超有名ブランドについては立体商標で保護が図られていることがあります。意匠権が存在しないからといって安心していると商標権の侵害として差し止め請求や損害賠償請求がされてしまうかもしれませんよ!?

チーたん
あいぴーの持っているバッグ、どこかで見たことあるなぁ。
あいぴー
ふふふ・・・、何を隠そう、エルメスのバーキン!
・・・のフェイク(偽物)やねん。
チーたん
有名ブランドの海賊品か・・・。まさかそんなの転売しようなんて考えていないよね?
あいぴー
・・・うちな、最近意匠法と不正競争防止法の勉強したねん。そしたらな、意匠権の効力は登録から20年で消滅するし、不正競争防止法の保護も商品形態模倣行為については販売開始から3年やねん。
・・・でな、エルメスのバーキンが最初に販売されたのは1984年やから、もう意匠権も不正競争防止法についても気にしなくていいはずやねん。
チーたん
・・・あいぴーが知財の勉強を自主的にするなんて!
しかも、なんだか正しいことを言ってる!
ふっくん、あいぴーの言っていることは正しいの?!
ふっくん
正しいですよ
チーたん
えー?!ということは、エルメスのバーキンの模倣品を販売しても知的財産権の侵害にならないの?

ふっくん
意匠権の侵害にはならないという点については正しいのですがエルメスのバーキンについては「立体商標」で守られていますから当該商標権を侵害することは許されません。

チーたん
立体商標?

ふっくん
立体商標とは、立体的形状からなる商標または立体的形状と平面標章との結合により構成される商標を言います(商標法2条1項)。

従来の商標法では、商標は平面的なものに限定され、立体的形状は構成要素として保護されていませんでした。

しかし、特徴的な立体的形状を有する商標について登録のニーズが存在しました。
また、不正競争防止法では立体商標が保護されていました。
さらに、国際的には立体商標を認める事例があったことから、平成8年改正において立体商標についても保護することとしました。

チーたん
バッグの形態が商標法で保護されちゃうの?
それなら誰も意匠権をとろうなんて思わなくなっちゃうよ
ふっくん
立体商標の商標登録が認められるのは相当限られた場合だけですよ。
著名で使用による識別性(3条2項)を獲得した場合だけでしょうね。
たとえば、カーネルサンダースの人形やペコちゃんの人形、ホンダのスーパーカブ、大熊重信像、ヤクルトの容器、コーラの瓶などについては立体商標の登録が認められましたが、ひよこ饅頭についてはいったんは登録されたものの無効にされてしまいました。
チーたん
ひよこ饅頭可愛いのに・・・
ふっくん
先ほど例示したように、いずれも超有名ですよね。これくらい有名でないと立体商標として登録を受けることは不可能でしょう。

チーたんが考えている通り、物品のデザインは意匠法で保護するものであり、自他商品識別力や出所表示機能を有する標章は商標法で保護するのが原則ですよ。

チーたん
立体商標はどんな風に審査されるの?
ふっくん
審査基準によると、立体商標の類否は、観る方向によって視覚に映る姿が異なるという立体商標の特殊性を考慮し、次のように判断するものとされています。
ただし、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿が立体商標の特徴を表しているとは認められないときはこの限りではありません。

(1) 立体商標は、原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標(近似する場合を含む。)と外観において類似する。

(2) 特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標(近似する場合を含む。)は、原則として、外観において類似する。

チーたん
じゃあ、侵害かどうかはどう判断されるの?
ふっくん
基本的に審査基準と似ています。ただ、訴訟の場では、「取引の実情」や「商標的使用でないこと」が認定されやすいと言えるでしょう。
「出所の混同」が生じていないときにまで商標権の効力を及ぼすのは行き過ぎですからね。
あいぴー
今、インターネットでエルメスのバーキンについて調べてみたんやけど、平成26年に立体商標の商標権の侵害を理由に訴訟を起こして勝訴しとるな。
ふっくん
東京地裁での事件ですね。これは、ほぼ全面的に原告(エルメス)の主張が認められています。被告にしっかり争ってほしかったですね。
この事件では、被告はバーキンに類似するバッグを「バーキンに類似するバッグ」として50分の1の価格で販売していました。
購入する人は、まさか本物だとは思っていなかったでしょうから「出所の混同」が生じていないことを理由に侵害を免れることができたかもしれません。

なお、この事件では、立体商標の類否判断についても、氷山事件と小僧寿し事件で示された平面商標の類否判断基準が当てはまるとした上で、立体商標の特殊性 を考慮して、同様の概念を侵害訴訟段階で採用しました。

チーたん

でもさ、やっぱり有名ブランドの著名性に便乗するのはよくないと思うんだ。
ふっくん
そうですね。ですから、そこら辺を納得する形で裁判所には判断を示してほしかったと思います。

ちなみに、立体商標の侵害事例ではありませんが
「フランク三浦」は「フランクミュラー」の商標権の侵害にはならないという判断がくだされました。この裁判では、「パロディ商標を付した腕時計と高級時計を間違える人はいない。出所の混同は生じない」という理由付けにより著名商標権者は敗訴してしまったのです。

チーたん
1個100万円以上するバーキンと2万円程度で買えるバーキンの偽物を間違える人なんていないんじゃないの?
ふっくん
どこまで精巧に作られていたかわかりませんし、インターネット上での販売だけでしたから判断が難しいといえますがね。

いずれにせよ、エルメス・バーキン事件では、あまりにも強力すぎる力を立体商標に与えてしまったのではないかと私は危惧しています。

チーたん
立体商標は見る方向によって視覚に映る姿が異なるという平面商標にない特殊性があるから侵害訴訟の場では判断が難しそうだね。
ふっくん
商標的態様で使用している場合のみ立体商標の侵害とするべきでしょう。さもなければ、意匠権が切れた後にまで半永久的にキャラクターやデザインが保護されることになってしまいますから。
あいぴー
知的財産権の侵害訴訟は大変やな・・・

チーたん
・・・って、あいぴー、梱包なんかして、そのバッグまだ売ろうとしているの!?

あいぴー

し、死んだおばあちゃんにあげようと思ってな・・・個人的使用の範囲や・・・

ふっくん
あいぴーの言い訳は裁判所でどこまで通じるでしょうね(笑)