知的財産権法の代表格である特許法。
この特許法は特別な用語が多く、出来れば勉強なんてしたくない法律です。
しかし、知財経営をするには避けては通れないので、一度だけ、サラっと読み飛ばしてしまいましょう。
・・・おや、真面目なチーたんまで眠そうな顔をしていますね!?
わかりやすく基礎から説明してくれないかな?
すなわち、特許法は、技術的なアイデアである”発明”、つまり技術的思想にかかる創作のうち、高度なものを保護すると同時に創造を奨励し、権利を活用し産業を活性化するための法律です。
したがって、発明者の金銭を得る機会を守ってあげるだけでなく、発明者がその発明を公開することにより、第三者が無駄に同じ発明を研究することを防いだり、産業の進歩のスピードアップを狙っているわけです。
特許法は、権利者には一定期間の独占を認め、保護を与えます。
一方、保護する代わりに、発明の公開を義務付け、第三者はその発明を利用することができるようにしているのです。
ただし、勝手に利用して良いわけではなく、特許権者にライセンス料を払う必要があります。こうして、特許権者の労力に金銭で報いているわけです。
ここで、「独占」と聞くと、独占禁止法に反するのではないかという疑問が湧いてくると思いますが、そんなことはありません。
詳しくは、独占禁止法に注意!で説明しています。
”発明”とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と規定されています(特許法第二条)。
ゲームのルールやボールの投げ方のように人為的な取り決めなどは自然法則を利用していないため発明とはなりません。
また、エネルギー保存の法則に反する永久機関のように自然法則に反するものも発明とはなりません。
さらに、パン職人の腕前というような個人の熟練の技能は第三者に知識として伝えることができるだけの客観性がないので”技術”ではありません。
自然現象や数学の解放(アルゴリズム)などの抽象概念もたんなる”発見”であり、”発明”ではありません。
「利用」とは、発明の構成要件の一部に自然法則を利用しないものがあっても、全体的に利用していればよいとされています。
同一結果を反復できることが必要です。
特許法が保護しているのは具体的な技術自体ではなく、「技術的思想」という点に注意してください。
「思想」は具体的な物ではありません。
これに対して、著作権法で保護される著作物は、思想または感情を創作的に「表現したもの」であり、表現される前の思想や感情そのものが保護されるわけではありません。
特許発明の実施
特許法2条3項
この法律で発明について「実施」とは次に掲げる行為をいう。
1.物(プログラム等を含む)の発明にあっては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には電気通信回戦を通じた提供を含む)、輸出もしくは輸入または譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む)をする行為
2.方法の発明にあっては、その方法の使用をする行為
3.物を生産する方法の発明にあっては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出もしくは輸入または譲渡等の申し出をする行為
2項に記載の方法の発明には、通信方法や測定方法等の発明や物を取り扱う方法の発明等があります。
特許を受けるための要件
第29条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
第29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第66条第3項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法(昭和34年法律第123号)第14条第3項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第36条の2第2項の外国語書面出願にあつては、同条第1項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。
①産業上利用できること
これは、発明が一般産業として実施しうるということです。製造業だけでなく、金融業や保険業などのサービス業も含まれます。
②新規性(特許法29条1項各号)があること
出願の時点で発明が新しいことが必要です。
新しいといえるためには、出願前に日本国内または外国で公然と知られていないこと、公然と実施されていないこと、頒布された刊行物に記載されていないこと、インターネットで閲覧可能となっていないことが必要とされます。
それらは、何らの新しい情報を提供しないので、保護されないのです。
自分で発表したばあいにも新規性は失われてしまうので注意してください。
ただし、一定の例外があります。
③進歩性(29条2項)があること
既に知られている発明の一部を置き換えただけの発明や、既に知られている発明を複数組み合わせた発明は保護されません。
④先願であること(29条の2、39条)
同一の発明について、異なる日に出願されている場合は、先に出願された発明が特許を受けることができます。これを「先願主義」といいます。
⑤明細書にきちんと記載されていること(36条)
発明を第三者が実施出来る程度に明細書に記載されていることが必要です。
出願の単一性を満たすことも大事です。
その他、公序良俗(32条)に違反しないことや冒認出願(49条7項)に違反しないこと(つまり、特許出願人が発明者出ない場合で、特許を受ける権利を承継していない場合は特許は付与されない)等の要件も満たす必要があります。
先願
第39条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第44条第2項(第46条第6項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。5 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第2項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
6 特許庁長官は、第2項又は第4項の場合は、相当の期間を指定して、第2項又は第4項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
7 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第2項又は第4項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
特許出願
第36条 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 発明者の氏名及び住所又は居所2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明4 前項第3号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第29条第1項第3号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。5 第2項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。7 第2項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
出願手続き
アメリカと違い、日本では同じ発明については先に出願したものに特許が付与されるので、発明したら早期に出願手続きを取るべきです。
また、これもアメリカとは違い、発明後、出願前にホームページに載せたり公衆の前で発明を実施してしまった場合には特許を受けられなくなってしまうので注意が必要です(一応、救済措置はありますが、手続きが面倒ですので、このページを見ている発明者はそんなことはしないでください)。
出願をすると、まずは書類が所定の書式どおりであるかどうかの方式審査がされます。書式が整っていない場合には補正命令がされます。
それをパスすると審査請求がされ、審査請求料の納付されたものから実体審査されていきます。
審査請求は、出願から3年以内ならいつでもできます。出願したものの、やっぱり特許権はいらない、公開したくない、と思った場合には出願を取り下げることもできます。
特許出願をせずにノウハウとして秘匿するのも知財戦略と言えるので、とりあえず出願して取り下げるというのも手段の一つです。
特許庁へ支払う審査請求料は高額ですので、中小企業や個人には重い負担となります。
ただし、一定の場合には減額されます。
資金に限りのある中小企業の場合は、何を出願して何を出願しないのかしっかり見極めてから重要な特許についてもれなく出願してください。
いかがでしたか?
ふっくんと話をするのは楽しいんだけど、一方的に話を聴くのは苦手でさ(笑)