求人情報を見ていると、「○年以上の実務経験」というように、実務経験を必須としたり優遇している特許事務所があります。
そのため、「実務経験さえあれば・・・」と落ち込む未経験者は多いと思います。
ただし、20代の若い人の場合は対して落ち込む必要はないでしょう。
それより問題なのは30代以上の未経験者です。

30代前半までなら未経験でもどうにかなりますが、35歳を超えると未経験での転職は難しくなってきます。
そのため、「実務を学べば良いのではないか」と考えることがあります。

しかし、実務を学ぶことは出来ません。

いえ、実務(明細書作成)を教えてくれる講座は存在します。
しかし、転職の役に経つことは無いようです。
そのため、実務を学ぶことは出来ないと表現しました。

過去に多くの転職希望者とお話してきましたが、特許事務所や企業知財に就職して知財実務を学ぶのではなく、就職せずに知財実務講座にお金を払って「学んだ」人は、その知識を就職に活かせた人は存在しません。
唯一の例外としては、知財実務を教えてくれた弁理士と関係のある特許事務所に就職できたというくらいです。

それだけ、「お金を払って座学で実務を学ぶ」ことに対して価値を感じてくれる特許事務所は存在しないのです。
なぜなのでしょうか。

それは、仕事というものはOJTであると考える企業や特許事務所が多いからだと考えられます。
こちらがお金を払ういわば「お客様」である場合にはそれはもう優しく教えてもらえます。

一方、こちらがお金をもらう立場である場合には、本気で教えてもらえます(教育者がアレな例外も存在しますがそれはまた別の話です)。
そして、何よりその特許事務所のクライアントに喜ばれる明細書を書けるようになります。

こちらがお金を払う立場の場合には、汎用的なことしか教えてもらえません。
そして、教える先生の質が高いとは言い切れません。
むしろ、その先生の所属事務所にしか有難がられない質であることのほうが多いでしょう。

というわけで、座学で知財実務を学んでも企業知財や特許事務所への転職時には役に立たないというのが結論です。

知財実務の講義をしている先生方にはとても失礼なことを書いてしまい申し訳ありません。
しかし、こんなことを書く理由があるのです。

過去にとても悲しい経験をした弁理士がいらっしゃいます。
その方は、高額な授業料を支払って何度も知財実務の講義を受けました。
結果として得たものは、修了証だけで、失ったものは時間とお金です。

そして、企業知財へも特許事務所へも転職できず、弁理士登録を抹消して別業界へ転職されました。
高額の授業料の支払いも長い勉強時間も全ては就職のために費やしています。
そもそも弁理士試験に合格するまでにお金も時間もかけています。
合格後も転職できない。夢だけ見させられたわけです。
あまりにも辛い現実にかける言葉が見つかりませんでした。

「自分自身のために学ぶ」のならば座学の知財実務にお金を払うことに問題はありません。
でも「転職の役に立つかもしれない」とお考えならば、止めたほうが良いです。
悲しい現実が待っている可能性が高いです。