知的財産権の代表格というと特許権ですが、それに負けず劣らず強力な権利が商標権です。

特許権を保有している会社はもちろんのこと、特許権のない会社でもブランディングを進めることにより、事業の優位性を得ることができます。

ブランディング戦略は、特許戦略と比べ、卑近ですので技術の苦手な人でも取り組みやすい戦略です。

チーたん
ブランドって家畜に押す焼印のことだって聞いたことがあるけど、所有者を表示するのが元の意味なの?
ふっくん
そうですね。商標の最も基本的な機能は”出所表示機能”です。

誰が作ったかわかると安心しますよね。
商標のなかでも顧客を惹きつける力(Goodwill)が特に強いものをブランドと呼びます。

ふっくん
ブランドは、例えばパナソニックという会社名であったりカリスマ社長の名前であったり、いろいろな形で現われますが商標権として保護される記号であることが多いといえます。

そして知的財産権のなかではブランドのみがその顧客吸引力を利用してライセンスをできます。

ふっくん
たとえば「アップル」のついたパソコン関連商品は人々がほしがりますが、「みかん」のついたパソコンは誰もほしがりません。「パソコン」について「みかん」に顧客吸引力はないからですね。
あいぴー
うちの会社にはブランドなんてないで
ふっくん
どんな商品も商標を持っているので(登録されているかどうかは別の話)ブランドがあるといえます。

そこに高い価値があるか価値がないのかの違いはありますがね

チーたん
ブランドって聞くと高級品というイメージがわくよ
ふっくん
必ずしも高級品である必要はありません。

ユニクロというコーポレートブランドだって、ヒートテックという商品のブランドだってれっきとしたブランドですよ

チーたん
吉野家と聞くと、早い・安い・旨いというイメージが沸くけど
ふっくん
そうそう、それがブランドです。

吉野家では、”あの店にいけば常に早く安く旨いものが食べられる”という消費者の信頼を築いています。

あいぴー
うちの会社でもブランディングできるんかな? 
・・・でも、もしお金がかかるならやめとくわ
チーたん
そうだよね。研究開発費にお金を回してほしいよ
ふっくん
ブランディングにはお金はかかりませんよ。研究開発費の10分の1もかからないでしょう。

お金をかけようと思えばかけられますが、宣伝広告などに頼らないブランディングの方が息が長いですよ。

もちろん宣伝広告が重要なブランディングというものもありますがここではその話はやめておきます。

チーたん
じゃあ、やってみよかな。
ふっくん
たとえ今は下請けをしていても、自社ブランド製品を持てば、下請けでいる必要がなくなりますよ。

自社製品を扱いたいという人が寄ってきますから、経営が楽になります。

あいぴー
まずは何からしたらエエ?
ふっくん
ブランドを育てるには、まずは商標権を取ることが大事です。
会社の名前も主力商品も商標権を取得しましょう。

国内で有名になっているのなら、海外でも権利化を図りましょう。

大事なブランドはまず知的財産権で守る。基礎中の基礎ですよ。

ふっくん
もちろん大前提として、先行商標調査をすることも忘れないでくださいね。

無駄なトラブルに巻き込まれてしまいますから。

チーたん
商標権さえ取ればうちの会社も一人前だね!
ふっくん
ブランドは商標登録出願したから築かれるものではありません。

特許権と違って、商標権が成立した時点ではほとんど価値がありません。実際に使って価値を高めたからこそ、高額でライセンス出来るのです。

商標権の取得は最も重要かつ基礎ですが、それだけではダメなんです。

ふっくん
商標登録は法的に保護を受けるために必要なものです。

商標法が守るのは、ブランドが持つ目に見えない”信頼”という財産です。


ふっくん
そして、この”信頼”を築くには、同じく目に見えない知的な資産である特許権や意匠権等も深く関わってきます。

例えば、”うちの会社は技術が優れている”とか”うちの製品はデザインがかっこいい”といったことはブランドにつながります。

ですから、ブランディングについて考えるときには商標以外の知的財産権についても同時に考えるべきでしょう。

チーたん
AIPブレンドだね!
ふっくん
そうです。チーたんは知財の基礎が出来ているので話がスムーズです。
チーたん
えへへ(*^ω^*)
ふっくん
さて、ブランドを築くには、実際に商標を指定商品・サービスに長い間使用していかなければいけません。

これは、数ヶ月や一年といった単位ではなく、10年20年といった単位で考えてください

チーたん
えー?!ぼく、おばあちゃんになっちゃうよ!
ふっくん
ブランドは人間よりも長生きできますからね。理論的には更新登録さえ繰り返せば、半永久的に存続します。
ふっくん
ブランディングをしようと思ったら、そのブランドと共に生き、ブランドが死んだら共に死ぬくらいの気持ちで大切に育ててください。
あいぴー
・・・覚悟決めたるわっ。うちの会社やもん
チーたん
珍しくあいぴーが燃えてる!

ふっくん
ブランドは長く使えば使うほど価値が高まります。
大切に育ててくださいね。

ふっくん
さて、基礎を述べたので、次は、商品の価値について説明いたしましょう。
下の図に示したように、商品の価値は、基本的価値・機能価値・五感価値・イメージ価値の4つから成り立っています。

ふっくん
商品本来の機能が基本的価値です。

それをより便利に工夫したもの、またはより楽しくしたものが機能価値。

五感価値は、視覚で魅了したり、聴覚に訴えるCMのメロディ、味覚に訴える美味しさ、触感に訴えるなめらかな手触り、嗅覚に訴える良い香り、などがあげられます。

4つ目のイメージ価値は、その商品の名前を聞いたときに消費者の心の中に浮かぶイメージに基づくものです。有名なものでな

いと、何も連想されないか、言葉から受ける印象だけになります

チーたん
グッチと聞くとセレブをイメージしてしまうよ。

あいぴー
クレープと聞くと原宿をイメージするな。

チーたん
何か話がずれてない?(^^;)

ふっくん
それも一種のブランドです。地名と商品が結びついていますからね。ものによっては地域団体商標を取ることもできますし。
ふっくん
さて、商品価値に話を戻しますが、基本的価値は当たり前すぎるから消費者に意識されることはほとんどありません。

機能価値も、便利さや楽しさが当たり前になると意識しなくなります。

そこで、商品やサービスを比べるときには五感価値やイメージ価値を重視するようになります。

同じような商品が二つ並んでいたら、よりデザインが優れている方、手触りが良い方を選ぶでしょう?

消費者が商品名を見たり聞いたりしたときに、いろいろな連想が浮かんでくれば、イメージ価値が確立しているということになります。

 

ふっくん
ブランド商品とは、基本的価値、機能価値はもちろんのこと、それに優れた品質やサービスを付加し、優れた宣伝活動や長期間の使用により消費者の五感価値を高め、良いイメージを創り上げることで実現したものといえますね。

ふっくん
ブランドが育ったら、いよいよライセンスです。

自社の製品の名前を貸すだけで、自分は製造もデザインもしていないのにライセンス料が入ってくるのです。まさに不労所得ですね。

でも、注意しなくてはいけないのが、”何にでもライセンスしすぎてブランドを汚さない”ということです。


ふっくん
これは、有名ブランドですら過去に失敗しているので、その失敗に学びましょう。

例えば、ハーレーダビッドソンは、過去にバイクに関係のない日用品にまでブランドをつけて売っていました。サンローランも、何でもかんでもブランドをつけて売っていました。それにより、消費者に一貫したイメージが伝わらなくなり、ブランドイメージが傷ついてしまいました。グッチも同じような失敗をしています。

しかし、途中でその間違いに気づき、コアブランドに集中したために毀損を防げました。

チーたん
そうしたくなる気持ちわかるなあ。
自社で製品を作らなくても収入が入ってくるんだから。

チーたん
でも、どこまでは広げて大丈夫か。どこまでやるとやりすぎか、その線引きが難しいよね。失敗してからでないと気づけないかも。

”低価格高品質”で一致していても、ユニクロで野菜売っているのを見ると”なんか違う”と思っちゃう。

でもその”なんか違う”がなんなのかはうまく説明できないよ

ふっくん
欲をだして手を広げすぎるべきではありませんね。

特に高級ブランドは日用品に使われてしまったら希少性が薄まってしまいますから。

まだブランドが確立していないうちは、手を広げたい気持ちをぐっと抑えて、コア商品に集中しましょう。

あいぴー
ブランドを使いたいという人がいるなら貸してしまいたいけどな。使ってもらえれば有名になるし、お金ももらえるし。

ふっくん
コーポレートブランド(会社の名前)は会社の命です。

下手に使われて汚されてしまうと会社の存続にもかかわるので、ライセンスするときには細心の注意を払ってください。


ふっくん
確かにたくさんのライセンシー(商標のライセンスを受ける人)にブランドを使ってもらった方が認知度が上がるので早期にブランドが確立されるともいえます。

しかし、「知る人ぞ知る」ブランドになるのもまたいいことなんですよ。

お金のかかる広告宣伝をしないで、限定販売で希少性を増すことができます。

ロイヤルカスタマー(ブランドへの忠誠心が高い人。そのブランドのファン)がクチコミで商品の良さを広めてくれるので、宣伝広告費がかかりません。

一般の人が知らない方が、ロイヤルカスタマーの「私だけしか知らない」という気持ちをくすぐることができますしね。

チーたん
なるほどな~
ふっくん
他にもまだまだ話足りませんが、とりあえず今回は基礎ということでここで終わりにしておきましょう。
あいぴー
今回の話はおもろかったわ。こういう話ならいつでも聞くで
チーたん
あいぴーは、技術の話になるとホント興味なさそうにしているよね(笑)
ふっくん
あいぴーらしくていいですよ(笑)
「らしさ」はブランドの重要な概念ですよ。