知的財産権の代表格というと特許権ですが、それに負けず劣らず強力な権利が商標権です。
特許権を保有している会社はもちろんのこと、特許権のない会社でもブランディングを進めることにより、事業の優位性を得ることができます。
ブランディング戦略は、特許戦略と比べ、卑近ですので技術の苦手な人でも取り組みやすい戦略です。
誰が作ったかわかると安心しますよね。
商標のなかでも顧客を惹きつける力(Goodwill)が特に強いものをブランドと呼びます。
そして知的財産権のなかではブランドのみがその顧客吸引力を利用してライセンスをできます。
そこに高い価値があるか価値がないのかの違いはありますがね
ユニクロというコーポレートブランドだって、ヒートテックという商品のブランドだってれっきとしたブランドですよ
吉野家では、”あの店にいけば常に早く安く旨いものが食べられる”という消費者の信頼を築いています。
・・・でも、もしお金がかかるならやめとくわ
お金をかけようと思えばかけられますが、宣伝広告などに頼らないブランディングの方が息が長いですよ。
もちろん宣伝広告が重要なブランディングというものもありますがここではその話はやめておきます。
自社製品を扱いたいという人が寄ってきますから、経営が楽になります。
会社の名前も主力商品も商標権を取得しましょう。
国内で有名になっているのなら、海外でも権利化を図りましょう。
大事なブランドはまず知的財産権で守る。基礎中の基礎ですよ。
無駄なトラブルに巻き込まれてしまいますから。
特許権と違って、商標権が成立した時点ではほとんど価値がありません。実際に使って価値を高めたからこそ、高額でライセンス出来るのです。
商標権の取得は最も重要かつ基礎ですが、それだけではダメなんです。
商標法が守るのは、ブランドが持つ目に見えない”信頼”という財産です。
例えば、”うちの会社は技術が優れている”とか”うちの製品はデザインがかっこいい”といったことはブランドにつながります。
ですから、ブランディングについて考えるときには商標以外の知的財産権についても同時に考えるべきでしょう。
これは、数ヶ月や一年といった単位ではなく、10年20年といった単位で考えてください
大切に育ててくださいね。
下の図に示したように、商品の価値は、基本的価値・機能価値・五感価値・イメージ価値の4つから成り立っています。
それをより便利に工夫したもの、またはより楽しくしたものが機能価値。
五感価値は、視覚で魅了したり、聴覚に訴えるCMのメロディ、味覚に訴える美味しさ、触感に訴えるなめらかな手触り、嗅覚に訴える良い香り、などがあげられます。
4つ目のイメージ価値は、その商品の名前を聞いたときに消費者の心の中に浮かぶイメージに基づくものです。有名なものでな
いと、何も連想されないか、言葉から受ける印象だけになります
機能価値も、便利さや楽しさが当たり前になると意識しなくなります。
そこで、商品やサービスを比べるときには五感価値やイメージ価値を重視するようになります。
同じような商品が二つ並んでいたら、よりデザインが優れている方、手触りが良い方を選ぶでしょう?
消費者が商品名を見たり聞いたりしたときに、いろいろな連想が浮かんでくれば、イメージ価値が確立しているということになります。
自社の製品の名前を貸すだけで、自分は製造もデザインもしていないのにライセンス料が入ってくるのです。まさに不労所得ですね。
でも、注意しなくてはいけないのが、”何にでもライセンスしすぎてブランドを汚さない”ということです。
例えば、ハーレーダビッドソンは、過去にバイクに関係のない日用品にまでブランドをつけて売っていました。サンローランも、何でもかんでもブランドをつけて売っていました。それにより、消費者に一貫したイメージが伝わらなくなり、ブランドイメージが傷ついてしまいました。グッチも同じような失敗をしています。
しかし、途中でその間違いに気づき、コアブランドに集中したために毀損を防げました。
自社で製品を作らなくても収入が入ってくるんだから。
”低価格高品質”で一致していても、ユニクロで野菜売っているのを見ると”なんか違う”と思っちゃう。
でもその”なんか違う”がなんなのかはうまく説明できないよ
特に高級ブランドは日用品に使われてしまったら希少性が薄まってしまいますから。
まだブランドが確立していないうちは、手を広げたい気持ちをぐっと抑えて、コア商品に集中しましょう。
下手に使われて汚されてしまうと会社の存続にもかかわるので、ライセンスするときには細心の注意を払ってください。
しかし、「知る人ぞ知る」ブランドになるのもまたいいことなんですよ。
お金のかかる広告宣伝をしないで、限定販売で希少性を増すことができます。
ロイヤルカスタマー(ブランドへの忠誠心が高い人。そのブランドのファン)がクチコミで商品の良さを広めてくれるので、宣伝広告費がかかりません。
一般の人が知らない方が、ロイヤルカスタマーの「私だけしか知らない」という気持ちをくすぐることができますしね。
「らしさ」はブランドの重要な概念ですよ。