あまり頻繁に出てくる条文ではありませんが、商標法にも中用権というものがあります。
キーワードは「周知性」です。
正当権利者から商標登録無効審判を請求されて商標権が遡及消滅してしもうたわっ(商標法46条、同46条の2)。
その商標については周知商標の所有者であるその「他人」がもう商標権者やからうちはもはやこの商標を使い続けることができへん・・・
でも、可能性は低いですが、もしかしたらまだ使い続けることができるかもしれませんよ
どうすればエエの?
もし、無効審判の請求登録前に無効理由が存在することを知らないで日本国内において商標を使用していて、その商標が有名になっていたら、このまま商標の使用を続けられますよ(商標法33条)。
無効審判の請求登録前の使用による商標の使用をする権利
第三十三条 次の各号のいずれかに該当する者が第四十六条第一項の審判の請求の登録前に商標登録が同項各号のいずれかに該当することを知らないで日本国内において指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、その商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
一 同一又は類似の指定商品又は指定役務について使用をする同一又は類似の商標についての二以上の商標登録のうち、その一を無効にした場合における原商標権者
二 商標登録を無効にして同一又は類似の指定商品又は指定役務について使用をする同一又は類似の商標について正当権利者に商標登録をした場合における原商標権者
三 前二号に掲げる場合において、第四十六条第一項の審判の請求の登録の際現にその無効にした商標登録に係る商標権についての専用使用権又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
3 第三十二条第二項の規定は、第一項の場合に準用する。
それから、商標権者の請求があったら、あいぴーの使用している商標と商標権者の商標が混同されないように適当な表示をしなければいけません(商標法33条3項)。
「あいぴーの商標として」周知性を獲得していなければいけないのですからね。
その商標権者の商標として有名だからということでは駄目ですよ。
ただ、特許法と違い、「周知性という既得権」を保護する必要性から認められるものなので、周知性がないと中用権を認めてもらえません。
そして、その周知性も、その商標が有名なだけでは無理でしょうね。あいぴーの場合は商標法4条1項10号違反を理由に商標登録を無効にされたのですから、「あいぴーの商標として」その商標が周知になっていなくてはいけないでしょう。
んー、要件さえ満たせば大丈夫そうやけどな
後願者は単なる過誤で登録を受けただけですよね。ということは、除斥期間の5年間が過ぎる前においては、過誤登録による権利者はたとえ専用権の範囲内(商標法25条)でも、先願者の商標権の効力による制限を受け、商標を実施できないはずです。
ならば、無効にされた途端に中用権が発生するというのも変な話ですよね。
ですから、中用権は発生しないと解しても良いでしょう。