さは、プレーヤーとしての優秀さとは異なります。
すなわち、優秀な管理職とは、知財部員を自分と同じくらいスキルが高い人たちに育て上げることが出来たり、知財部員たちが十分に能力を発揮できるように支えてあげることが出来る人のことをいいます。
優れた明細書を量産することができるというスキルを持っているならば、スペシャリストとして特許事務所で働いた方が能力的にも給与的にも良いでしょう。
まとめ
・知財部管理職やIPマネージャーの求人に応募出来るのは管理職経験のある人だけなので、管理職の経験がない場合は、まず、現在の職場で管理職に就く。
・管理職の求人自体は少ないが情報収集は容易⇒我々が知っているから!
管理職に限らず知財業界で転職したいという方には、我々弁理士や企業知財部員が転職相談に乗ることが出来ますのでお問い合わせください。大手企業在職の人ばかりですが、中小企業へ転職された方々とのコネクションもあります。